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世界を滅ぼす方法(第4回/全6回)

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世界を滅ぼす方法(第4回/全6回)

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「うーん」
 地図を広げてペンをくわえ、樹月刀真はうめいた。
 武により、ハルカ祖父の目的地は空京かもしれない情報はもたらされていたのだが、目撃情報を辿ると、どうにも飛空艇はヒラニプラに向かっているように見える。

「おじいさんは、『聖地』を巡っているんじゃないでしょうか」
 イルミンスールやヒラニプラには、『聖地』と呼ばれる場所があるらしい。
 そんな情報を聞き付けたメイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)フィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)が、そんな予測を立てた。
「かもしれませんね……」
 刀真も、そんな気もしないようなするような、と、曖昧に考える。
「……というか、『アケイシア』というのはひょっとして、聖地の名前ではないですか、ハルカ?」
「聖地??」
「ハルカはシャンバラ人じゃないんだから、シャンバラの聖地とか訊かれても、解らないんじゃない?」
 セシリア・ライト(せしりあ・らいと)が言った。
 シャンバラ人である自分ですら、聖地なんて代物は全然知らないものなのだ。
 地球人のハルカが知っているとは思えない。
「それもそうですね」
 そうすると、ハルカが”守り人”という可能性もなしか。と、刀真は思う。
「おじいさん、地球にいた時、シャンバラのことを調べていたとか、交友関係でシャンバラに詳しい人がいたとか、そういうのはないんですかぁ?」
 ハルカはきょとんとした。うーん、と考えて
「……おじいちゃんの仕事や友達のことは、よく知らないのです」
「そうですかあ」
 残念ですけど、仕方ないですよねえ、と笑いかける。
「でもシャンバラに来た時、ハルカより楽しそうだったのです。
『おお、懐かしい風が吹く! 心のふるさと、シャンバラよ!』
とか叫んでたです」
「面白おかしいおじいちゃんだったのね」
くすくす笑いながらセシリアが言うと、おじいちゃんいつもそういうことばっか言ってたですよ。と、ハルカも笑った。
「うーん、それじゃあ、『アケイシア』ってのはどこから来た名前なんです?」
 アケイシア、とはどういう意味なのだろう。
 刀真はそれが気になって訊ねてみる。
「……名前……です?」
「何で疑問形ですか……」
 解らないらしい。と苦笑した。


「秋の夜長と長旅の友! 恒例のヒーロー談義だ!」
 どんどんぱふぱふ〜
 パートナー大神 愛(おおかみ・あい)の合いの手による、パラミタ刑事シャンバランこと神代 正義(かみしろ・まさよし)の第4回熱く語り合おうぜ友よ! の時間がやって参りました。

「何なのその導入」
 セシリアが呆れる。
「ふっ、俺はめげねえ」
 前回、私、魔法少女の方がいい……☆と言われてしまったにも関わらず、光の早さで立ち直った正義は、今日も今日とてハルカとヒーロー談義を繰り広げるのだった。
「まあヒーローも魔法少女も、突き詰めれば目指すところは同じ! 悩んでいる人を救い世界平和を願う同志!」
 そう、自分を慰めるうちに正義の中で、
「うんもう魔法少女=ヒーローでいいんじゃない?」
という結論に達していたのだった。
「えっそれって現実逃避って言うんじゃないの?」
 セシリアの言葉に、どこかでぐさり、という音がしたような気がした。
 パートナーの愛が、困ったよように笑う。
「私も、それは流石にトンデモ発想ですよ、って言ったんですけど……」
 ぐさぐさ。
「まあ、少しこじつけかもしれませんね」
と、野々も苦笑した。ぐさぐさぐさ。
「うううるせえー!!! お前等にヒーローの孤独がわかってたまるかあ!」
ぐわー! とついに耐え切れずに反撃した正義に、セシリアは
「ハルカに構って貰えないくらいで孤独になるヒーローってどうなの」
とばっさり斬り捨て、憐れな正義は撃沈した。
「構わなくないですよハルカヒーローさん好きですよ?」
 わたわたと慰めるハルカに、正義はフッ……と笑う。
「ありがとうハルカちゃん……俺の味方は君だけだぜ……」
「背中が煤けてますよ」
 とどめの一撃は、支倉遥からだった。

