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地に眠るは忘れし艦 ~大界征くは幻の艦(第2回/全3回)

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地に眠るは忘れし艦 ~大界征くは幻の艦(第2回/全3回)

リアクション

 
    ★    ★    ★
 
 ゴアドー島のゲートでは、盗まれたらしいデータの解析も進んでいた。
 とはいえ、ブラックボックスに近い物のため、なかなか簡単にと言うわけではなかったが。
「これは、機械さんに聞いてみるよ」
 夢宮未来が、サイコメトリで調べてみたが、思いっきりデータ自体が流れ込んできて頭をかかえた。多数の人間が触れた物は、どうにもサイコメトリには適さない。
「監視カメラのデータはどうなんだ?」
 メカ雪国ベアを空港に駐機すると、すぐにゲートの官制室に駆けつけた雪国ベアが言った。
「見てみましょう」
 ソア・ウェンボリスが言うと、やはりデータが気になって調べに来ていたリカイン・フェルマータが、再度データ盗難の場面を再生してみた。
「画面に、何か映ってるみたいだが……」
「数字ですけど……」
 雪国ベアとソア・ウェンボリスが目を細めながら数字をよく見ようとする。
「座標のようだけど……」
「うん、そう見えるよ。後、ヴィモ……、よく見えないです」
 どうやら、何かの座標を表示させているようで、そのデータを盗んでいった可能性が高くなった。
 だが、表示されていデータは一箇所ではなく、数カ所が表示されていた。
「問題は、これがどこのデータかということなんだが」
 雪国ベアが腕を組んで考え込む。
 なにしろ、座標データらしいということは分かるのだが、単位とかがまったく分からない。しかも、三次元の物ではないらしく、細かい数値データがいくつもならんでいる。
「雰囲気だと、ゲートの位置データみたいだよ」
 未来人である夢宮未来が、なんとなくそうじゃないかなと言う顔をした。
「雰囲気なの……。でも、正解そうね」
 半信半疑ながらも、状況から考えてあたりではないかとリカイン・フェルマータが言う。
「そのデータの座標が、ここのゲートの座標だとしたら、むこうから何かを送り込んでくるつもりなんじゃないだろうな。あるいは、ヴィムクティ回廊を遠隔操作するとか」
 雪国ベアの言葉に、それはまずいと一同が顔を曇らせる。
「回廊を開く際に、何か変化はありましたか?」
 リカイン・フェルマータが訊ねたが、今のところシステムに変化はないようであった。
「いずれにしても、敵がゲートを利用しているというのなら、再廻の大地のゲートをなんとしても死守する必要があるわね。アトラスの傷跡の宇宙港が壊れたので、このゲートが使えなくなったら、ニルヴァーナとの通信網が完全に封鎖されるもの」
 リカイン・フェルマータが、二つの世界の分断を危惧した。月基地との通信アンテナが復旧中のため、ニルヴァーナとの通信はゴアドー島のゲートのみという状態が続いている。もし、ここのゲートが敵に掌握された場合、ニルヴァーナで何が起こっているのかまったく分からなくなる可能性があった。それはまた、パラミタで何かが起こってもニルヴァーナでは分からないということをも意味している。戦力が分散している以上、それは致命的な情報の遅れを発生させかねなかった。
「とりあえず、鈿女さんに伝えなくっちゃ。う〜ん」
 夢宮未来が、アトラスの傷跡に残っている高天原鈿女へとテレパシーで伝えた。
 
    ★    ★    ★
 
 リリ・スノーウォーカーの許に、ララ・サーズデイが大量の紙の束を持ってきていた。請求書だ。
「こ、これは……。ちょっと待つのだ、なんでこんな物まで請求が回ってきている。アワビの損害の請求書とは、いったいどんな冗談なのだ!?」
 マネキ・ングの紛れさせた請求書を見て、リリ・スノーウォーカーが天を仰いだ。
「このままでは、有り金前部吸い取られてしまう……」
 費用対効果が、あまりにも悪すぎる。
「かくなる上は、闇ファンドからさらなる資金調達を……」
 もともと、始終金欠であったリリ・スノーウォーカーに莫大な資金があったわけではない。エステル・シャンフロウとのお見合い参加権をダシにして、資金供与を募ったものだ。もちろん、断る権利はエステル・シャンフロウにある。お見合いの参加権利であって、結果まではリリ・スノーウォーカーとしては保証するつもりもない。
「これ以上は無理だな。今でさえ、早く紹介しろと、問い合わせが殺到しているようだぞ」
「そのへんは、ブローカーになんとかしてもらうのだよ。しかし……。よし、あれを利用しよう」
 そう言うと、リリ・スノーウォーカーは山葉加夜を見つけて話を持っていった。
「――というわけで、資金協力を頼みたい。もともと蒼空学園は全面協力だったはず。このままでは、この部隊はザンスカール義勇軍に名称変更せざるを得ないからな」
「それは構いませんが、なんとか涼司さんにかけ合ってみます」
 山葉加夜が、リリ・スノーウォーカーに答えた。
 とはいえ、このときはまだ山葉 涼司(やまは・りょうじ)がニルヴァーナ創世学園へと異動になり、後任が馬場 正子(ばんば・しょうこ)になるということを誰も知らないでいた。まあ、それ以前に、御神楽 環菜(みかぐら・かんな)が設立した蒼空学園の資金を山葉涼司がすべて自由に使える保証はないわけであるが。
 当然、この話は後日反故にされることとなる。
「さて、後はイルミンであるな」
 リリ・スノーウォーカーは、今度はイルミンスール魔法学校へとコンタクトをとった。
「――というわけで、このままではイルミンスールの森を侵犯した敵を倒すのがツァンダ義勇軍となってしまうのだ。これはまずいのだ」
『何がまずいんですぅ。こっちには、なんか変なクレームがザンスカールの青二才からたくさん来ていて困ってるんですう。まさか、あなた、私の名前を騙ったりしていないですよねぇ。もしそうだとしたらお仕置きですぅ。マジックスライムちゃんは、今日も元気ですよぉ』
 プチッ。
 エリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)の恐ろしい言葉に、リリ・スノーウォーカーは反射的に電話をブッチしていた。