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ゴチメイ隊が行く5 ストライカー・ブレーカー

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ゴチメイ隊が行く5 ストライカー・ブレーカー

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    ★    ★    ★
 
「到着なのだあ」
「危ない、マナ様!」
 三叉路となっている曲がり角からひょこひょこと飛び出したマナ・ウィンスレットを、シャーミアン・ロウが飛び出してかばった。直後に、雷光を纏った魔導球が、三叉路の中央をかすめて戻っていく。
「これはこれは、お早いお着きで」
 黒曜石製のつるりとしたマスクを被った黒衣のマントの男が、三叉路を曲がった通路の奧にある扉の前で言った。その周囲には、いくつもの魔導球が飛び回っている。
 途中に通路が十字に交わっているところを挟んで、マナ・ウィンスレットたちとオプシディアンが正面から対峙した。
「こいつが、例の馬鹿をすっぽんぽんにしたというすばらしい……いいえ、とんでもない敵ですね」
 シャーミアン・ロウが、オプシディアンを見据えて言った。
 おそらく、彼の背後の部屋が、この島の制御室なのだろう。
「あなたが、黒幕ですかぁ。いったい、この島を使って何をしようとしているんですかぁ」
 清泉北都が、オプシディアンに訊ねた。
「別に……。ただ、パラミタがあるべき姿に戻るだけだ」
 オプシディアンが、うそぶいた。
「それにしても、よくもまあ、ここまで細々と邪魔をしてくれるものだ。ただ、悪運が強いだけなのか、それとも、本当にカオスから生まれた新要素なのか……」
「それより、この島をどこへ持っていこうとしているのかなぁ。ツァンダかなぁ、葦原島かなぁ、それとも……」
「空京と言いたいのかな。まあ、今さら隠す必要もない。お前たちは、このままこの島の遺跡を勝手にいじって空京に激突させた、史上最大の愚か者としてその名を歴史に残すのだからな」
 清泉北都の問いに、御丁寧にオプシディアンが答えた。
「まだ、私は機械に触っていないのだよ」
 マナ・ウィンスレットが、不満たらたらで言い返した。
「貴様、俺たちに罪をなすりつけるつもりか。そうそう思い通りにいくかよ」
 三船敬一が怒鳴る。
「さあ、どうでしょうか。少なくとも、逸早く事件に気がついていながら、まったくそれを防ぐことができなかった者たちとして、あなたたちの大好きな学校の支配者たちから責任追及をされるのではないでしょうか。空京の壊滅、西シャンバラの宮殿を僭称する建物の崩壊、新幹線、天沼矛と呼ぶ道の寸断と海京の壊滅。いやはや、その命ではたしてあがなえるでしょうか、この失態は」
「そういう、お前こそ、スライムでさんざん失敗しているではないか」
 マナ・ウィンスレットが言い返す。
「そうでしたな。そういう意味では、ジェイドなどはあなたたちをかってもいるようですが。私から見れば、甘すぎるというところですがね。まあいいでしょう。私たちとしても、これは一つのサイクルを決めるゲームですから。五千年前のサイクルを繰り返すのか、そうでないのか、あなたたちがただの駒なのか、差し手であるのか、今度こそはっきりさせてもらいたいものです」
「ゲームだと。そんなことのために、空京の人を危険にさらすというのであるか!」
 コンスタンティヌス・ドラガセスが憤慨して叫んだ。
「おや。だって、それぐらいの命を賭け金にしなければ、あなたたちは本気にならないでしょう。あなたたちコントラクターが、ただパラミタを利用しているだけの寄生虫なのか、それとも、真にパラミタと一体化している新しき種なのか、その証しを見せてもらうとしましょう。まあ、この程度の攻撃を躱せないのであれば、放っておいてもエリュシオンに吸収されて消滅する運命ですが。さあ、では、始めましょうか!」
 オプシディアンがすっとマナ・ウィンスレットたちを指さすと、魔導球が一斉に襲いかかってきた。同時に、すべての通路のむこうからメイドロボとメカ小ババ様たちが集まってくる。
「いったん下がれ!」
 三船敬一が叫んだ。
 コンスタンティヌス・ドラガセスと白河淋に敵の攻撃を防がせつつ、三船敬一が三叉路を曲がった所まで敵を倒して後退した。かろうじて、集中砲火と挟み撃ちになることだけは防ぐ。
「その程度か。もう時間はないぞ」
 見えなくなった通路の奧から、オプシディアンの嗤う声だけが響いた。
 
 

右スラスター

 
 
