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まほろば遊郭譚 最終回/全四回

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まほろば遊郭譚 最終回/全四回
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第四章 死闘1

「第四龍騎士団はこちらに向かっているとの情報はきいてる。マホロバだけでなく、シャンバラや他の土地にも、エリュシオンの侵攻を止めるため、ここで食い止める。エリュシオン帝国に抗議するのはその後だ」
 蒼空学園風祭 優斗(かざまつり・ゆうと)は、幕臣たちにそう語っていた。
 彼は軍師として、マホロバの損害をどれほど少なくしながら、事態の収拾に当たるかを考えていた。
 第四龍騎士団を撤収させるように外交で追い込むことができたら、無駄な戦いをしなくても済む。
 しかし、それほどの外交カードをマホロバ幕府は所持してはいい。
 また、シャンバラの介入には慎重を要しているようだった。
 第四龍騎士団を排除できなければ、同じ土俵で交渉に立つのは難しいと幕臣側が考えたようだった。
「龍騎士が実力行使ならば、マホロバもそれを迎え撃つというわけか……なんとか、内乱という形ではなく、帝国の侵略であることを海外に印象づけられるといいんだけど……」
 優斗の言葉に、鬼城の 灯姫(きじょうの・あかりひめ)は彼の肩に手を置いた。
「噴花の影響で瑞穂藩や暁津藩にも動揺が広がっている。今動こうとしているのは、蒼の審問官 正識(あおのしんもんかん・せしる)引きいる第四龍騎士団。奴らを止めればいいのだろう?」
「僕の目的はそれだけじゃない。時間を稼ぐ間に、他国との協調を模索している。復興にも時間が必要だしね」
 灯姫も優斗の言うシャンバラはどんなところなのだろうと思っていた。
 マホロバ城で、噴花や戦以外に、混乱や暴動によってマホロバ人自ら被害を拡大しないようにと、冷静さを呼びかけていた。
「……私もいつかシャンバラに行けるのか?」
「ああ、灯姫がシャンバラへ留学できるように、僕も頑張るよ。正式に留学制度ができるといいな、交換留学生のように。見せてやりたいものがたくさんあるんだ」
「優斗……そうだな。これが終わったら考えてみよう」
 自分が外の世界へ飛び出すなど、ほんの半年前なら考えられなかったことだ。
 灯姫は優斗の見せてくれるという新しい世界に、期待に胸をふくらませていた。

卍卍卍


「マホロバの噴花による兵士への被害は、瑞穂藩とて例外ではなかった。藩兵にも犠牲者が多数見られ、瑞穂藩民も気がかりである。よって、瑞穂藩兵は藩領へ戻した。この任務を遂行できるのは、キミたち第四龍騎士団しかいない。まだ、扶桑・天子支配が続いているマホロバを、真に開放してあげるべきではないか!」
 まだ夜明け前の早朝。
 蒼の審問官 正識(あおのしんもんかん・せしる)の鼓舞に、第四龍騎士団は沸き立つ。
 加賀 北斗(かが・ほくと)は正識に言った。
「扶桑は、人々の命を喰らい生き永らえるような怪物だ。このまま生かしておくわけにはいかないな」
 北斗は自分が日本人として生まれたという事は、以前に扶桑に命を吸われ死んだのだろうかと語った。
 神守 真紅郎(かみもり・しんくろう)も扶桑を撃つべしと凄む。
「扶桑がこんな性質の悪い世界樹だったとはな……。正識の言ってた通りユグドラシルの加護を受けた方が遥かにマシだ。少なくとも、此処にいる人達は死なずに済むだろう?」
真紅郎hはこうなる未来をわかっていながら、回避しようとしなかったと幕府と批判していた。
「……ああ」
 正識は、扶桑を倒しに行くという二人それ以上のことは言わなかった。
 北斗がふと振り返る。
「あんたを信じてここまで来た龍騎士や瑞穂藩の人々を悲しませるようなこと……安易に死を選ぶ真似だけはしないでくれよ! 」
 マホロバがユグドラシルを受け入れていれば、こんなことにはならなかっただろう……正識もそう思っていた。
 しかし――
「それでもこの地のために戦おうとして者たちがいる。なぜ」
 正識は白装束に袖を通した。
 家臣に理由を聞かれたとき、彼は何時でも見苦しくないようにと答えた。
「行こう、何が正しくて。何が間違っていたかを知るために……」
 隊長たちへ進撃の号令がかかる。