校長室
海に潜むは亡国の艦 ~大界征くは幻の艦~(第1回/全3回)
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★ ★ ★ 「大型ミサイル? 撃ち落とせ!」 HMS・テメレーアを越えての攻撃に、ホレーショ・ネルソンが叫んだ。対空砲座がフル稼働して、上空を飛び越えてフリングホルニを目指そうとする大型ミサイルを追尾して迎撃する。 「ターゲット、ロックオンだよ」 シュヴェルツェ シュヴェルトのウイッチクラフトキャノンの照準をミサイルに合わせて、鬼龍黒羽が言った。 「弾幕もっと張ってください!!」 HMS・テメレーアの甲板に乗ったシュヴェルツェ・シュヴェルトのコックピットで、鬼龍黒羽が叫んだ。 「やってる!」 鬼龍貴仁が叫んだ。 それを支援するように、笠置生駒のジェファルコン特務仕様からも迎撃ミサイルが発射される。 「下でなくて、上を抜けようとするとはね」 キャロライン・エルヴィラ・ハンターが、トーマス・ジェファーソンをうながした。 「抜かせないよ!」 同じくHMS・テメレーアの甲板上でキャロライン・エルヴィラ・ハンターがアウクトール・ジェイセル形態を取ると、全砲門を機体前方に集中させてミサイルを砲撃した。 集中砲火を受けたミサイルがHMS・テメレーア上空で爆発する。強大な爆炎がアウクトール・ジェイセルを打つかに思われたが、そうはならなかった。ミサイルの爆発で広がったのは、磁性粒子を含んだ煙幕だ。 「幕を張った!?」 常闇夜月があわてる。 「何かするつもりだ。対空監視!」 ホレーショ・ネルソンが叫んだ。 「敵艦位置変わらず……、いえ、一隻不明!」 ローザマリア・クライツァールが叫んだ。 「各艦、弾幕を張っていぶり出せ」 ホレーショ・ネルソンの命令に、全艦が一斉にレーザーマシンガンを煙幕にむけて放った。 光が弾けて、煙幕が吹き飛ぶ。その中から、ステルスを解除された敵戦艦が現れた。 「次の攻撃目標は?」 フリングホルニのバリアブルシールドの陰からツインレーザーライフルを縦横に発射しながら、弾幕を張ってたE.L.A.E.N.A.I.の中で、非不未予異無亡病近遠がユーリカ・アスゲージに聞いた。 「戦艦一隻、突っ込んで参りますわ!」 上方をさして、ユーリカ・アスゲージが叫んだ。 高度をとった敵戦艦が、船体にビームシールドを張って突っ込んでくる。 すでに敵戦艦はHMS・テメレーアの真上に達し、主砲塔の射角からは外れていた。 「ツインウイングに合わせて。なんとしても止めなきゃ!」 ヘイリー・ウェイクが、ユーベル・キャリバーンにむかって叫んだ。 体当たりしてでも止めようと、ツインウィングとアイランド・イーリが、前に出ようとする。 「砲撃の邪魔だ、射線上から下がれ。バランサー解除、船体を回転させろ! 左15度限界!」 他の艦艇をいったん下がらせて、ホレーショ・ネルソンが荒技に出るが、巨体が災いしてHMS・テメレーアの主砲がむく前に敵艦が通過していく。高射砲は、すべてバリアに弾かれてしまっていた。逆に、敵後方艦から、HMS・テメレーアに砲撃が襲いかかる。 「うお!?」 鬼龍貴仁のシュヴェルツェ・シュヴェルトが思わず甲板からずり落ちて地上へと落下する。トーマス・ジェファーソンのアウクトール・ジェイセルはなんとかフローターを全開にして位置を保った。 「敵駆逐艦から攻撃来ます。第二砲塔被弾、使用不能です!」 「ツインウイングとアイランド・イーリに左右防御陣を要請。敵後続艦を許すな!」 