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リアクション
第七章 ファイナルラップ!
激走に激走を重ねた第一回ジェイダス杯もついにファイナルラップに突入したぞ!
栄光のゴールを目指して先頭を突き進むのは、これまで地道に周回を続けてきた蒼空学園の草柳叶氣(くさやなぎ・かなき)選手!
ゴールのある芸術家通りへ入る分岐点も難なくクリア…と思いきや、突然のクラッシュ?! 後続のスパイクバイクと接触だ!
スパイクバイクを運転していたのは、顔に毒々しいペイントを施した波羅実生ナガン ウェルロッド(ながん・うぇるろっど)選手。
「大丈夫ですか!」
突然の事故に動揺したのか。草柳選手は小型飛空挺を急停止させると、転倒したナガン選手の元に駆け寄った。
「あぁ〜痛ってぇ〜、すげぇ痛ぇよぉ。これは骨が逝っちまったかもしれねぇなぁ」
大げさに顔をしかめ、腕をさすってみせるナガン選手。
「本当にごめんなさいっ。すぐに救護の人を呼びますから!」
素直な性格なのだろう。ナガン選手のケガを心配する草柳選手と裏腹に、転倒した当人の言動はどこか胡散臭い。
「俺のケガも一生モンかもしれねぇけどさぁ。あっちもヤバイかもしれねぇや」
そう言ってナガン選手が視線を向けた先には、大量に転がったワインの樽。どうやらバイクの後部座席に括り付けてあったようで、中には樽が壊れて中身が飛び散っているものもある。
「ああっ! 優勝パーティに使う高級ワインがぁ〜、あ〜あ〜こいつは大変だぁ〜、なんてことしてくれたんだぁ〜コイツは弁償してもらわないといけないなァ? 100万ぐらいするんだよねぇこのワイン、あれぇ?レースの賞金って100万だっけぇ? もしくはそのハヤぁい乗り物と交換でもいいんだぜぇ?」
これは完全に当たり屋だ。しかし、草柳選手はまったく気がつかない様子。平身低頭お詫びを続けているぞ。これではナガン選手の思うがままだ!
「ホント、ごめんなさいっ。小型飛空挺を差し上げるのは無理…ですけど、出来る限りのことはしますので!」
「それは良い心がけだな、嬢ちゃん。だったらさぁ〜」
ナガン選手に絡まれる草柳選手を尻目に、後続車達は続々と最終ストレートに突入だ!
ここで見事、優勝戦線に躍り出た選手達をを紹介するぞ。
先頭を走るのは、パートナーから空飛ぶ箒を奪い、ツインターボで走り続けてきたイルミンスールの上連雀選手。
続くのは、蒼空学園六本木優希(ろっぽんぎ・ゆうき)選手と吸血鬼のアレクセイ・ヴァングライド(あれくせい・う゛ぁんぐらいど)選手だ。運転するのはアレクセイ選手。先行する車両のスリップストリームを利用し、タイムを縮めてきた。
「いくぞ、ユーキ。しっかり捕まってろよ」
「分かりました、アレクさん!」
アレクセイ選手の身体に手を回した六本木選手。空気抵抗を無くすためにしっかりと抱きついた。六本木&アレクセイチーム、ここで一気に勝負に出るか?
暫定三位は、余分な装飾をすべて外し軽量化を図ったスパイクバイクに跨った波羅実のガートルード・ハーレック(がーとるーど・はーれっく)選手。波羅実生の定番とも言える派手なデコレーションを捨てたネイキッド仕様のバイクからも、ガートルード選手の本気が伝わってくるぞ。
ガードルート選手に続くのは、空飛ぶ箒に二人乗りをした緋桜ケイ(ひおう・けい)選手と悠久ノカナタ(とわの・かなた)選手。速度が落ちる二人乗りのデメリットを、巧みな連携で乗りきってきた。
「今日は大猟! 女収穫祭だ! ヒャッハァ〜〜!!!」
再び甲高い奇声と共に走り込んできたのは、女に飢えた誘拐犯・南鮪選手と、埃臭い倉庫から蘇りし走り屋ハーリー・デビットソン。チェックポイントで拉致った吸血鬼レースクイーン達を乗せているとはいえ、そのスピードは衰えない。やはりトリプルエンジンは無敵なのか?!
我らが薔薇学生も優勝戦線に残っているぞ!
地理的有利を最大限に活かし、淡々と走り続けてきたのは、寡黙なる白絹の貴公子・藍澤黎選手。間違った耽美主義の探求者、薔薇柄海パン姿の明智珠輝選手とリア・ヴェリー選手も後に続く。もちろん両者とも白馬の背にジェイダス様の等身大フィギアを大切に括り付けての疾走だ。ちなみに他の選手は、アルビス選手が2周目以降の通過の証を焼失させた時点で、「邪魔だ」とばかりに投げ捨てた。
「カナタ、高度を落とせ!」
最初に勝負を仕掛けたのは、イルミンスール。緋桜選手と悠久ノ選手のチームだ! 無言で頷いた悠久ノ選手が空飛ぶ箒の高度を下げた瞬間、なんと緋桜選手、自ら空飛ぶ箒を飛び降り、地面に身を躍らせたぞ?!
「行け〜〜!!カナタ、勝って来い!」
これぞ、二人乗りの弱点を克服する最終手段。自らを犠牲にしても、仲間を勝利に導く。まさに少年漫画の王道的熱い展開だ!
しかし、他の選手達も悠久ノ選手の独走を許さない。
剣の花嫁の身体から取り出した光の鞭をすかさず振るい、悠久ノ選手の跨る箒を絡め取ったのは、俊足のメイド教導団員・朝霧選手とライゼ選手だ!
朝霧選手に併走してきた比島&サイモンペアが、すかさず煙幕を張った。
「足止めは我らに任せて、貴殿は教導団の威光を知らしめるために尽力せよ!」
「比島、ありがとね! よぉ〜し、優勝目指して爆走だぁ〜!!!」
爆風に翻る朝霧選手のミニスカート。サイモン選手が張った煙幕がその中身を隠したはずだが、しっかりと見逃さなかった漢がいる。
波羅実・南選手が跨ったバイク型機晶姫ハーリー・デビットソン選手だ。
「ドルン、ドルン、ドルルルーーー!!」
突如、ライトが勢いよく点滅をはじめ、ハーリー・デビットソンの重いエンジン音が鳴り響く。同時にハーリー選手の機体が小刻みに振動をはじめた。
「ドルルルーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」
その不安定な形状ゆえだろう。バイク型機晶姫ハーリー・デビットソン。ゴール目前で暴走だぁ!!!!
牽引していたスパイクバイクの鎖を引きちぎり、乗せていた南選手もレースクイーンも振り払い、闇雲に突き進んでいくハーリー・デビットソン。朝霧選手のスパイクバイク、薔薇学ペアの白馬、六本木&アレクセイ選手の小型飛空挺を次々に抜き去り、ついには先頭のツインターボ空飛ぶ箒・上連雀選手に並んだぞぉ!!!!!
「ツインターボは最強の逃げ馬じゃと、今は亡き父上も言っておったのじゃ。置いてきた誠のためにも、バイク型機晶姫などという偽物に負けるわけにはいかんのじゃ」
必死で空飛ぶ箒に跨る上連雀選手。しかし、際限なく溢れ出す激情にその身を任せたハーリー・デビットソンの爆走は止まらないっ!!
ついには上連雀選手を抜き去り、トップに躍り出たハーリー・デビットソン。そのまま栄光のゴールを目指し一直線に飛び込んでいったぁっ!!!!!!
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