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悪戯っ子の目に涙!?

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悪戯っ子の目に涙!?

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    ☆    ☆    ☆

「いったい、どうなっちゃってるんですか」
 町のあちこちで爆発やら炎やら煙やらが噴き上げるのを見て、アルモ・インヴェン(あるも・いんう゛ぇん)は空飛ぶ箒に乗ったまま空を右往左往していた。
「ビュリさんは、どこなのです?」
 そこへ、パニック気味にビュリを捜すリフレシア・アタナディウス(りふれしあ・あたなでぃうす)が、前方不注意のまま空飛ぶ箒で突っ込んできた。
「リフレシアはん、危ないどす!」
 地上で彼女をサポートしていたパートナーのドナドール・パラセルシア(どなどーる・ぱらせるしあ)が叫んだが、時すでに遅かった。空中で、アルモとリフレシアが激突し、絡み合うようにしてきりもみ状態で墜落してくる。
「ひゃあ、くるくるくる……」
 目を回したリフレシアが、地面に激突して死んじゃうと思ったとき、がしっと強い力でだきとめられた。結構痛い。
「ほんに、よかったどすえ。なんとか、間にあいましたなあ」
 リフレシアと気絶しているアルモをだきとめたまま、機晶姫のドナドールがほっとしたように言った。
「ひゃあ、どいてどいて!」
 それも束の間、三人めがけて突っ込んできたファストナハトのスパイクバイクが、かろうじて事故を回避しながら通りすぎていく。
「ここは、危ないどす。場所を変えまひょ」
 ドナドールは、アルモたちをかかえたまま走りだした。
「なんでこんなことになってるんじゃん。それに、ブレーキがおかしいじゃん。あーん、ナガン、助けろじゃん」
 周囲で巻き起こる爆発に、ファストナハトは半べそで暴走するスパイクバイクにしがみついていた。ここまでの騒ぎを起こすことは、ナガンの計画には入っていなかったはずだ。
 やっと中央通りに辿り着いたビュリは、すぐにザックハートの姿を見つけた。無差別に周囲に爆発物を投げつけている怪しい男の姿は、一目で悪者と認定できる。
「いた、あいつじゃ。おい、そこのお前、やめぬか!」
 ザックハートの頭上でホバリングしながら、ビュリは叫んだ。
「なんだあ。本物が来ちまったか。これじゃ、適当なところを吹っ飛ばせないなあ。まあいいか。とりあえず御挨拶だ!」
 言うなり、ザックハートがいくつかの魔弾をビュリにむけて飛ばした。
 四方から魔弾が迫る。ビュリは、そのいくつかを氷塊に封じ込めて地上に叩き落としたが、さすがにすべてを防ぎきれない。
「危ない!」
 携帯につなげた光条兵器をかまえた霧島が、ツインスラッシュで二つの魔弾を斬り飛ばした。剣圧に、爆風が誰もいない方向に吹き散る。地上でも、ビュリに落とされた魔弾が爆発して、白い水蒸気を噴き上げた。
「甘いな」
 ザックハートがクイと指を上にむけると、水蒸気の中から魔弾が一つ、真下からビュリに迫った。
「くそっ」
 とっさに、霧島は自分の飛空艇をビュリの真下に滑り込ませた。直撃を避けて飛空艇のボディで魔弾を弾くようにしようとするが、ザックハートが飛空艇の手前で魔弾を自爆させた。爆風に弾かれるようにして、飛空艇が墜落していく。
「止まらないで動き回れ!」
 そう叫ぶのが精一杯で、霧島の飛空艇は民家の屋根に突き刺さって動けなくなった。
「クックック、俺様に逆らうからだ」
「なんということをするのじゃ」
 怒ったビュリが、素早く空を飛び回りながら、さっと右手を横に振った。一度に五つもの火球が現れて、雨のようにザックハートめがけて降り注ぐ。
「やるじゃないか」
 素早く走り回ってビュリの攻撃を避けながら、ザックハートが不敵に言った。
「おしおきじゃ!」
 ビュリが、雨あられとザックハートにむかって火球を放つ。
「すごいなあ。確かに、あんなに力があるんなら、魚を炭にしたぐらいはちゃんと手加減した結果というわけよね」
 遠巻きに二人の戦いを見ながら、五月葉 終夏(さつきば・おりが)はつぶやいた。今は迂闊には近づけそうにない。現に、流れ弾を避けるために、周囲にいた人々は逃げまどっている。
「さあ、みんなこっちだ」
 騎士鎧に身を固めたヴァーナーは、町の人の誘導を行っていた。
「はい」