「そういえば、ハルカ、前回渡したカードを貰えねえか?」
 武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)は、前回、ハルカに渡し、4分割されたカードの内、3枚をハルカから戻して貰った。
「これは俺達の誓いだ。何があろうと必ずハルカをじいさんと会わせる」
 そう言って、受け取った3枚のカードのうち、1枚を自分、そして残る2枚を正義と五条武に差し出した。
「何の効果もない、ただの紙切れに過ぎねえが、少女の願いが込められたものだ。
俺達ヒーローは、必ずハルカの笑顔を護る!」
「フッ、受け取るぜ!」
 正義は、人差し指と中指で、ぴっ、とそのカードを挟み取る。
「……貰おう」
と、武も受け取った。

「浸ってる浸ってる……」
「まあ、本人達が幸せなんだからいいってことで……」
 陰口は、聞こえません。

 ちなみにその時、牙竜のパートナー、リリィ・シャーロック(りりぃ・しゃーろっく)は、どこからか取り出したスケッチブックにコスチュームデザインを色々描いて、ハルカに見せていた。
「魔法少女ならこんな衣装はどう? こんな感じとか。 ちょっと変化できるようにしてバリエーションが多彩なのも可愛いわ! 季節ごとに変化するのもいいわよね。ミニスカは外せないかな! ハルカはふわふわ〜っとしたのとひらひら〜っとしたのとどっちが好き?」
「……お前一体どこで息継ぎしてんだ」
 聞いている方が息苦しくなるのは気のせいだろうか。
 牙竜が突っ込むと、リリィは
「え? どしたの?」
と不思議そうだから、きっと光速で呼吸しているのだろう。
 何だか光速で生きているヤツがやけに多い。
「ふわふわとひらひらはどう違うです?」
「そりゃあ! ふわふわはふわふわっとしてて、ひらひらはひらひらっとしてるのよ!」
 それは説明になってるのか。と、思ったが、何だかもう、突っ込むのも虚しい。
「何でも好きに作ってくれ……」


「ハルカ。今日は一緒に寝ませんか」
 津波に誘われて、わーいとハルカは2つ返事で了承した。
 その日は、ちゃんと立ち寄った村での、宿の一室での一泊である。
「ねえハルカ。おじいさんは何か、大切にしている物はありませんでした?」
 布団にくるまって、津波は訊ねた。
 飛空艇の燃料足り得る何か。
 元々それを持っていたのだとすれば、ハルカは何か知らないだろうかと思って訊いてみる。
「うーん、ハルカのこれみたいなです?」
 ハルカは胸に手をやって訊ねた。
 そこには肌身離さず身に着けられた、”アケイシアの種”がある。
「うーん、そうですね、そんな感じ」
「うーん……」
 首を傾げて考え込むハルカに、
「心当たりが無いのならいいのです」
と、言った。
 おやすみなさい、とベッドに潜って、寝付きのいいハルカはあっという間に寝息を立て始めた。

「……今日もやるんですの?」
 こそり、と、津波のパートナーのナトレア・アトレア(なとれあ・あとれあ)が、ハルカの顔を覗き込む。
「だって情報が全然要領を得ないんですもの」
「言えておりますけれど」
 ナトレアは、肩を竦めて苦笑した。
「……ハルカ?」
 寝ているハルカに、津波は囁くように声をかける。
「ねえ、教えて? アナは何故、泣いているの?」
 掴み所は、ここのような気がする。
「………………むにゃ」
 ハルカはごそごそと寝返りを打ちながら、言葉にならない寝言を呟く。
「ハルカ?」
「んー……アナさん?」
「ええ、そう。泣いていたのでしょう?」
「ごめんなさいは、いらないのです」
「え?」
「ハルカ大丈夫なのです。皆が一緒にいてくれるか、ら、楽、し……」
 そこから先は、むにゃむにゃ、と、言葉にならない寝言になって、やがて寝息に変わった。
「……アナテースは、ハルカに泣きながらごめんなさいと謝っていた、ということでございますか」
「それも、前回のと繋げると、それはハルカを怖い目にあわせたからということですか?」
 でも大丈夫。
 そんなアナテースを安心させる為にハルカが寝言で言ったのは。
 自分達が傍にいるから楽しい、と。
「……何だか、とても不安な気がするのです」
 ハルカの頭を撫でて、津波が呟く。
「……はい」