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地球に帰らせていただきますっ!

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地球に帰らせていただきますっ!
地球に帰らせていただきますっ! 地球に帰らせていただきますっ!

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 お母さんの料理 
 
 
 小さいけれど庭のある一戸建て。和風の雰囲気のあるその家が広瀬 ファイリア(ひろせ・ふぁいりあ)の家だ。
 家に帰ってきたのだから母親と一緒にキッチンに立ちたくもあるのだけれど、ファイリアはそれを今日は広瀬 刹那(ひろせ・せつな)に譲り、2人が料理するさまを見守っていた。
「刹那ちゃん、サラダをつくるときには水気をきれいに取ってね。そうするとドレッシングがよくなじむのよ」
 広瀬 京iに教えられて、刹那は素直に洗った野菜の水気をきれいに拭いた。
「これでいいっスかね?」
「ええ。十分だと思うわ。ああ、野菜を切るときにはまな板に対して正面に立つんじゃなくて、利き手の足と肩を少しだけ引くのよ。その方が包丁がまっすぐに使えるでしょう?」
「こっちっスね、やってみるっス」
「そうそう、上手ね」
 刹那を褒めながら、京は素早くたまねぎをみじん切りし、ミートソースを作っている。今日のお昼ご飯は京の作るミートスパゲティと、刹那が京に教えて貰いながら作る野菜サラダの予定だ。
「お姉ちゃんも手際がいいっスけど、お母さんは動きが止まらないっスね」
 よどみない動きの京を刹那は目を丸くして眺めた。
 容姿も性格もおっとりさんの京なのに、料理は得意というだけあって手際が良い。ファイリアに料理等の家庭的なものを教え込んだのも京だというから、その腕が推し量れるというものだ。
「ファイちゃん、お皿を出しておいてくれる?」
 料理を見守っているファイリアに京が呼びかける。
「はーい!」
 ファイリアは食器棚から人数分の皿を取り出した。
 1年ほど前まではずっと過ごしていたなじみのある家だから、そんな動作にも慣れ切っている。けれど、食器棚の中に並ぶ食器には入れ替わりがあったり、その頃使っていた調味料のメーカーが変わっていたりと、細かいところに変化は見られた。
 それがちょっと新鮮でもあり、けれど……自分がいなくてもこの家ではそれなりに時間が流れているのだと思うと、ほのかに寂しさも感じる。
「ファイちゃん、パラミタは楽しい?」
 料理をしながら尋ねてくる京に、ファイリアは凄いのですよと答えた。
「くまのぬいぐるみが普通に歩いていたり、2メートルもある大きな鳥さんとかが普通に飛んでいるです〜」
「あらあら。パラミタにはそんな生き物がいるのねぇ」
 感心する京に、ウィノナ・ライプニッツ(うぃのな・らいぷにっつ)が慌てる。
「京さん、そのイメージに納得しないでっ」
 家にいる間はファイリアをたしなめる役は京だから、と一歩引いていたウィノナだけれど、放っておいたら天然なところのある京はファイリアの言うことを全部信じてしまいそうだ。
「でも、実際にいるですよ〜。ファイもパラミタで頑張ってますですよ。ミルム図書館ってところで、お掃除頑張って、不審な人たちも一緒にお掃除して綺麗にしたり、お茶会でしっかりおもてなししたりしたのですよ〜♪」
「そうなの。楽しそうで良かったわ。ウィノナちゃんに迷惑かけたりしてない?」
「ファイですか? ちょこっとトラブルも起こしたりするときありますけど、良い子ですよ〜」
 時々おっょこちょいな時もあるますけどね、とウィノナは笑って付け加えた。
「寂しさも感じましたけど、ウィノナちゃんが一緒にいてくれましたし、刹那ちゃんみたいな可愛い妹もできました! いっぱいお友達も出来ましたですよっ♪」
 にこにこと報告するファイリアに、京も笑顔でパラミタの話をあれこれと尋ねるのだった。
 
 食卓を4人で囲んで、出来上がったミートスパゲティとサラダでお昼ごはん。
「やっぱりお母さんの料理、美味しいです〜」
 まだまだ自分は母には適わない、とファイは懐かしい母の味のスパゲティを味わった。
「サラダの野菜も綺麗に切れていますね」
「お母さんが教えてくれたからっスよ」
 ウィノナに褒められて、刹那は嬉しそうに京を見た。
「お母さんの作った料理、すごく美味しいっス! お姉ちゃんが料理上手なのも分かるっスね〜」
「ありがとう。刹那ちゃんにもきっちにいる間は色々教えてあげるわね。ファイと同じに、刹那ちゃんも私の娘なんだもの」
「え……?」
 刹那は驚いたようにまたたいた。
「わ、私、理想の妹になるための種族で、っていっても理想とかけ離れているっスけど……」
「そんなの関係ないわ。刹那ちゃんも大切な私の娘よ」
 京は穏やかに笑った。ファイリアも、実は京とは血が繋がっていない。赤ん坊のファイリアが捨てられていたのを拾い、夫と京、そして実の息子といっしょに、ファイリアを実の娘のように育ててくれたのだ。そのことも、パラミタに行くことが決まった時、ファイリアにはきちんと話してある。
「う、嬉しいっス! 嬉しいっス〜! ……ぐすっ……」
 すすり上げた刹那の頭を、京は優しく撫でた。
「ウィノナさん。ファイリアと刹那ちゃんのこと、よろしくお願いします」
「分かりました。しっかり2人のことは守ってみせます!」
 あらたまって頼む京に、ウィノナも表情を引き締めて引き受けたのだった。
 
 お母さんの料理はいつだって美味しい。
 子供が美味しく食べて元気に育つように、という願いのスパイスが入っているから――。