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リアクション
「行くぜリミットブレイカ―……第一世代がもう限界だって言うのなら、その限界をぶち壊せ!」
大羽 薫(おおば・かおる)とリディア・カンター(りでぃあ・かんたー)の搭乗するリミットブレイカーが、無人機に向かって飛び込んでいく。
「かおるんかおるん、おっちついてー?」
「おう、大丈夫だ。こんでも俺は落ち着いてるぜ」
だが、まだ緊張で強張っているのが、自分でも分かる。薫は、相棒たる【リミットブレイカー】に思いを巡らせた。
手に携えた実体剣。本当なら、「あの男」と決着をつけるために腕を磨き、使えるようにしていたものだ。だが、その機会は永遠に失われてしまった。
だが、いつまでも燻ってはいられない。この相棒と共に、絶対に切り抜けてやると意気込む。
「え、っとあっちこっちに敵さんたくさん!」
敵機に肉薄すると、【リミットブレイカー】の周囲に三機が集まってきた。ビームキャノンが胸部から放たれ、それを避けているうちにその中の一機が距離を詰めてくる。
「なめんなよ!」
それを実体剣で弾き、ハンドガンを撃ち込んだ。そのまま牽制しながら離脱を図るが、多少のダメージをものともしない無人機にはあまり有効な手段ではなかった。
「くっそ、数が多いな」
よく見れば、さらに二機が砲口をこちらに向けている。いつの間にか一つの小隊に囲まれている形になった。
「どうする……」
薫は奥歯を強く噛み締めた。そんな追い詰められた様子の薫を見てリディアが言った。
「かおるん、私達が天御柱に来た理由ってなんだっけ。こういう場面で戦いたいからじゃなかったかな」
「こういう場面……?」
そこで、はっとする。
そうだ、この状況は自分が夢見てたものではないか。世界の危機に、ロボットを駆って立ち向かう。
正義とか悪とか、地球のためだとかシャンバラのためだとか、そういう理屈はいらない。ただ、物語に出てくるようなヒーローのようになりたい、それだけだ。
そう思うと、今まで真面目に考えてたことが全部吹っ飛びそうになり、笑いが込み上げてくる。
「かおるん……まるで私たち、ロボットアニメの主人公みたい?」
そのリディアの一言で、完全に醒めた。
「そうだよな。へへ……やっぱ楽しいなぁおい! こういう空気、たまんねぇぜ!」
まさに最終決戦。物語のクライマックスだ。
薫は強い震えを感じた。恐れからではない。今の状況に、興奮を覚えたのだ。
「かおるん?」
「ははっ、俺らは世界を救うヒーローだぜ? なら、燃えねぇわけには――いかねぇよなぁ!」
思わず薫は大声を上げた。
「あはっ、かおるんが戻ってきた!それじゃあ私もりみっかーも、いっくよーっ!」
機体のスラスターが閃き、【リミットブレイカー】の機体を押し出していくのを、薫はコックピットの中で感じた。
覚醒。機体の出力が一気に上昇していく。
ビームキャノンの砲口の向きを観察する。囲まれているなら、それを利用してやればいい。
フェイントをかけながら、敵の砲撃位置を少しずつずらしていく。そして、発射寸前の光の収束を目視した瞬間、スロットルレバーを思いっきり押し、機体を急上昇させた。
「これでどうだ!」
ビームキャノンは無人機同士で被弾し合ったものの、直撃とはならない。だが、十分だ。
「機体の真上は、センサーの死角だ!」
今度は急下降し、その速度を上乗せしてビームサーベルを思いっきり振り下ろした。
両断された機体が、古代都市へと落ちていくのが目に映った。
「さあ、かかって来い!」
無人機というだけあって、最初はその模範的なまでの連携に苦しめられそうになったものの、次第にそのパターンを把握してった。
「射程距離でいえば、こっちの方が上。敵のセンサーに感知されなければ、どうということもなさそうね」
エレナ・フェンリル(えれな・ふぇんりる)が葉月 エリィ(はづき・えりぃ)に告げた。彼女達の乗るクリムゾン零式はビームキャノンの他に、銃剣付きアサルトライフルを実弾、ビームの二挺備えている。
距離を取っての戦闘、となれば優位に立てるだろう。
基本は前衛にいる機体、主に【リミットブレイカー】のサポートだ。
「さすがに数が多いね。エレナ、黒壇の砂時計を使うよ」
覚醒状態のイーグリットについていくという意味もあるが、何より多くの機体が入り乱れる戦場を把握するためにはこうする方がいい。
杵島 一哉(きしま・かずや)とアリヤ・ユースト(ありや・ゆーすと)のケイオス、高島 真理(たかしま・まり)と源 明日葉(みなもと・あすは)が搭乗するMeteorの二機の姿が視界に入る。共にイーグリットだが、ケイオスの方がサポートに専念しているようだ。
イーグリットではあるが、ケイオスが大型ビームキャノンを構えているのが見える。第二世代機もいる中でサポートを行うためには、そのスピードにも追従出来る機体が必要だと考えてのことだろう。ブルースロートのシールドもあるため、油断しなければ確かに上手く立ち回れそうではあった。
不安要素は上空の【マリーエンケーファー?】であるが、そちらの攻撃から注意をそらさなければ、大丈夫だろう。
エリィはそのまま砲撃支援を続けた。