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リアクション
(・懐疑)
「F.R.A.G……こんなに強いとは」
杵島 一哉(きしま・かずや)はその実力を目の当たりにし、声を漏らした。
「しかし、『見知らぬ相手に気を許すな』と言われては、戦闘に専念するしかありませんね」
アリヤ・ユースト(ありや・ゆーすと)が言う。
F.R.A.Gと友好的に接しようとしても、対極に位置する勢力同士だ。
そのため、通信を気軽に飛ばすことも出来ず、今は作戦に集中する。交流などとお気楽なことを考えている場合ではない。
「今のところ異常はないんやけど……まだ油断は出来んな」
F.R.A.Gやこの共同作戦に対し、懐疑的な者は多い。雷上動に搭乗している穂波 妙子(ほなみ・たえこ)もその一人だ。
反シャンバラ勢力から持ちかけられたということは、出撃前に五月田教官の口から伝えられている。
「どや、鬼姫?」
朱点童子 鬼姫(しゅてんどうじ・おにひめ)に状況を尋ねる。妙子が大型ビームキャノンで狙撃に専念している間に、彼女に情報収集をしてもらっている、というわけだ。
基本的にF.R.A.Gと学院の連合部隊のやや後方に構え、狙うのは敵の機体ではなく基地そのものだ。
発進口を潰せば、敵イコンがそれ以上出撃出来なくなる。五ヶ所あるそれら全てを狙うには、距離が足りない。
高度を落とし、最も近い部分に照準を合わせ、発射する。
「今のところ、不審な動きはないぞ。むしろ、F.R.A.Gの方がこちらより前で戦っておる」
気付いたことは、クルキアータが敵機を墜とす際、『基地に墜落するように』していることくらいだ。
周辺地域に被害を出さないように配慮しているのだろう。むしろ、あれだけ前面に出ているにも関わらず、それだけの余裕があるのが驚きだ。
「寺院とグル……ってわけではなさそうやな。せやったら容赦なく攻撃出来んやろうし」
ヨーロッパ同時多発テロを瞬く間に鎮圧したことの手際の良さを考えれば、その可能性もゼロではない。たった八機でここにやってきたことといい、どうにもきな臭いと妙子は感じていた。
しかし、F.R.A.Gの実力は紛れもなく本物である。
「前に出ている以上、こちらは慎重にならざるを得なそうじゃな。わらわ達に背中を向けているということは、万が一にも背後に攻撃を食らったらどうなるか……」
偶然を装ったアクシデント。
F.R.A.Gがこちらを信用して背中を預けているとは考えにくい。前にいるのは、後方からの射撃を受けやすくするためかもしれない。
穿った見方かも知れないが、この作戦を乗り切るためにはそのくらいでなくてはならないと考えている。
念のため、頭部カメラの映像を動画として残せるように設定している。後方にいるのは、それもあってのことだ。
基地へと砲撃を行い、敵機に存在が悟られるとすぐにミサイルポッドを煙幕代わりにして位置を変更する。
無論、F.R.A.Gの姿を見失わないようにして、である。
「ギルティ、あたし達は支援に回るわよ」
「前線に出て手柄を立てないの?」
【雷上動】と同じく、後方支援に回っているのはコンクリート モモ(こんくりーと・もも)とハロー ギルティ(はろー・ぎるてぃ)が搭乗するコームラントカスタムだ。
「いざとなって、動けるイコンがなかったら困るでしょ」
それは建前だ。モモも、F.R.A.Gを警戒している。
「鏖殺寺院を殲滅した後にF.R.A.Gがどう動くか分からないか〜」
もしかしたら、突然こちらのイコンに攻撃を仕掛けてくるかもしれない。決してあり得ない話ではない。
だからこそ、ビームキャノンで援護を行いながらも、情報収集に専念する。
「第二世代機と言っても、パイロットが超能力者や強化人間でないなら……」
クルキアータの不意をつく形で支援射撃を行ったらどうなるか。
実行しようと思ったが、危険過ぎるため断念する。
モモは、クルキアータの強さは機体の性能にあると思っていた。
だが、強さの本質はその性能を引き出せるパイロットにある。まだ彼女はそれに気付いていない。
「でもF.R.A.Gの武器ってなんで実体剣とか実体弾とか、実体系ばっかりなんダロウ?」
「機晶エネルギーの消費を抑えるためじゃないかしら? ただ、実体弾の場合は弾切れに注意しなければならないけど」
寺院もそうだが、ビーム系の武器を搭載しているイコンはそう多くない。これは組織が抱えている技術の問題もあるのだろう。
学院がビーム兵器を主体として扱えるのは、それだけ科学技術と機晶技術が高い証拠だ。
『敵の位置情報送ります』
前線のレーダーで把握し切れない範囲にいる敵の情報を送る。また、そういった敵の動きを鈍らせるため、高度を落として大型ビームキャノンを放った。
「今日は、覚醒状態になう必要はないね……」
「あくまでも『今のところは』よ」
そう、最後まで何が起こるか分からない。
「ミーが覚醒したら凄いヨー! 獣の本能が目覚めちゃうデース!」
「あんたが覚醒してどうするのよ……」
とにかく、リスクを伴う力を使わないで済むならば御の字だ。
「モモ、変なことしてF.R.A.Gとの間にトラブル起こしたらギルティね〜!」
ギルティに釘を刺されながらも、モモは照準を合わせて支援を続けていく
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