葦原明倫館

リアクション

　
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「着艦許可ちょうだいよ！」
　翼を吹っ飛ばされて、ふらふら飛びながら、ライラック・ヴォルテールの乗る流星がウィスタリアに強攻着艦した。
「消火、急げ！」
　柚木桂輔が、消火剤を流星にむかって吹きつけながら叫んだ。
　
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「外れた！？」
　スフィーダレーザーを敵アートゥラ・フィーニクスに回避されて、アルバート・ハウゼンが、あわてて自分も回避運動に入った。
　高速のドッグファイトでは、陣風の大口径砲は一撃必殺であるがゆえに回避されやすい。それ以前に、流れ弾の方が問題であった。命中したとしても、貫通した場合は後ろへも被害が広がる。敵の背後に味方がいないことも確認しながら撃たなければならない。
「まだ、エネルギー残量は大丈夫ですわ。落ち着いて、次を狙いましょう」
　ソフィア・グロリアが、アルバート・ハウゼンを落ち着かせるように言った。
　
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『味方機帰還。被弾している模様。格納庫要員は退避してください！』
　飛燕の中から、山口順子が周囲の者たちに呼びかけた。
　土佐の滑走路にむかって、富永佐那のドリェヴニーが着艦進路に入る。
「緊急停止用ネット張れ。足りなければ、飛燕で受けとめる！」
　岡島伸宏が指示した。カタパルト途中に緊急停止用のネットが展開される。そこへ、右腕を失ったドリェヴニーが突っ込んできた。クリスニッツアがネットを破って、格納庫奧へと暴走する。投げ出される形になったドリェヴニーを、飛燕がなんとか受けとめて支えた。
　格納庫奧の非常用バリュートにクリスニッツアが突っ込んでなんとか止まる。
『消火急いでください！』
　バリュートを展開した長谷川真琴が、官制室から叫んだ。
「おらおらおら、どけどけー」
　消火用のホースを持ってきたクリスチーナ・アーヴィンが、クリスニッツアに消火剤をかけていった。
　
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「陣風、健在です。現時点で、味方艦船の沈没は確認されていません。イコンは数機が被弾し、各艦に収容された模様」
　土佐のレーダーに映る識別コードを確認しながら、高嶋梓が報告した。
「よし、こちらは、左舷前方、敵戦艦に砲撃を集中する。いいかげん仕留めろよ。てっ！」
　全砲塔をリンクして敵艦にむけると、湊川亮一が命令を下した。
　敵戦艦の船腹に、一列に着弾の爆発が起きる。艦内からの爆発に、砲塔が高々と空中に吹っ飛んだ。そのまま、敵艦が大地に突っ込んで爆発轟沈した。
「一隻撃沈。残る敵艦艇、大型艦２、中型艦３、艦載機およそ２０です」
　敵影が一つ消えるのを確認して、高嶋梓が湊川亮一に報告した。
　
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「敵イコンを近づけさせるなよ」
　できれば避けたかった母艦での戦闘に、瀬乃和深がルーシッド・オルフェールに言った。
「想定内だよね」
　フリングホルニの甲板上に仁王立ちになったゼアシュラーゲンで、ビームアサルトライフルとバスターライフルを両手に持って敵を攻撃しながら、ルーシッド・オルフェールが答えた。
　
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「ようし、そこなのだ。撃墜するのだ」
　フリングホルニの甲板の中央にラルクデラローズを仁王立ちにさせて、リリ・スノーウォーカーが周囲を鼓舞していた。
　ときおり飛んでくる流れ弾を、ララ・サーズデイがシールドで弾き返す。
「このままでいいんですか？」
「旧世代機のアルマインであるラルクデラローズが、第二世代機がドンパチしているまっただ中に入っていってもしょうがないのだ。機体に傷がつきでもしたらどうする」
「いや、戦闘だよ？」
　無傷というわけにはいかないだろうと、また飛んできたミサイルをスナイパーライフルで撃ち落としながら、ララ・サーズデイが言った。
「なら、上へ！」
　リリ・スノーウォーカーに言われて、反射的にララ・サーズデイがクレイモアを突きあげたラルクデラローズを高くジャンプさせた。ビームサーベルを抜いて艦橋に突っ込もうとしていたアートゥラ・フィーニクスが、下から串刺しにされて爆散する。
「ふっ、単調な攻撃だな。だが、いきなり艦橋を狙うとはなんと無粋な」
　クレイモアを元の位置に戻すと、ララ・サーズデイがつぶやいた。
　
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「積極的に迎撃せんでもよいのか？」
　ジョージ・ピテクスが、笠置生駒に聞いた。
「まだ伏兵がいるかもしれないよ。警戒はしないと……。もらったデータだと、まだ敵は……。あれ、一隻いない？　さっきまで一番後ろに位置していた戦艦か。ステルスで姿を消したのかも。それと、残った戦艦の艦首に大型ミサイルを確認。ジョージ、急いで各艦に連絡して」
　敵艦の動きに気づいて、笠置生駒がジョージ・ピテクスに言った。
　次の瞬間、敵戦艦が、艦首カタパルトから大型ミサイルを発射した。
　
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「大型ミサイルですって！？　迎撃しないと」
　連絡を受けた山葉加夜が敵を確認しようとしたが、前方に位置するＨＭＳ・テメレーアの陰となって、目視はできない。
「もう、何かこちらにもおっきな武器はないの！？」
　マジックカノンを撃ちつつ、山葉加夜が叫んだ。
　その背後で、リフトからようやくデュランドール・ロンバスのヤクート・ヴァラヌス・ストライカーがあがってきた。何やら、巨大なキャノンと一緒である。
『そこのイコンとそこのイコン、手伝え！』
　デュランドール・ロンバスが、山葉加夜と瀬乃和深に、命令した。
　
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「もう、イコンだらけで我慢できない。それにミサイルですって！？」
　甲板に出て来たシルフィスティ・ロスヴァイセが、ぼやきながら強化光翼で単身フリングホルニから飛びたった。
「むじーんぱーんち。ぜいぜい……」
　フリングホルニの甲板の上に陣どったＮｉｇｈｔ−ｇａｕｎｔｓの中で、秋月葵がぜいぜいと息を切らしながらパンチのモーションをしていた。
　モーショントレース式の操縦方式は細かい動きを再現できる代わりに、大きな動きはパイロットもそれをしなければならない。ゆえに疲れる。
「黒子ちゃん、少し変わって……」
　全身から玉の汗を噴き出しながら、秋月葵が言った。もう、着ている退魔装束がぐっしょりで気持ち悪い。背中とかが透けていないかちょっと心配だ。
「腕疲れたから、黒子ちゃんちょっと変わってよー」
「疲れるから嫌じゃ。ほれ、頑張れ」
　懇願する秋月葵に、フォン・ユンツト著『無銘祭祀書』があっさりと即答した。
　仕方ないので、なんとか秋月葵がへろへろパンチを繰り出す。
　ひょろろーっとのびていったＮｉｇｈｔ−ｇａｕｎｔｓの無尽パンチがヴァラヌス・フライヤーの横っ面を捕らえた。
　首があらぬ方向に曲がったが、敵は健在である。それでも、ＦＣＳをやられたのか、そのヴァラヌス・フライヤーが一時撤退していく。
「ふふん、フィスと出会ったのが、運の尽きだったわね」
　シルフィスティ・ロスヴァイセが素早くヴァラヌス・フライヤーの脚につかまった。そのまま、帰還する敵イコンにしがみついて、敵艦へと運ばれていった。