「ええーい!」(V)
「えーい!」(V)
「あらあら」
 メイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)が、セシリア・ライト(せしりあ・らいと)フィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)と共にならんで、行く手を阻む物を、霧を言わず、茂みと言わず、大木と言わず、手に持った野球のバットで薙ぎ払いながら進んでいった。
「凄いです……。まるで環境破壊一歩手前ですけれど」
 感心したような、唖然としたような声でステラ・クリフトン(すてら・くりふとん)が言った。
 彼女たちの前に道はない。彼女たちの後に、ぺんぺん草一本生えない道ができる。
「あら、何か見えてきました。人もいるみたいです」
 ステラ・クリフトンが、前方を指さした。見れば、ゴチメイたちの一団がいた。すでに合流していた紫月唯斗のワイバーンも目立っていたので、場所的には分かりやすかった。
 彼女たちは一様に、突如現れたジェットエンジン製のスラスターを見つめていた。
 地表の一部がスライドして現れたスラスターは、翼のように真横に突出し、何本もの櫓状に組まれたフレームには、いくつもの巨大なジェットエンジンが収納されていた。ノズルは五方向についている。そのそれぞれにエンジンがついているのか、一つのエンジンの噴射口が各方向に変えられるのかまでは分からないが、これで島の進路を変えたらしい。島全体の推力は、おそらくは別のメインエンジンが担っているのだろう。
「現在位置は、島の右側と言っていいのかな。大雑把だが、このあたりだと思う」
 銃型ハンドヘルドコンピュータの画像を大きく拡大して地面に投影しながら、トマス・ファーニナル(とます・ふぁーになる)が説明した。ここにくるまで、ずっと雲海の島の配置図や、この島自体の地図を作っていたのだが、それがこんな形で役にたつとは思いもしなかった。
「あれが、方向変換のためのエンジンだとしたら、おそらくは、構造的に反対側にも同様の物があるでしょう。また、推力を得るためには、後方にもっと大型のエンジンがあるはずです」
 魯粛 子敬(ろしゅく・しけい)が、マップ上の各地点をポイントしながら解説していった。
「メインエンジンの方の確認はできませんが、島の左側に行ったローザたちから、巨大なエンジンを発見したという連絡が来ています」
 エシク・ジョーザ・ボルチェ(えしくじょーざ・ぼるちぇ)が、ローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)とパートナー間通信を行いながら言った。
「パートナーが、あちらにいたのでしたら幸いですな。これで密に連絡をとることができます」
 それは助かると、魯粛子敬が心の底から感謝した。
「後、俺たちは、このへんの島のど真ん中あたりで、でっかいアンテナ塔も見つけたぜ。霧と風が深くて直接は行かなかったが、間違いなくこのあたりにある」
 テノーリオ・メイベア(てのーりお・めいべあ)が自信をもって言った。
「それから、これが一番重要なことなのですが、現在、方角から考えてこの島は空京にむかっています」
「それって、ここでのんびりしていれば、戻れるっていうこと?」
 リン・ダージ(りん・だーじ)が、お気楽に魯粛子敬に訊ねた。
「とんでもない。このまま進めば、衝突です」
「ちょっと待て、そんなことになったら空京はただじゃ……」
 レン・オズワルド(れん・おずわるど)が絶句する。
「こんな物が空京に激突したら、完成したばかりのシャンバラ宮殿はおろか、天沼矛まで倒壊してしまうんじゃないですか?」
 本郷 涼介(ほんごう・りょうすけ)も心配する。
「ええ。もちろんただじゃすまないわよ」
 ミカエラ・ウォーレンシュタット(みかえら・うぉーれんしゅたっと)が、淡々と言った。
「そんな、私たちのギルドはどうなってしまうの。それに、あそこには、ミスドや、デパートや、宮殿とかもあるし、何よりもたくさんの人がいるのに」
 ノア・セイブレム(のあ・せいぶれむ)が、レン・オズワルドの腕を引っぱって真っ青な顔になった。
「本当だよねぇ。これだけの大きな物がぶつかったら、空京はおしまいだし、そんなことになったら、天御柱学院のある海京だって、無事じゃすまないものねえ」
 妙に感心しながら、月谷 要(つきたに・かなめ)が言った。だが、感心したからと言って、この暴挙を認めたわけではない。むしろ、それをどうやって阻止するかの方に興味があるという感じだ。
「星拳で、島の進路を変えるとかできないのですか?」
 紫月唯斗が、ココ・カンパーニュたちに訊ねた。
「いや。さすがにここまででっかい物は……」
 無茶を言うなと、ココ・カンパーニュが肩をすくめた。
「それに、島の上にいて地面を殴っても意味がありませんし、空中から衝撃波を放っても、足場がなければ自分が吹っ飛ぶだけです」
 アルディミアク・ミトゥナも、無理だと認めた。さすがに目標が大きすぎる。