ホレーショ・ネルソンが叫んだ。 「止めないと!」 キャロライン・エルヴィラ・ハンターが叫んだが、敵戦艦はアウクトール・ジェイセルからの攻撃の被害を無視してフリングホルニを目指していた。 『間にあわせる。グレン、艦首を上げろ!』 デュランドール・ロンバスが、フリングホルニのブリッジにむかって叫んだ。 『ここに、メガバスターを固定し、カタパルトで加速して一気にバリアを撃ち抜く!』 デュランドール・ロンバスが、左右のアクア・スノーとゼアシュラーゲンに命じた。 二本の滑走路に挟まれた甲板の上に、ヤクート・ヴァラヌス・ストライカーがメガバスターランチャーを持って立ち、その右をアクア・スノーが、左をゼアシュラーゲンが、グリップを掴んで支える。その眼前には、フィールドカタパルトの加速装置が、艦中央に収束して形成されていた。フリングホルニ自体を加速砲身とするフィールド・バレル・アクセラレーターだ。この中を通った実体弾の速度を極限まで加速し、その運動エネルギーをすべて敵にぶつける兵器である。 『発射するぞ。衝撃に備えろ!』 デュランドール・ロンバスが叫んだ。 エネルギーチャージの終わったメガバスターランチャーから、フィールド・バレル・アクセラレーターに弾丸が発射される。フィールドカタパルトの力場によって超加速された弾丸が、一直線に敵戦艦の艦首中央にむかって放たれた。 バリア発生装置の中央を撃ち抜くと、衝撃波でバリアが吹き飛びつつ艦首がぐしゃりと潰れ、直後に爆発を起こして砕け散った。 「敵バリア消滅!」 「今だ、敵右舷に実体弾の砲撃を集中させろ。敵艦を押し出せ!」 高嶋梓の報告に、湊川亮一が叫んだ。土佐から、砲撃が集中する。 「こっちも押し出すよ!」 カル・カルカーが、ハーポ・マルクスを前に出して叫んだ。 「わかっとりますわなあ」 「いくのだよ」 マイクを持った高崎トメと夏侯惇が、奪い合うようにしてマイクを取った。 『ちゃんちきおけ〜さ〜♪』 放たれたソニックブラスターの音圧が敵艦を押す。 攻撃に晒された敵艦が左に曲がった。 「取り舵いっぱい!」 グレン・ドミトリーが操舵手に命じた。フリングホルニのウイングスラスターが全開となり、船体を直接左へと押しやる。 フリングホルニをかすめかねない近距離で、敵戦艦がすれ違う。 「敵艦に撃たせるな」 シールドを構えたアペイリアー・ヘーリオスを、すれ違う敵艦とフリングホルニの間に滑り込ませつつ、無限大吾が叫んだ。アペイリアーで敵の機銃を防ぎつつ、ビームアサルトライフルで砲台を潰していく。 甲板の上からは、E.L.A.E.N.A.I.が、すれ違い様にヴリトラ砲を発射していった。ゼアシュラーゲンも、敵砲塔を狙撃して潰し、フリングホルニが攻撃されないようにしていく。 細かな敵艦の破片が、フリングホルニの甲板に降り注いだ。 「どけどけどけ!」 そこへ、後方にいたはずの恐竜要塞グリムロックが割って入ってきた。 「こちらにも都合があるのでな。帝国の艦を、ここで沈ませるわけにはいかん」 その巨体をぶつけて直接敵戦艦を脇へと押しのけつつ、恐竜要塞グリムロックがフリングホルニの盾となる。 「戦傷は、要塞の勲章よ」 ジャジラッド・ボゴルが、多少の損害など無視して敵艦を押しのけていった。 「よし、離れた。砲撃を集中するであります」 「了解したのだ」 葛城吹雪の命令に、鋼鉄二十二号が答える。 フリングホルニの右側に墜落していく敵戦艦にむかって、伊勢が要塞砲を撃ち込んでいった。ウィスタリアからも集中攻撃を受けて、敵艦が爆散する。