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リアクション
「ほれ貸しな、オレが持っててやるよ」
ロイ・シュヴァルツ(ろい・しゅう゛ぁるつ)が手を差し出し、エリー・ラケーテン(えりー・らけーてん)はありがたくその好意に甘えることにした。
「ありがとう、ロイ」
お弁当の入ったバスケットを預け、エリーはニコッとする。
こういうロイのさりげない優しさが、エリーは好きなのだ。
「それじゃお言葉に甘えて」
エリーはそのままロイの腕を取って、ぎゅっと腕を組んだ。
「お、おい……」
くっつくエリーに、ロイは少し照れて抗議してみたが、それが本気でないのを知っているエリーはくすくすっと笑った。
「いいじゃない、バレンタインなんだし」
「……まぁな」
かつて初恋の相手に手痛い失恋をしたロイは、女性の相手が苦手だったが、エリーだけは違った。
最初、エリーと契約したのは単にパラミタに渡るための手段としてだった。
だから別にエリーでなくとも、誰でも何でも良かった。
しかし、共に日を過ごしてきて、今ではエリーは大切なパートナーであり、この先も守ってやりたいと思える存在になったのだ。
「どうしたの、ロイ」
回想に意識を向けていたロイが、エリーの声に意識を現実に戻す。
「あ、いや、ここ2、3日エリーがそわそわしてキッチンに近づくと起こってたから何をやってたのかなと思って」
「そ、それはお弁当の中身を考えてたのよ」
「中身?」
「そう。お昼だし、サンドイッチにしたわ。いろんな種類のサンドイッチがあるから、楽しみにしててね」
「ふむ、それは楽しみだ」
楽しげなロイにエリーはうれしそうな笑みを見せる。
「このお弁当、食べるならやっぱり公園かな」
「そうね。商店街をちょっと見て、何か美味しそうなものがあったらそれも買って、公園でお弁当を広げましょ」
2人はその言葉通り、ヒラニプラの商店街を見てまわり、近くの公園でお昼をしたのだった。
その後、二人は映画を見て、デパートに行き、ウインドウショッピングをした。
「あ、見てみて、ロイ。あの春物可愛くない?」
エリーの雰囲気に似合いそうなふわっとしたワンピースに目を止め、エリーは店に入った。
「わあ、このお店、雰囲気がいいのいっぱいある〜」
「良かったな。2、3点、試着してみたらどうだ?」
「うん!」
ロイの提案に乗り、エリーは服を選んだが、休日と言うこともあり、お店の試着は順番待ちだった。
「ごめんー、ロイ。ちょっと好きなところでも見てて」
エリーはロイにそう謝り、ロイもエリーに気を使わせないため「他のところを見てくるよ」と言って、店の外に出た。
だが、ただ待っているのもと思い、ロイはあるところに足を運んだ。
そして、しばらくして、ロイが店に戻ると、エリーが手を振ってきた。
「あ、ロイ。これから試着なの。ちょっと待っててね」
エリーが試着室に入ると、ロイは言われた通りに外で待っていた。
しばらくすると、エリーが着替え終わり、バッとカーテンを開けた。
「じゃーん、どう?」
「うん、似合ってるよ」
ふわっとしたスカートを翻し、笑顔を見せたエリーに、ロイが言えたのはやっとそれだけだった。
それでも、照れながらそう言ってくれたことにエリーは満足し、笑みを見せるのだった。
そのままひとしきりデパートでのショッピングを楽しんだ後、2人は帰ることにした。
「あ、ちょっと待ってくれ」
1階に降りると、ロイはエリーを少し待たせ、あるものを持ってきた。
「ほら、日頃の感謝の気持ちだ、受け取れ」
「わあ……」
差し出された花束に、エリーは緑の瞳を輝かせた。
「嬉しい……ロイが何の日か覚えていてくれたなんて、ロイ大好き」
「え?」
エリーの口から思わず漏れた言葉に、ロイは顔を赤くする。
そんなロイにエリーはチョコを差し出した。
「いつ渡そうか悩んでたんだけど……はい、ロイ。手作りだから、ロイが好きなビター味にしたわ。良かったら食べてね」
気に入ってくれると嬉しいなと思いながら、エリーは花束を大事そうに抱えるのだった。