 私服姿で町の人に交じっていた峰谷 恵(みねたに・けい)は、その言葉に従って緑の髪を横で一つに縛った少女騎士の方へと駆けよっていった。その間にも、流れ弾が、近くに落ちたりする。
「まずいな」
 ヴァーナーはつぶやいた。
 直接ではないにしても、ビュリのせいで町の人が傷つきでもしたら、また和解が遠のいてしまう。だが、まだビュリはそれに気づいていない。
「ビュリちゃん、周りをよく見るんだ」
 ヴァーナーは叫んでみたが、ビュリには届かないようであった。逆に、ザックハートが彼女と峰谷の存在に気づく。
「面倒だ、そこの女、俺様の盾になれ」
 ヴァーナーのふいをついて火球で攻撃すると、ザックハートは峰谷を捕まえた。左腕を豊かな胸に回して締めあげ、動きを封じると道の中央へと引きずり出す。
「不覚……」
 直撃はまぬがれたものの、ヴァーナーはランスで身体を支えながらつぶやいた。いつの間にか、ヴァーナーの足下に、光で描かれた魔法陣が浮かびあがっている。誰かが禁猟区で守ってくれたらしい。
「大丈夫? ここにヒールできる人がいればいいんだけど」
 ビャクヤ・ルキエル(びゃくや・るきえる)が、ばたばたとヴァーナーに駆けよってきた。今一度、ヴァーナー自身に禁猟区をかける。騎士鎧に、光で守護のサインが刻まれた。
「すまない。ボクは他の人の避難を優先させるから、ビュリちゃんとあの子を頼む」
「わ、分かった。なんとかやってみるよ」
 そう答えたものの、ビャクヤにも何か策があるわけではない。ビュリになんとか攻撃の手を止めるように呼びかけながら、流れ弾を火球同士の干渉で安全な方向に逸らすのが精一杯だ。
「はははは、いいぞ、いい攻撃だ。だが、そんなところで逃げ回られては面白くない。ここに下りてこい。さもないと、こいつを殺す」
「ひー。殺されるのは嫌だもん」
 ザックハートの腕の中で、峰谷が悲鳴をあげた。必死にもがいて逃げだそうとするが、体育の成績が2の峰谷では、成績18のザックハートに対してまったくの無力だ。
「ザックハート様、おかしいですよ。変です。いつもなら、そこまではやらないはずなのに……」
 ストールを巻いて青いロングヘアーと顔を不自然に隠したルアナが、物陰からパートナーのザックハートを見つめながらつぶやいた。止めたくても、とても止められるような状況ではない。
「ぬしの言うことなど、聞かぬのじゃ」
 業を煮やしたビュリが、両手を挙げた。風と炎がその手の間に集まってくる。
「それはダメです!」
 ビュリが大技を発動させようとした直前、空飛ぶ箒で水橋 エリス(みずばし・えりす)が突っ込んできた。やや遅れて、二機の飛空艇もむかってくる。なぜかギターを背負った蒼空寺 路々奈(そうくうじ・ろろな)の飛空艇と、彼女たちをここまで誘導してきた六本木の飛空艇だ。
「待ってください」
 大きく手を広げて無防備な身体を晒しながら、水橋がビュリを押し止めた。
「なんじゃ、おぬしらは」
 さすがにビュリはファイヤーストームを中断して、水橋らに誰何した。
「下をよく見てください。悪者以外にもまだたくさん人がいるんです」
 水橋が、必死に説明しようとする。
「その通りだ、偉大なる魔女。よく下を見やがれ」
 六本木の飛空艇の後ろに乗ったアレクセイも、下を指さして言った。
 ビュリが見ると、ところどころ燃えさかる炎を避けながら、五月葉やヴァーナーやビャクヤ、その他にもかけつけた翠宮 夕霞(すいのみや・ゆうか)などが避難誘導に忙殺されている。面白がったザックハートが思い出したように魔弾を放つため、一時も気が抜けない状態だ。そこにビュリの攻撃が降り注いだのでは、守れるものも守れない。
「これ以上やったら、あいつと同じだぜ」
「アレク、それは言い過ぎよ」
 言い放つパートナーを、六本木が静かに諫めた。
「もう、あなたをいじめようとしている人は、あいつ以外にはいないわ。落ち着きましょう。ねっ」
 水橋が、ゆっくりとビュリに語りかけるように言った。
「とにかく、ここはまずいよ」
 蒼空寺の言葉に、一同がうなずいた。
「じゃが、それならどうすれば……」
 ビュリは、助けを求めるように彼女の周りに集まった者たちの顔を見た。
「おいどうした、早く下りてこい。さもないと……」
「ひーん」
 ザックハートに締めつけられて、峰谷が泣き声をあげる。
「下りる場所がないんなら、今、作ってやるぜ」
 そう言うなり、ザックハートはいくつもの魔弾を周囲に振りまいた。爆発とともに、彼を中心とした同心円状に、炎の壁が広がっていく。
