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リアクション
幕間劇 ナラカの夜明け、プロジェクトNX・その1
ナラカエクスプレスは鋼鉄の身体を軋ませ湿原を走る。
相変わらず代わり映えのしない風景だが遠くに電波塔が見えてきた。
例えそれが冥界の風景でも移り変わる景色と言うのはいい……、これこそ旅情と言うものだ。
流れる景色を横目に、ナラカエクスプレス車掌兼ガイド兼車内販売(見習い)のトライブ・ロックスター(とらいぶ・ろっくすたー)はトリニティとボックス席に腰を落ち着かせ、ナラカエクスプレスの新商品について話をしている。
それなりの由来があるにも関わらず、知名度が無に等しいのは、ひとえに企業努力が足らない所為である。
もっとお客さんを呼び込むためには、ドカーンと話題性のあるものが必要なのだ。
「ナラカエクスプレスの一番の売りと言や、不思議系美少女のトリニティだろ。ここは看板車掌であるあんたを前面に押し出したグッズがいいと思うんだ。例えば、セイニィ人形みたいにトリニティ人形を作るといいんじゃないか?」
「人形ですか?」
「リアルなフィギュアもいいけど、手縫いの人形にしてみるのも可愛いかもな……」
「しかしながら、人形ではあまりインパクトがないのではありませんか?」
すると、トライブは目を光らせた。
「ほほう……、インパクトが欲しいと。なら『トリニティ・ランジェリー』を売り出すほかねぇだろ!」
フンガーと鼻息荒く彼は言った。
そしてまだ誰も何も言っていないのに弁解をし始めた。
「いや、ちょっとまて。言いたいことは重々分かっているが、俺の話を聞いてくれ。別に下心があってのことじゃねぇんだ。某女空賊が見せパンで人気を得た様に(偏見です)、リーブラ・ランジェリー等の十二星華の下着グッズが人気の様に(誤解です)、シャンバラの人気商品に下着は必須! レア設定でキャラクエを回させればうっはうはだ!」
ナラカエクスプレスよりもフロンティアワークスが儲かりそうである。
「なぁに心配すんな。あんたの様な美少女のランジェリーなら大人気だ、俺は欲しい!」
「もう! し、下着なんて売り出せるわけないでしょ! えっちなのはボク嫌いなんだからそんなの駄目!」
車内清掃をしていたトライブの相棒ジョウ・パプリチェンコ(じょう・ぱぷりちぇんこ)はプンスカプン。
「トリニティさんもそんなイヤだよね?」
「実はその手の商品のことは多少知っております」
「ええっ!?」
驚くジョウとは対照的に、トライブはうしっとガッツポーズ。
「流石はボスだ。世情の流行には敏感だな」
「脱ぎたての下着に写真を添えて販売するのでしょう。昔、テレビのドキュメンタリーで拝見したことがあります」
「……ちょっと待て、なんだかオレのイメージしてるのとちょっと違うんだが」
「ええ、ブルセ……」
「言わせねぇよ!」
トライブは蒼空のフロンティアが全年齢対応であることを守った。
「大体、現実的に考えてみろよ。この大量生産大量消費の時代に、何百枚もパンツはいてるヒマないだろーが!」
「別に私がはかなくても良いではありませんか。折角、スタッフが増えたのですから」
「……え、オレがはくの?」
「ダメでござる! そこはトリニティ殿がはかないと! いくら何でもあんまりでござる!」
◇◇◇
「男子の……、男子の夢はどうなるでござるか! パンツは誰も奪えない心の翼なんでござるよ!?」
巫女巫女バカ一代坂下 鹿次郎(さかのした・しかじろう)が熱弁を振るう。
白昼堂々、こんな好奇心をそそる話をされては、男の魂が活性化してしまうのは仕方のないことである。
「落ち着くぜよ。わしらはそれが目的で来たがやないだろ」
岡田 以蔵(おかだ・いぞう)に言われて、すんでのところで我を取り戻す。
「そ、そうでござった。拙者達もナラカエクスプレスを盛り上げる方法を考えてきたんでござる。ズバリ巫女さんが重要でござる。時代は空前の巫女ブーム、この列車も『ナラカ☆巫女☆エクスプレス計画』を発動させるでござるよ」
そのブームを世間ではマイブームと言うのである。
「そう言えば、この前もそんなことを言ってらっしゃいましたね」
「何度だって言うでござる。さあ、まずはディーバ殿が巫女装束になってみるでござる」
「ですが……」
「ダメでござる! こればっかりは譲れないでござる! 巫女になってくれなきゃイヤでござる!」
鹿次郎は床に仰向けに転がると、手足をジタバタさせてダダをこね始めた。
「まぁ、ちっくと待ちや。そげん暴れても福は来ん。それよりも、わしに妙案があるぜよ。トリニティだけじゃなく、ハヌマーンと猿戦共にも巫女装束を着せたほうがええんじゃないか。いや、いっそ車内のおなごは全員……」
言葉通り、たしかに妙な案だった。
何故によりにもよってハヌマーン……、それは一体誰が得するのだろうか。
「あと、今ガネーシャの解放の件で投票しちょるから、わしらは巫女服着用の条件付きで解放に入れるんじゃ」
「く、クレバー過ぎるでござるよ!」
「ここじゃ、ここ」
酒をカッくらいながら、以蔵はこめかみをとんとんと指差した。
まあ、たぶん絶対拒否られるけどね!
「ガネーシャとハヌマーンが揃って巫女さんになってしまえば、ナラカ勢の過半数が巫女化するってことじゃ。我ながら悪うないのう。むしろこじゃんとええのう。まっことナラカ戻っても良いと思う妙案じゃ」
いいのか、巫女服着てれば誰でもいいのか。
「それなら都市ぐるみがいいでござるよ。奴隷都市から巫女都市で再出発してもらうでござる。しめ縄とか付けて正月に備えてれば、初詣参拝客も沢山呼び込めるのは必至! 来年の正月はナラカエクスプレスがいただきでござろう!」
興奮しながらまくしたてると、くるりとトリニティに向き直る。
「で、どうでござるか、ディーバ殿。巫女装束は着て頂けるでござるか!」
「そこまで押されるなら、一度試してみたほうが良さそうですね」
「と……、と言うことは?」
「ええ、試着してみようと思います。では、巫女装束をこちらへ」
「ふお?」
興奮も束の間、巫女装束を持ってきていないことに気付いた。
「な……、何故、拙者は巫女装束を持ってきていないでござるか! おおん、拙者の馬鹿っ!」
この計画のためにはキャラクエのどこかに眠る巫女装束が必要なようである。
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