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第4章 いつまでもいつまでも、ずっとずっと

 1月1日の午前中。
 参拝客で賑わう空京神社に、御神楽夫婦の姿もあった。
 御神楽 陽太(みかぐら・ようた)は身重な妻、御神楽 環菜(みかぐら・かんな)と手を繋ぎ、ナーシングの能力で労わりながら、参道の端を歩いて拝殿へと向かっていく。
「環菜はどんな願いごとをしたいですか?」
「あなたは?」
「俺は『環菜の出産が安産でありますように』とお願いしようと想います。環菜と生まれてくる子の2人共が無事で元気なら、それが1番です」
「それなら、私もそれを願うわ」
 環菜は自分のお腹に手を当ててそう答えた。

 手水舎で身を清めて、賽銭箱にそっと賽銭をいれて、鈴を鳴らし。
 陽太と環菜は同じ願いを思い浮かべた。
 それから、2人は授与所へと歩いて行く。
「お守りなら、既に沢山あるけど……」
「ええ、安産に限らず、いろいろなお守りをみんなからいただいていますが、自分でも受けておきましょう。御利益もですが、気持ち的に……何かしないと落ち着かない気がして」
 陽太は授与所で少し迷った後、まだ誰からも受け取っていない『家内安全』の御札を授かった。
「生まれてくる子には、何を置いても元気で丈夫でいて欲しいですね」
「ええ、丈夫で強い子に育ってほしいわ」
「きっと、環菜に似て頭の良い子になる気がします」
 陽太は子供の環菜の姿を思い浮かべる。
 理知的でちょっと大人びた女の子の姿を。
「性格はあなた似かしらね。その方がいいわ」
「俺に似たら……どんな感じでしょう? 自分ではピンと来ないです」
「家族を幸せに出来る子、かしら」
「俺と環菜の事して生まれてきれくれるだけで、俺達は幸せですけれどね」
「ええ」
「それはそうと、環菜、疲れてませんか? 何処か休憩できる場所をさがしましょうか?」
「そうね……ちょっと休みたいわ」
 2人は境内を見回して、カフェに目を止めた。
 お昼までまだ少し時間があるため、そう混んではいない。
「あそこで温かな飲み物でもいただきましょう!」
 他の参拝客とぶつからないよう、注意してゆっくり歩きながら2人はカフェに入った。
 4人掛けのソファー席を選び、先に環菜を座らせると、陽太はその隣に腰かけた。
 ホットミルクと、温かなかぼちゃケーキを頼んで温まりながら、窓の外の人々を。恋人達や家族の姿を眺めていく。
「幸せそう……カップルも、子供の手を引いた家族も」
 環菜がぽつりとつぶやいた。
「俺は、環菜と2人で暖かい家庭をつくって、一緒に幸せに過ごすのが夢でした。この夢が叶うのが心底嬉しいですし、ずっと叶え続けたいと思います」
「ええ。あなたの夢は、きっと……私も、この子も幸せにしてくれる」
 環菜のその言葉に、陽太は嬉しくなって。
 環菜を抱き寄せて、囁いた。
「俺は、いつもいつまでも環菜のことを愛しています。 そして、ずっとずっと環菜に恋しています!」
 環菜なくすぐったそうな笑みを浮かべながら目を閉じて、少し顔を赤らめ、そっと首を縦に振った。