「隠れろ!」
 ヴァーナーが叫んだ。だが、運の悪い者たちも何人かいた。
「ひー、止まれないよー」
 ブレーキが故障して止まれなくなったスパイクバイクにしがみつきながら、ファストナハトが悲鳴をあげた。惰性で走り続けていたら、戦いのまっただ中にやってきてしまったのだ。このままでは、避けたくても避けられず、迫りくる炎の壁にまっしぐらだ。
「これにつかまれ!」
 翠宮が、とっさにランスを横にして差し出した。ファストナハトは、すれ違い様になんとかそれに飛びついてバイクから降りられたものの、炎の壁は容赦なく迫ってくる。
「くっ、逃げろ!」
 翠宮は渾身の力を込めてランスを振り回すと、ファストナハトをビャクヤたちが隠れている場所まで放り飛ばした。これでファストナハトは助かったが、翠宮が逃げる暇はもうない。
「まあ、これも一つの経験か」
 翠宮は、自嘲気味につぶやいた。
「ダメだ、もう力が……」
 ヴァーナーのときのように禁猟区で助けようとしたビャクヤだったが、彼の力はもう使い果たされていた。
 翠宮が炎の波に呑み込まれると思われたそのとき、彼女の背後に氷でできた防壁が現れた。
「わしの魔法は、誰かの役にたつものなのじゃ。そのための魔法なのじゃ」
 ビュリが叫んだ。
 だが、炎は火勢を弱めたものの、ビュリの作った氷の障壁を回り込もうとする。
「聖域の守護を……」
 間一髪、ビャクヤの禁猟区が翠宮をつつみ込んで彼女を守った。ビャクヤの後ろには、彼の背に手をあててSPリチャージを行っているファストナハトの姿がある。
「さあ、下りる場所は作ってやったぞ」
 翠宮の安否などは意にも介さず、ザックハートはビュリにむかって叫んだ。
 そのとき、広がった炎を飛び越すようにして、突然、巫丞とエレノアのコンビが飛び出してきた。
「あちちちちち……」
 隠れ身を使って今まで姿を隠していた巫丞と、そのそばで息を潜めていたエレノアだったが、この状況では出るに出られず、ずっと隠れ続けていたのだった。だが、文字通り炎に炙り出される結果となって、ついに飛び出してきたというわけである。おまけに、本当に波羅蜜多ツナギの尻に火がついて、結構大変なことになっている。
「天が呼ばない、地も呼ばない、誰も呼んでないけど来ちゃうのが私! あちちちち……、熱いので以下略!」
「はあ。なんでこんなことに。あ〜れ〜、足がもつれた〜」
 そのまま闇雲に走って火を消そうとした二人は、もんどり打って転がりながらザックハートに激突した。あまりにも予想していなかった出来事に、弾き飛ばされたザックハートが思わず峰谷を放してしまう。
「あーん」
 泣きながら逃げだした峰谷は、なんとか立ちあがった巫丞とエレノアに激突した。そのまま三人とも、ダンゴになって転がっていく。
「くそう、なんだってんだ」
 立ちあがって三人を攻撃しようとしたザックハートの眼前に、水橋の放った火球が着弾する。ザックハートがあわてて飛び退く隙に、五月葉が三人を安全な場所へ手招きした。
「場所を移そうじゃないの!」
 蒼空寺は、ザックハートを挑発した。
「さあ、ビュリさん、みんなの迷惑にならない場所にあいつを連れていきましょう」
 直後に、ザックハートには聞こえないように、小声でビュリに伝える。
「流しのお姉ちゃんの言う通りだ。そこで思いっきり叩き潰そうぜ。悪、即、滅! それが俺様のやり方だ!」
 アレクセイがぐっと拳を握りしめながらビュリをうながした。
「分かったのじゃ」
 ビュリが答え、二つの空飛ぶ箒と二機の飛空艇がその場から飛び去っていく。
「くやしかったら、追いついてみなー」
 アレクセイが、自分の尻を叩いてザックハートを挑発した。
「ふざけやがって」
 怒りにとらわれたザックハートは、ちょうど無人で走ってきたファストナハトのスパイクバイクに飛び乗ると、ビュリたちの後を追いかけていった。
「こうなったら、やっぱりあの魔女の小娘を人質にとるのが一番だな。もう充分暴れたし、おさらばする潮時だ」
 スロットルを開きながら、ザックハートはつぶやいた。
「ここら辺でいいでしょう」
 町外れの教会で、蒼空寺が飛空艇を止めた。今のところ、人影は見あたらない。
「止まったか。よし、箒から叩き落としてやる」
 ザックハートは、スパイクバイクから飛び降りると、上空のビュリたちを睨みすえた。またも乗り手に見放されたスパイクバイクは、教会の壁に激突すると横転して止まった。
