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第1回ジェイダス杯開幕!

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第1回ジェイダス杯開幕!

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第四章 通過の証、恐るべし!


「千里の道も一歩からと言いますしね。焦ってもしょうがないですね」
 暢気に呟きながら安全運転で操縦桿を握るのは、蒼空学園の本郷翔(ほんごう・かける)選手だ。
「安全第一。無理せずのんびりと走っていれば、そのうち先頭集団は自滅しますよ。私は勝利ではなく、成功を求めます」
 おっとりとした物腰の本郷選手だが運転は巧みだ。学者通りからチェックポイントがある薔薇の学舎へと向かう急カーブも難なくクリア。
 しかし、マイペース対決ならば、蒼空学園沢スピカ(さわ・すぴか)選手とシャンバラ人のパートナードゥドゥ・ホー(どぅどぅ・ほー)選手のコンビも負けていないぞ。
「100万G相当のものと言えば、やっぱりタシガンの支配権ってことですよねぇ〜」
 アクセル全開ならば妄想も全開。優勝した自分の姿を思い浮かべているのだろう。沢選手はニヤニヤと笑いながら飛空挺を操っている。
「んなわけ、ないだろ」
 生真面目を絵に描いたかのようなドゥドゥ・ホー選手は呆れ顔だ。
「何たって100万Gのものですよ。それ以外にあるわけないじゃないですか。そして、この私こそが、タシガンの次の支配者です。ふふふ」
「あくまでも学長が100万G相当と言い張っているだけだ。期待はするな」
「もしも、賞品がくだらないものだったりした時は、ジェイダスの乳毛を引っこ抜いてさしあげますよ」
 おぉっと、これは薔薇の学舎全校生徒を敵に回す暴言だぁ!!!!
 ジェイダス様と言えば、まさに天上の宝玉とも言うべき思考の存在。完成された美の体現者であるジェイダス様に、乳毛なんて汚らしいものがあるわけない!!! 
 あ〜、しかし……あったらちょっと面白いかも…とか思わなくもなかったり……真相を探るためにも、沢選手の活躍に期待しよう!


