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地に眠るは忘れし艦 ~大界征くは幻の艦(第2回/全3回)

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地に眠るは忘れし艦 ~大界征くは幻の艦(第2回/全3回)

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 単独行動に移ったル・アンタレス号は、フリングホルニらが再廻の大地に到着したころに、ちょうどパラミタ内海に達していた。
 いつも通り、そこで空賊船を探し、その乗組員から敵要塞の情報を得ようと考える。
「前方に、空賊船発見!」
 遠めがねをのぞいていたジェニー・バールが、パラミタ内海の海面すれすれを航行する不審船を見つけて叫んだ。マストには、堂々と髑髏の旗がはためいている。正確には、空賊ではなく海賊なのであるが、ジェニー・バールとしては、獲物であれば大した違いはなかった。
「威嚇射撃開始。敵が速度を落としたら、接舷して一気に蹂躙するよ」
「アイサー」
 ジェニー・バールの命令で、ジャン・バールが砲撃しながら敵艦との間合いを詰めていく。いきなりの攻撃に驚いたのか、海賊船はあわてて逃げにかかった。水面すれすれを飛行して波を蹴たてながら、手近な島の陰に回り込んで姿を隠そうとあがく。
「ふん、たわいないね。一気に追いつくよ。上から押し潰して海に落としな」
 ジェニー・バールが、ル・アンタレス号のスピードを上げさせた。
 
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「敵艦、囮に食いついています。じきに島嶼に突入」
 ヴァッサーフォーゲル・ツヴァイの索敵手がシニストラ・ラウルスに告げる。
「ずいぶん簡単に網に引っ掛かったもんだねえ」
 デクステラ・サリクスが、シニストラ・ラウルスに言った。
「ああ。ここ最近、ずいぶんとうちの島を荒らされたからな。調子づかないように、ここいらで焼きを入れてやる。だいたい、最近は海賊狩りとか称して、いきなり襲ってくる奴らが多いからな。まったく、どっちが海賊なのか分からないぜ」
 やれやれとばかりに、シニストラ・ラウルスが肩をすくめた。
「せっかく、稼いだ金も、艦の修理代で飛んでくんじゃ、やってられないからな」
「この間、ゲートに人を運んだときは、実入りがよかったからねえ」
 にしても、ちょっと変な客だったと、デクステラ・サリクスが言った。
「ああ。おかげで、砲弾はたっぷりだ。景気よく、ふるまってやろうぜ。全艦、移動を開始しろ。包囲網を縮める」
 シニストラ・ラウルスの命令で、パラミタ内海の獣人海賊団が静かに動き始めた。
 
    ★    ★    ★
 
「ようし、逃がすんじゃないよ。舫い綱を投げるよ。総員、白兵戦用意!」
 海賊船を拿捕できる距離に捉えたジェニー・バールが叫んだ。
 だが、その瞬間にル・アンタレス号が大きく横にゆれる。
「なんだ!?」
「横から砲撃だ。別の海賊船がいるぞ!」
 即座に操船で敵からの次の砲弾を避けながらジャン・バールが叫んだ。その間に、追っていた海賊船が突然スピードを上げて離脱していく。
「応戦だよ。前の船も逃がすな!」
 叫ぶジェニー・バールだったが、今度は反対側の左舷から砲撃を受ける。
「まずい、囲まれてるぞ」
 右に左に操舵輪を回しながら、ジャン・バールが言った。
 島の陰から何隻もの海賊船が現れて、一斉に攻撃を開始する。
「ふざけて……。やっつけるよ!」
 強気に叫んだジェニー・バールであったが、多勢に無勢だ。何発か敵艦に命中させる物の、それに倍する砲弾をくらって、メインマストが吹っ飛んだ。
「無理だ。離脱するぞ」
 ジャン・バールが、ル・アンタレス号を上昇させて脱出をはかった。
「甘いな」
 待ち構えていたヴァッサーフォーゲル・ツヴァイが、すれ違い様にル・アンタレス号の舷側に砲弾を叩き込む。ぐらりと、ル・アンタレス号が傾いた。
「どうする。きっちりと沈めちゃう?」
 デクステラ・サリクスがシニストラ・ラウルスに訊ねる。
「いや、そこまですると、後々別の奴らが出てきてやっかいだろう。後は、爆散しない程度に撃ち込んでおけ」
 主砲を温存したシニストラ・ラウルスが、各艦に命じた。
 
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「工作員、無事回収しました」
「よし、ナグルファルは、このまま現在位置に固定。各艦は発進準備を整えたまま、命令を待て」
 ゴアドー島から工作員が無事に戻ってきたことを確認すると、ナグルファルの指令は静かに時を待った。この雲海からゴアドー島を観察していれば、その時はいずれ分かるだろう。