リアクション
* * * アルファ小隊、ブラボー小隊がマリーエンケーファーに向かっている中、チャーリー小隊とデルタ小隊は、海京を取り囲む敵のイコン部隊へと戦いを挑む。 チャーリー2、【クリムゾン】が大型ビームキャノンを放った。 最初はあくまで牽制だ。 (このまま真下へ移動して……) エリィがトリガーを握り、エレナが機体の移動を行う。コームラントの最高速度を維持したままだ。 エネルギーは七割程度まで落とし、ここぞというときに備える。 『チャーリー4、援護するよ!』 チャーリー4、【ミッシング】はスナイパーライフルを構えていた。距離を保ち、シャープシューターで狙いを定める。 (狙うのは装甲の隙間、もしくは) 銃口。 照準を合わせ、精密射撃を行う。 銃弾は敵機に吸い込まれるようにして、食い込んでいく。これも訓練の賜物だ。敵の動きの先を読むように、【ミッシング】の機体は位置を変える。 「さっすが、緋翠。嫌味だけが能じゃなかったねー」 ルアークが呟いた。念入りに整備されていたおかげで、操縦がしやすくなっていたようだ。 「剣を使ってるのはまだいないみたい。だけど、絶対に来てるはず」 エヴァン・ロッテンマイヤーの機体を探すが、まだ発見は出来ない。しかし、そればかりに気を取られているわけにもいかない。 エースでなくとも、シュバルツ・フリーゲを駆る小隊長クラスは手強い。力をつけた今でさえ、一対一では厳しい相手だ。 「隙は、必ずあるはず……!」 後衛が援護を行う中、二機のイーグリットが前衛として敵機へと飛び込んでいく。 チャーリー1、【ブレイク】とチャーリー3、【フォーチュン】だ。連なって飛ぶのではなく、二機は高低差をつけ、敵小隊を挟み込む形となる。 シュメッターリングの機関銃から銃弾が放たれた。 「遅いぜ!」 【ブレイク】が加速し、銃弾をかわしていく。間合いを詰めると、今度は実体剣を抜いてきた。 エヴァンか、と思われたが違う。機体の動きが単調だ。 ビームサーベルで一気に斬りかかる。そして離脱し、ビームライフルで別の機体へと牽制射撃を行う。 (確実にボクは、ボク達は強くなってる) 戦いの中で、朱音はそれを実感していた。 連携も良くなっている。これなら…… ――さて、一ヶ月振りだな。少しは楽しませてくれよ? ぞく、とチャーリー小隊のパイロット達は殺気を感じた。声が聞こえたわけではない。 『来るよ!』 剣を携え、海面すれすれから上昇してきた機体がある。 【クリムゾン】がちょうどその真上、斜めの射線上にその姿を捉えた。 チャージが完了したビームキャノンを、フル出力で放つ。 「避けない……?」 敵の機体は、そのままビームに向かって突っ込んできた。抜刀術のような動きで、高出力のビームを斬り裂く。 (行くよ、エレナ) 【クリムゾン】の中で、エリィとエレナが黒檀の砂時計を起動する。 ビームキャノンから実体剣へと装備を切り換え、敵機に立ち向かおうとする。 否、そうではない。剣を抜いた直後に、肩部のミサイルポッドを全弾発射する。 「これで、どう!」 発射したミサイルの頭部バルカンを撃ち込み、誘爆させ、煙幕代わりにした。 「おおおおお!!」 その隙に、【ブレイク】が一気にシュメッターリングに迫る。 『なんだ、その程度か?』 ビームサーベルの斬撃はかわされ、逆に相手の攻撃が機体をかすめる。 「そこだよ!」 【フォーチュン】がビームライフルを放つ。 剣を振り下ろした直後、背中はがら空きになっていたからだ。 『単純過ぎるな』 機体を前に倒し、その攻撃を敵は避けた。 煙幕が晴れる前に、今度は【クリムゾン】がワイヤーを射出した。敵の武器を持つ腕を封じるためだ。 だが、それさえも一太刀で防がれる。ワイヤーは切断され、逆に敵は空いているもう一方の腕でそれを掴み、コームラントを引っ張ろうとした。 「ルアーク!」 【ミッシング】が武器をスナイパーライフルから通常武装のビームライフルに変更した。二挺拳銃で敵に銃撃を行う。 「いくらエースだからって、どこかに弱点はあるはず……絶対に当てて見せるよっ!」 別々のタイミングで左右のライフルのトリガーを引く。 『分かりやすい攻撃だ』 左からの銃撃は囮のつもりだった。敵はそれを避けると思ったが、回避すると見せかけて右からの銃撃を誘ってきたのだ。 フェイントにかかり、【ミッシング】は引鉄を引いてしまった。 剣の刀身部分でビームを弾き、時間差で撃ったビームを相殺してきた。 「そんな馬鹿な……!」 真似しようと思って出来る芸当ではない。 敵の空間把握能力の高さが窺い知れる。四方からの攻撃全てをあしらわれたのだ。 すぐにその機体への反撃を試みようとするが、敵は一機だけではない。 * * * 「少しは強くなったみてーだが、この程度か」 エヴァンは思う。 確かに、一ヶ月前に比べれば、相手の実力は上がっている。だが、攻撃パターンはこちらの予測の範疇を出ていない。 「不満そうだねー、ロッちゃん」 「……見せてみろよ、お前達の覚悟ってヤツをよ」 ただ天御柱学院のイコン部隊を見据え、エヴァンは呟いた。 |
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