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地球に帰らせていただきますっ!

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地球に帰らせていただきますっ!
地球に帰らせていただきますっ! 地球に帰らせていただきますっ!

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 今日だけは 
 
 
 久しぶりの祖国イギリス。
 そして久しぶりの我が家。
 屋敷の門が見えるところまで来ると、マリア・クラウディエ(まりあ・くらうでぃえ)は一旦足を止めた。
 
 広い庭に立つ大きな屋敷。
 立ち働く多くの使用人。
 ただこうして見ているだけならば、裕福な貴族の屋敷にしか思えないけれど……。
 実はマリアの生まれたクラウディエ家は、爵位があっても名ばかりの貴族だった。
 昔は権勢を誇っていたらしいのだけれど、それを保つにはクラウディエ家の人々は皆『いい人』過ぎた。
 他人に騙され貶められ、財を無くした今では没落寸前の極貧一族。
 広大な領地も失い、現在残っているのはこの屋敷のみ、だ。

 けれど……騙されても裏切られても、クラウディエ家の者は変わらない。
 人が良すぎて、騙されたことにさえ気づかない。気づいても人を怨むこともしない。
 争い事が嫌いで、何があっても『仕方がないわ』と笑って済ませてしまうのだ。
 
 それは家族だけに留まらない。
 使用人さえ良い人ばかりで、賃金を少ししか払えなくなっても喜んで仕えてくれている。こんな苦しい暮らしの中、賃金をきちんと払ってくれるなんて、と感謝さえしながら。
 
 とても温かい場所。とても優しい場所。
 けれどそれだけでは、家を維持することは出来ない。このままでは家族も使用人もすべて、滅びてしまう。
 だからマリアは決めたのだ。
 皆が『いい人』ならば、誰かが『悪知恵働く意地悪な人』にならなくてはいけない。家を支える為に。
 だったら自分がなってやる、両親や屋敷の皆を守る為に。
 
 一族の再建復興の為に、マリアは幼少より進んで勉学に励み、それによって最優秀学生としてパラミタに留学している。けれどそれはゴールではない。これからもマリアは自分の力で財と富を勝ち取ってゆく。一族の皆がもっと幸せに生活できるようになるまで。
 
 ――でも、今日だけは。
 
 マリアは再び歩き出し、屋敷の門をくぐった。
 この屋敷にいる間だけは、『優等生でお嬢様の私』はお休み。本当のマリア・クラウディエに戻れる。

「マリアお帰り。マリアがいなくて寂しかったぞぉ〜」
 陽気な父親。
「あら〜マリアちゃん、また一段と可愛くなったわねぇ〜。何か向こうで良い事でもあったのかしら〜?」
 穏やかな母親。
「お帰りなさいませお嬢様。奥様、お嬢様が奇麗なのはいつもの事です。ですが、確かに一段と輝かんばかりのお美しさですね。向こうで素敵な恋人でも出来たのではないですか?」
 気さくな家人達。
 マリアは本当のマリアに戻って、そんな家族の間に飛び込む。
「みんなただいま! いっぱいお話ししたいことがあるの! あのねあのね!」

 ――ただいま、私の大好きな家族達。
 ――ただいま、私の大切な世界。