リアクション
* * * 『行くよ、翔君!』 グリフォンに乗っている桐生 理知(きりゅう・りち)は大型ビームキャノンの照準を合わせ、前衛にいる辻永 翔(つじなが・しょう)の援護を行う。 シュメッターリンクは他の小隊に任せ、指揮官機であるシュバルツ・フリーゲに狙いを定めた。 「理知、体勢を変えるよ」 北月 智緒(きげつ・ちお)が機体を操縦し、射程距離の調整をする。 「ロックオン、発射!」 攻撃するのは、相手の機関銃だ。 【グリフォン】のビームを敵の機体は避けようとする。が、その瞬間に前衛のイーグリットが接近し、ビームサーベルで右腕を斬り落とした。 後衛にいる分には、敵機は近付いてこない。 前衛に掻き乱され、数がいても【グリフォン】までは接近することが出来ないためである。 「シュメッターリンクが集まってきたよ」 いくら敵が弱いとはいえ、固まられると厄介だ。 大型ビームキャノンの射線をそちらに合わせる。また、仲間を巻き込まないようにタイミングを合わせる。 「エネルギー、チャージ完了!」 シュメッターリンクに向かって発射する。 【グリフォン】からの砲撃によって足並みを乱した敵機に向かって、すぐに照準を合わせ直す。 さっきのは牽制だ。エネルギーはまだ十分にある。 トリガーを引き、シュメッターリンクの腕を吹き飛ばす。 隙を見せた敵に、イーグリットがビームサーベルを構えて斬り込んでいく。その機動性を生かして、敵の武器やブースターを破壊する。 背後を取れれば、フローターを狙うことも出来る。そこを破壊しさえすれば、敵は飛行能力を失い、地上へと墜ちていくことになるのだ。 「理知、後ろから敵が来るよ!」 敵の基地から出てきた機体ではない。 すぐに智緒が機体を反転させ、理知がそちらに照準を合わせる。 「シュバルツ・フリーゲ!?」 距離がかなり近い。いつの間に回り込まれたのか。 増設スモークディスチャージャーを起動し、一旦敵の頭部カメラによる視界を遮る。その間に距離を取り、体勢を立て直した。 位置は敵機のいる場所の斜め下。そこから大型ビームキャノンを放つ。 「――シールド!?」 だが、その機体は他のシュバルツ・フリーゲとは違い、シールドを展開した。 こちらも【ナイチンゲール】のサポートでエネルギーシールドが張られているが、敵は元からその機能を持っているらしい。 そして機関銃だけでなく、近接戦用のランスも装備している。 そんな機体を駆る者は、これまで天御柱学院が戦ってきた敵の中でも一人しかいない。 「カミロ!?」 翔が思わず叫んだ。 「鏖殺寺院の基地だ。あの男が出てきてもおかしくはないだろう」 アリサ・ダリン(ありさ・だりん)が言う。 しかし、基地から出てきたわけではないということは、援軍なのだろうか。 「あん、あのイコンは……?」 アモンに乗って翔と共に前衛で戦っていた天空寺 鬼羅(てんくうじ・きら)も、カミロのシュバルツ・フリーゲ・オリジナルの存在に気付いた。 「ち、雑魚は引っ込んでろ!」 眼前にいるシュメッターリンクをビームサーベルで一刀両断し、カミロ機へ向かっていく。 接近してくる敵機に対しては【ナイチンゲール】によるエネルギーシールドが威力を軽減してくれるのをいいことに勢いを緩めずに飛び込み、ゼロ距離でアサルトライフルを撃ち込む。 『よう、カミロ。味方のピンチに駆けつけてきたってか?』 カミロ出現の知らせは、他の者達も知ることになった。 「ここに来て出てくるとはな」 和泉 直哉(いずみ・なおや)は初陣での駆りを返すべく、カミロのシュバルツ・フリーゲに挑もうとする。 幸い、アルファ小隊は付近のシュメッターリンクを粗方片付けている。ここからは、他の小隊と連携を行い、大将を叩くことも可能だ。 「ようやく奴のお出ましか」 ウォーレン・クルセイド(うぉーれん・くるせいど)もそれを察知し、カミロとの戦闘態勢に入ろうとする。 「待って、ウォーレン。オープン回線で通信が」 『久しぶりだな、シャンバラの学生諸君』 カミロからの声が聞こえてくる。 『私が来たのは、この近くにいる「暴君」を止めるためだ。お前達への屈辱を晴らすのは、その後にしよう。 鏖殺寺院の機体には、私に協力し――』 そのカミロ機に不意打ちを与えようとしたのは、シャンバラのどのイコンでもなく、鏖殺寺院の機体だった。 『いきなり現れて、何を偉そうに命令しようとしてんだ!』 カミロは気付いた。 ここにいる寺院は、ここ最近になってイコンを手に入れていきがっている鏖殺寺院とは名ばかりの末端の連中であると。 『大体、そんなのどこにい――』 次の瞬間、寺院の基地付近にいたシュバルツ・フリーゲ四機がまとめて消し飛んだ。 レーダーには何の反応もない。 『さあ、「暴君」のお出ましだ』 煙の中から、一機の姿が浮かび上がる。 「き、鬼羅ちゃん……あれ」 「ああッ!? なんだあの機体は!?」 煙が晴れると、リョーシカ・マト(りょーしか・まと)が息を漏らした。 「なんやあの青いイコン……こ、怖いわぁ」 見たことのない機体には、言い知れぬ不気味さがあった。 「気ぃつけなあかんで鬼羅ちゃん! 何か強烈なやつ持っとるみたいやしなぁ!」 |
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