「薔薇の学舎が見えたぞ!」
 そうこうするうちに、先頭集団がチェックポイントである薔薇の学舎に到着だ。
 先陣を切って薔薇の学舎に飛び込んできたのは、羽瀬川セト(はせがわ・せと)選手とパートナーの魔女エレミア・ファフニール(えれみあ・ふぁふにーる)本郷涼介(ほんごう・りょうすけ)とヴァルキリーのクレア・ワイズマン(くれあ・わいずまん)クロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)とドラゴニュートのマナ・ウィンスレット(まな・うぃんすれっと)
 全員イルミンスール生である彼らは、チームを組んでの参加となる。チーム名は「シューティングスターズ」。同じ学校の生徒同士が作ったチームならではの息のあった連携プレーで、スタート直前から度重なる妨害をくぐり抜けてきた。
 おおっと、ここでチームの先頭を走る羽瀬川選手、スピードを緩めたぞ。
「おい…なんかヤバイ雰囲気じゃないか?」
「チェックポイントには吸血鬼がいるって聞いてはいましたけれど…」
「まさかあんなに大挙しているとは思ってもみなかったぜ」
 羽瀬川選手が示した方向に視線を移したクロセル選手、本郷選手の表情が険しくなっているぞ。
 霧が深いため、彼らの位置からではチェックポイントである薔薇の学舎をキチンと視認することができない。しかし、数え切れないほどの人影が並んでいることだけは確認できたようだ。皆、大量の武器を背負っているらしく、まさに臨戦態勢。突如襲いかかった一世一代の危機をシューティングスターズはどう乗りきるのか?!
 打開策を見いだしたのは羽瀬川選手だ。ニヤリと笑うとパートナーのエレミア選手に声をかける。
「まだ俺たちの存在に気がついていないようだ。頼んだぞ、ミア!」
「わらわに任せておけ」
 応えるや否やエレミア選手、斜めがけにしていた水筒から、血のように紅い飲み物を取り出したぞ。どうやらギャザリングヘクスを持参したようだが、どう見てもそれは「人の飲み物」ではない。しかし、エレミア選手は迷いもなく飲み込んだぁ〜!
 シューティングスターズのメンバー達は、詠唱を始めたエレミア選手を守るように円陣を組む。クロセル&マナチームは前方の吸血鬼集団を、本郷&クレアチームは後方集団の警戒を担当しているようだ。
 エレミア選手は、見えない何かを包むように両手を前方に突き出した。その小さな手の中では、小さな炎が生まれ、少しずつ成長を初める。
 それはやがて見上げるほどに巨大な炎の槍となった。
「わらわの魔力をその目に焼き付け、逝くが良い!」
 炎の槍を高らかに掲げあげたそのとき、静止の声が響いた。前方を警戒していたクロセル選手だ。
「ちょっと待ってくださいっ!」
 クロセル選手が指さした方向にメンバー達の視線が集中する。
 エレミアが生み出した巨大な炎のお陰だろう。先ほどより霧が晴れ、視界がクリアになってきている。彼らの姿も吸血鬼集団から丸見えになっていたが、目の前の光景に呆気にとられていた彼らは気がつきもしなかった。
 薔薇の学舎の校門前にいたのは、大量のジェイダス様の等身大フィギアと、タシガン市民によるボランティアのレースクイーンだ!
「後でサービスするからね〜」
 茫然自失のシューティングスターズを尻目に、悠然と走り去っていくのは薔薇の学舎の清泉北都(いずみ・ほくと)。ガリガリに痩せこけ、顔色も悪く、色気もへったくれもない吸血鬼のレースクイーンに対しても、清泉選手は愛想を振りまくことを忘れない。まさに紳士。薔薇学生に相応しい行動だ。もちろん白馬の後ろには、ジェイダス様の等身大フィギアが丁重に乗せられているぞ。
「確かに吸血鬼はいました…けど…」
「まさか吸血鬼がレースクイーンだなんて…」
 シューティングスターズにとって、このダメージは、予想外に大きかったようだ。
 未だ立ち直れないメンバー達の横を、次々と後続集団が追い抜いてゆく。後ろでひとまとめに束ねた髪をなびかせ、黙々と走り去ったのは、蒼空学園の菅野葉月(すがの・はづき)選手とパートナーの魔女ミーナ・コーミア(みーな・こーみあ)選手。手元の資料によると菅野選手は、江戸時代から続く剣術道場の生まれらしいぞ。寡黙にひたすら走るその姿からも、日々厳しい鍛錬に明け暮れていることがうかがい知れるっ。
 菅野&ミーナペアに続くのは、イルミンスール魔法学校のハティ・チェンバレン(はてぃ・ちぇんばれん)選手。スタート前での乱戦では、負傷者の手当を行っていたそうだ。その優しさと堅実な走りは、今後のレース展開にどう影響を及ぼすのか?
「なんかイマイチ使えなかったね」
 追い抜きざま、シューティングスターズの面々に冷たい視線を向ける者達もいた。蒼空学園の天津諒瑛(あまつ・りょうえい)選手と魔女のサイカ・アンラック(さいか・あんらっく)選手だ。
「吸血鬼と間違えてジェイダスの等身大フィギアに戦闘を仕掛けるなんて、馬鹿なマネをせずに済んだのだ。感謝しても良かろう」
 イルミンスールの生徒達がチームを組んで出走することを事前に知った二人は、彼らを利用しようと後を付けてきたようだ。目論見は見事成功と言うべきだが、なんだか後味が悪い気がしないでもない。
「女、オンナ、おんなぁぁぁぁあああああ〜〜〜!!!!」
 奇声とともに突入してきたのは、バイク型機晶姫ハーリー・デビットソンに跨った南鮪選手。通過の証であるジェイダス様フィギアには目もくれず、レースクイーンに突撃だぁ!
「っつか、通過の証がジェイダス校長の等身大フィギアだなんて聞いてねぇぞっ。まさかあんな馬鹿デカイものを3つも運べなんて言わねぇよなっ」
 サイドカーにレースクイーンを大量に乗せ走り去る南選手を忌々しげに見送ったのは、シューティングスターズの羽瀬川選手。
「金のジェイダス、銀のジェイダス、銅のジェイダスって言うことかもしれないですけど…」
 はい、まさにクロセル選手の推察通り! 麗しきジェイダス様を3人も乗せて栄光のゴールだなんて、薔薇学生にとっては夢のような展開だ。
「とりあえず一人ひとつずつ担当ってことでどうかな…折角のチームなんだし…それくらいならなんとか」
 本郷選手の見つけた打開策で、シューティングスターズ再起動! 巻き返しなるか?!