校長室
海に潜むは亡国の艦 ~大界征くは幻の艦~(第1回/全3回)
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★ ★ ★ 「もう出られますよ。どうぞ」 土佐のイコンデッキで、山口順子が斎賀昌毅のフレスヴェルグをうながした。 「よし、先行する小隊の奴らに追いつくぞ」 斎賀昌毅が、マイア・コロチナに言いつつ土佐を発進する。 同じく、ウィスタリアからも柊真司のゼノガイストが発進した。 「ゼノガイストの発進確認。防護シャッター閉じます」 アルマ・ライラックが、ウィスタリアのブリッジでイコンデッキのシャッターを操作した。 ★ ★ ★ 発進したイコン部隊は大きく二つに分かれた。 敵イコンを引きつける部隊と、別ルートから直接敵旗艦を攻撃する部隊である。 さらに、イコン攻撃隊は、ファスキナートルを救援するために先行するメイクリヒカイト‐Bstとブラウヴィント・ブリッツ、主力であるヴァラヌス・フライヤーの部隊を引き受けるその他のイコンとに別れている。 スキッドブラッドの攻撃部隊の後方からは、レン・オズワルドの格闘式飛空艇アガートラームがやってきている。 その他の艦艇やイコンは、独自に動いている遊撃艦を除いてはフリングホルニと共に、変化する状況に対応するために待機していた。 『――見えました。まだファスキナートルは健在です』 フェルクレールト・フリューゲルが、精神感応で十七夜リオに告げた。 レーザーマシンガンでパルスレーザーを撒きつつ、スロットルを全開にする。 突如割り込まれて、アートゥラ・フィーニクスが散開した。いつの間にか、アーテル・フィーニクスも二機増えている。それだけの敵に囲まれて、ファスキナートルはよく逃げ回れたものだ。 「いいタイミングで来てくれました」 追尾を逃れたファスキナートルが機首を上げた。素早く変形してドリェヴニー形態になる。そのまま、持っていたビームアサルトライフルを発射しながら横に薙ぐ。長くのびた光の筋が、高速で飛来するアートゥラ・フィーニクスを薙いだ。肩翼を切り落とされたアートゥラ・フィーニクスがバランスを崩してきりもみ状態になる。そこをバスターライフルで止めを刺す。 すぐさま飛行形態に戻ると、ファスキナートルが敵のレーザーバルカンを避けた。 立体的に、各イコンの進路が交差し、複雑な戦場ができあがる。 『――それにしても速い。敵スピード8!? こちらと同等だというの?』 追いつ追われつのドッグファイトを繰り広げながら、敵を分析していた十七夜リオが言った。 『――いえ、銀色の方は少し遅いです。金は、カスタムタイプかもしれません』 超電磁ネットを放出してアーテル・フィーニクスを墜落させながら、フェルクレールト・フリューゲルが言った。 そこへ、メイクリヒカイト‐Bstに覆い被さるようにしてアートゥラ・フィーニクスが迫った。飛行機型のフィーニクスでは最小旋回半径が大きいだろうと、人型の利点を生かしてメイクリヒカイト‐Bstが無茶な軌道で回避しようとする。だが、アートゥラ・フィーニクスはその機動についてきた。鳥の両足に当たる部分のクローが、メイクリヒカイト‐Bstの頭部センサーを握り潰そうと迫る。 あわやというところで、メイクリヒカイト‐Bstの振り上げた新式ビームサーベルが、敵を文字通り真っ二つにした。 「ようし、よくやったザーフィア。一機撃墜だぜ」 メイクリヒカイト‐Bstが先に超電磁ネットで動けなくしたアーテル・フィーニクスを雷皇剣で破壊したブラウヴィント・ブリッツの中で、新風燕馬が自慢げに叫んだ。実際は、漁夫の利である。 だが、気を抜いた一瞬に、マイクロミサイルの集中砲火を受ける。 「や、やっちゃった!?」 「高機動パックを切り離せ。誘爆する……!」 新風燕馬が、ザーフィア・ノイヴィントにむかって叫んだ。即座に、黒煙を上げている背部高機動パックが切り離された。直後に、高機動パックのジェネレーターが爆発し、まだ近くにいたブラウヴィント・ブリッツが爆風に押し飛ばされた。 「や、やっぱり、墜落!?」 いや、墜落以前に、敵アーテル・フィーニクスが迫ってくる。変形したアーテル・フィーニクスが、ツインレーザーライフルの狙いをブラウヴィント・ブリッツにぴったりと定めた。やられると思った瞬間、ビームの奔流がアーテル・フィーニクスを呑み込んだ。 『――燕馬、まだ生きてますね?』 精神感応で、サツキ・シャルフリヒターの声が、新風燕馬の頭の中に響いた。 『――早く、シュヴァルツガイストへ』 遅れていたシュヴァルツガイストがやっと到着したのだ。