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【2024初夏】声を聞かせて

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【2024初夏】声を聞かせて
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4.休日の2人

 初夏のお休みの日。
 泉 小夜子(いずみ・さよこ)は、泉 美緒(いずみ・みお)の部屋でのんびり過ごしていた。
 天気も良いし、どこかに出かけても良かったのだけれど……。
 こうして2人きりで部屋で過ごすのも良いかなと思って。
 美緒のパートナーのラナは出かけており、沢山いる使用人もこの部屋に近づいてくることはなかった。
「どうぞ」
 小夜子は居間のソファーに座ると、自分の膝をぽんっと叩いた。
「はい」
 美緒はふわっと微笑むと、小夜子の形の良い膝の上に自らの頭を乗せて横になった。
「なんだか……どきどきしますわ」
「ふふ、さあ、美緒。リラックスして」
 小夜子は優しく美緒の身体を撫でた。
「優しく丁寧に気持ちよくしてあげますわ」
「ええ……」
 美緒がそっと目を閉じる。
 小夜子はふっと息をかけて、美緒の耳にかかっていた髪を吹き飛ばした。
「ふふっ」
 美緒の口から、くすぐったそうな笑みが漏れた。
 小夜子は耳かき棒を手に取ると、美緒の耳の中に入れて優しく耳かきをする。
「ああっ」
「美緒、気持ち良い?」
「ええ……とっても、あっ、そこもう少し、強く……いいですか?」
 美緒の求めに応じて、小夜子は棒を操っていく。
「ああ……ふう……」
「うふふ……幸せそうな顔、ですわ。私もきっと、同じような顔をしているのでしょうね」
 小夜子がそう言うと、美緒が目を開けて小夜子を見て。
「ええ、幸せそうな顔ですわ」
 そして、目を細めて微笑み合う。
「美緒と結婚して夫婦になって、こうして二人で一緒に過ごす……。
 とても幸せなことですわね」
「はい、毎日幸せを感じていますわ」
「嬉しいわ。
 夫婦になったわけだし私の今住んでる寮の部屋を引き払って美緒の家に一緒に住もうかしら……。美緒はどう思う?」
 小夜子がそう言うと、美緒の身体がぴくりと動いた。
「あ、動いたらだめよ。美緒を傷つけてしまうわ」
「すみません。小夜子が素敵なことを言うものですから」
「では、荷造りが出来たら、早速引っ越しさせてもらいますわね。
 ラナさんにもよろしく言わなきゃいけませんわね」
「はい。小夜子がここで暮らす為に必要なもの、一緒に選びたいですわ」
「ええ、買い物にも行きたいですわね。
 ……さあ、美緒。耳かきは終わりましたわ」
 小夜子が耳かき棒を抜くと、美緒は幸せそうな顔で大きく息をついた。
 小夜子の膝に頭を置いたまま、可愛らしい目を小夜子に向けている。
「次はマッサージをしげあげますわ。肩が凝っているでしょう? それともこっちが良いかしら」
「はい……あっ、そ、そこは……凝ってませんわ」
 小夜子の手は、肩を通り越し、美緒の胸を揉んでいた。
 咎めるような目で……それでどこか求めているような目で、美緒は小夜子を見る。
「うふふ。冗談ですわ。でも、肩のマッサージの前に……」
 小夜子は美緒の頭を愛おしげに優しく撫でた。
「美緒に私の耳かきをして欲しいですわね」
「はい」
 美緒が身体を起こし、服を整えて。
 今度は小夜子が横になり、美緒の柔らかな膝に頭を乗せた。
「優しくしてくださいね?」
「ええ、優しくしますわ」
「……あっ、ああ……っ、美緒、もっと優しくお願いしますわ……」
「ご、ごめんなさい……実は、慣れてませんの。そっと、やさしく、ですわね」
「ええ、耳は痛みを感じやすいのです。だから、やさしく、やさしく……お願いしますわ」
「はい、小夜子……痛くはないですか? もう少し奥まで入れても、大丈夫ですか?」
 美緒は慎重に小夜子の反応を見ながら、彼女に至福の時を与えていく――。