 それが合図であったかのように、ビュリたちとザックハートの魔法による火球の激しい戦いが始まった。
「ちょっと、ちょっと、いったい何の騒ぎ……ぐえっ」
 戦いの喧噪に気づいて、教会の中から仁科が飛び出してきた。そのとたん、教会の前にいたザックハートに捕まってしまう。
「貴様、何者だ……」
「いいところに、新しい人質が舞い込んできたものだ。さあ、こいつの命が惜しかったら、降参して下りてこい!」
 さすがに激しく暴れる男の仁科をなんとか締めつけながら、ザックハートはビュリたちを脅した。
「しつこい奴じゃのう。こうなったら……」
「これ以上、あなたが戦ってはだめだわ」
「そういうこと。ここは俺たちが……」
 一気に大技で決めてしまおうとするビュリを、六本木とアレクセイが止めた。
「何をもめてやがる。さっさと……」
 その様子に、ザックハートが気をとられた。そんな彼を、教会の鐘楼から佐々木が見下ろしていた。
「ワタシの響を人質にとるとは、恐れを知らぬ奴だねえ。いざ、天誅!」
 佐々木がぐいと罠の紐を引っぱると、超合金パラミタZ製(自称)の金だらいが落下していった。それも、二個。
 教会のベルと言うよりも、お寺の梵鐘のような音が鈍く大きく響き渡った。
「なんで、ボクまで……」
 金だらいをまともに食らった仁科が、脳震盪を起こしてその場にばったりと倒れる。
 彼を放したザックハートは、それでもよろけながら魔弾の入った革袋をつかんで反撃しようとした。
「それ、もう一丁」
 佐々木が、予備の紐を引く。
 ごずん。
 だめ押しの金だらいが、ザックハートを直撃する。反動で、革袋を取り落としたまま、ザックハートが倒れた。
「今じゃ! ナラカに堕ちよ!」
 止めを刺そうと、ビュリが火球をザックハートにむかって放った。
「殺しちゃダメよ」
 蒼空寺が、ビュリの火球に沿うようにして火球を放った。
 二つの火球が干渉して、軌道が逸れる。
 それでも、至近弾でザックハートが吹っ飛ばされると思われたとき、一台の飛空艇がその場に猛スピードで飛び込んできた。
 飛空艇に乗った白い覆面姿の娘が、ザックハートの身体をみごとに拾いあげる。
 直後に、地上に落下した二つの火球が、落ちていた革袋を直撃する形で爆発した。予想もしなかった爆炎と煙が、もうもうとあたりにたちこめる。
「しまった、逃がしちまったか」
 ザックハートを救出したルアナの飛空艇を見失って、アレクセイがくやしそうに言った。
「ザックハート様、しっかりしてください」
 死にものぐるいで逃げながら、ルアナはザックハートに呼びかけた。彼の顔から、黒い仮面が剥がれ落ち、着ていたローブとともに灰となって跡形もなく風に飛び散る。
 ひとまず、ザックハートは気を失っているだけのようだ。
「よかった。皆様、お騒がせしました」
 そのまま、ルアナはできるだけ町から離れていった。

    ☆    ☆    ☆

「そろそろ、けりがついたころかなあ」
 空飛ぶ箒で、ビュリが住んでいるという森をめざしながら、山科はつぶやいた。ビュリが勝ったのなら、じきに戻ってくるだろう。そうなれば、独り占め状態でビュリといろいろ話せるはずだ。
 途中で、得体の知れないゴミの山のそばを通りかかったときだった。悲鳴と火の粉と共に、何かが飛んでくる。
「うわー」
 避ける間もあらばこそ、その何かにぶつかって、山科は地上に叩き落とされた。運がよかったのか悪かったのか、ゴミの山の上に叩き落とされてそれがクッションとなる。
「いてててて……。なんだお前は」
「おう、助かったぜ。ちょうどいい、ナガン様をその魔法の箒に乗せやがれ」
 有無をも言わさず、ビュリの家の罠によって吹っ飛ばされてきたナガンが山科の空飛ぶ箒にまたがった。これだけの目に遭いながら、軽傷ですんでいるところは、さすが波羅蜜多の生徒だ。
 山科は思いっきり文句を言おうとしたが、ナガンとともに飛んできた火の粉がゴミの山に燃え移ったので、あわてて空飛ぶ箒で一緒に飛び上がった。
「君たち、なんということをしてくれるんですか。ああ、せっかくビュリさんに燃やしてもらおうと思ったゴミが燃えてしまう!」
 突然の出来事に唖然としていた新川が、あわてて消火器で火を消し始めた。
「なんだ、あいつは。まあいいや、このままビュリの家まで飛んでくれ」
「なんだって?」
 ナガンの言葉に、山科は驚いて聞き返した。
「ふふふ、お宝探しよ。どうだい、この話乗るか?」
「いいだろう。乗った!」
 山科はそう答えると、ナガンとともにビュリの家をめざしていった。