本隊とは合流せずに、直接先遣隊を追いかけてきたらしい。 「助かった。ザーフィア、逃げるぞ」 「うん、予想通りだったね」 「言うな!」 シュヴァルツガイストからのレーザーマシンガンの掩護を受けながら、ブラウヴィント・ブリッツがなんとか帰還した。 「脆いよ!」 戦線離脱するブラウヴィント・ブリッツを見て、十七夜リオが叫んだ。 『十分です。本隊が到着しました』 ファスキナートルの富永佐那から、メイクリヒカイト‐Bstに通信が入る。 両軍のイコン部隊が戦場に集結しつつあった。多数のヴァラヌス・フライヤーとフリングホルニ側のイコンが戦闘に突入する。 奇しくも、一番目立つことになったシュヴァルツガイストを中心に、戦闘が繰り広げられる。 「機動要塞への、直接攻撃を阻止するよお」 アシュラムのコックピットで、清泉北都がクナイ・アヤシに言った。いかに機動要塞と言っても、集中砲火を浴びたらまずい。 「上、ミサイル群来ます!」 禁猟区とレーダーを併用して警戒していたクナイ・アヤシが叫んだ。 アシュラムが、チャフをばらまいてミサイルを牽制し、突破してきた物はナパームで誘爆させた。 「いっくよー。ミサイル全弾発射!」 小鳥遊美羽が、グラディウスのミサイルを前方のヴァラヌス・フライヤーの一群にむかって放った。AAMがヴァラヌス・フライヤーを追尾してフライトユニットを破壊して撃墜する。 「ミサイルポッド、廃棄します」 小鳥遊美羽がガトリングガンの弾をばらまく間に、ベアトリーチェ・アイブリンガーが空になったミサイルポッドをパージして機体を軽くした。 『被弾した機体は、着陸して投降なさい!』 ウイングを撃ち抜かれて高度の下がったヴァラヌス・フライヤーに、小鳥遊美羽が勧告した。必要以上の殺生は、主義ではない。 だが、敵がそんな言葉を聞き入れるはずもなく、別のヴァラヌス・フライヤーと共に、上下からグラディウスにショルダーキャノンがむけられた。ガトリングガンで牽制しつつ、残弾がなくなった銃を投げ捨てると、グラディウスがダブルビームサーベルを抜き放つ。そのそばを下から敵の砲弾がかすめ、上方からクローを構えたヴァラヌス・フライヤーが急降下してきた。 挟み撃ちになったグラディウスが逃げ場を失う。そのとき、下方にいたヴァラヌス・フライヤーがバスターライフルに撃ち抜かれて消滅した。だが、上方のヴァラヌス・フライヤーが迫る。攻撃したとしても直撃コースだ。そのとき、横からイレイザーキャノンを受けたヴァラヌス・フライヤーの軌道が横に逸れた。すれ違い様、グラディウスがウイングを切って墜落させる。 「コハクさんです」 ベアトリーチェ・アイブリンガーが、小鳥遊美羽に告げた。 シュヴァルツガイストの上に陣どったコハク・ソーロッドが、Sインテグラルナイトの後ろに立ったローゼンクライネに、イレイザーキャノンで支援攻撃をさせている。 「やれやれ、敵に情けなどかけている余裕はないのだがのう。倒すときは、確実に仕留めるのじゃ」 織田信長が、敵アーテル・フィーニクスのまっただ中で翼を広げつつ、ぐるりと第六天魔王の機体を回転させた。嵐の術式によって、周囲のアーテル・フィーニクスがバランスを崩す。そこを第六天魔砲からの砲撃で先ほどのヴァラヌス・フライヤーのように機体中央を撃ち抜いていった。なんとか変形して背後から急襲するアーテル・フィーニクスに、振り向き様、第六天魔砲を突き出す。跳ね上がっていた砲口カバーが、勢いよく下がってきてアーテル・フィーニクスの腕にかじりついた。クラッシュバイトがアーテル・フィーニクスの腕を噛み砕くと同時に、全身に配備したクリスタルからウイッチクラフトキャノンが0距離でアーテル・フィーニクスを消滅させる。 爆炎を振り払って無事な姿を見せると、第六天魔王が次の獲物を求めた。 「混戦か。だが、こちらとしては狙いやすい」 ウイングシールドで敵ミサイルを逸らしつつ、ゼノガイストがビームアサルトライフルを構えた。 『――下です』 ヴェルリア・アルカトルの指示に、即座に柊真司が真下を通過しようとしていたアーテル・フィーニクスのブースターを撃ち抜いた。 『――右、ファスキナートル後方』 素早く機体の角度を変え、ファスキナートルとドッグファイトを演じているアートゥラ・フィーニクスを的確に狙撃する。 『――正面、来ます! ヴァラヌス2!』 「させるか!」 回避不可能と判断すると、柊真司が新式ビームサーベルを構えたままエナジーバーストで逆に突っ込んでいった。ウイングシールドとエネルギーフィールドで敵ヴァラヌス・フライヤーを弾きつつ、ファイナルイコンソードで二機動時に頭部とフライトユニットを横一線に斬り飛ばした。