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首狩りウサギを捕まえろ!!

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首狩りウサギを捕まえろ!!

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マリエルの危機

 ウサギ小屋の前では、マリエル・デカトリース(まりえる・でかとりーす)が、凶暴な前歯を光らせた1匹のパラミタヴォーパルバニーと対峙していた。

「あわわわ、今はとにかくうさぎさんと目を合わせてなくちゃ・・・・・・」

 さきほど、間一髪のところでパラミタヴォーパルバニーの攻撃をかわしただけに、もしまた視線を外せば、今度こそスパッと首を切られてしまうに違いない。

 だから、ルミーナ・レバレッジ(るみーな・ればれっじ)の全校放送を聞いた生徒たちが助けに来てくれるまでは、気を抜いてはいけない。

 殺気立った緊張感の中、マリエルとウサギは微動だにせず、お互いのにらみ合いが続いた。

 そこへ、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が駆けつけた。

 美羽はルミーナの放送を聞くや、バーストダッシュを使用して、マリエルのいるウサギ小屋まで急行したのだ。

「マリエル! 大丈夫?」

「ええ、なんとか・・・・・・でも、目を動かすことができないの!」

 パラミタヴォーパルバニーは、鋭利な歯を昼の日にきらめかせながら、隙あらばいつでも飛びかからんと、ジャンプの構えを見せていた。

 と、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)に続いて、朝野 未沙(あさの・みさ)松永 亜夢(まつなが・あむ)藍月 レイ(あおつき・れい)芦原 郁乃(あはら・いくの)十束 千種(とくさ・ちぐさ)、そして橘 綾音(たちばな・あやね)がウサギ小屋にやってきた。

「これは・・・・・・まず、マリエルさんを助けるのが優先ね」

 十束 千種(とくさ・ちぐさ)は、どうしたらこの状況を打開しようかと言葉を発すると、マリエルの集中力が一瞬途切れ、目線が外れてしまった。

「キシャァァーーーッ」

 再びパラミタヴォーパルバニーが、マリエルの喉首めがけて飛びかかった。

「危ないっ」

 朝野 未沙(あさの・みさ)が、瞬時の判断でマリエルの身体を抱える。

 ピッ!

「うっ」

 朝野 未沙(あさの・みさ)の腕から鮮血がほとばしる。

 ウサギの鋭利な歯は、マリエルの首ではなく、未沙の腕をかすめたのだ。

 しかし未沙は、噛まれた腕で、ウサギの身体にエルボーを食らわせていた。

 ドサッ!

 バランスを崩したパラミタヴォーパルバニーが、地面への着地に失敗する。

「今だっ! 起き上がらないうちに捕まえるのよ!」

 すかさず芦原 郁乃(あはら・いくの)は氷術を発動し、ウサギの歯を凍らせる。

 そして、他の生徒たちは一斉にパラミタヴォーパルバニーへと群がり、凶暴なウサギを取り押さえた。

「むぎゅう・・・・・・」

 抵抗できないパラミタヴォーパルバニーは、歯を引っ込め、おとなしくなった。

 橘 綾音(たちばな・あやね)は、ウサギを抱きかかえると、松永 亜夢(まつなが・あむ)が開けてくれた鉄の扉の中へと、放り込んだ。

 ウサギ小屋の鍵が閉められたことを確認すると、朝野 未沙(あさの・みさ)はマリエルに向き直った。

「ふう、これで1匹捕まえたわね。いたた・・・・・・」

「未沙、大丈夫?」

「うん、あたしは平気。それよりマリエルさんが無事でよかった。マリエルさんが傷つくと、パートナーのマナが悲しむからね」

「ありがとう」

 とりあえずの危機を脱し、ホッとした空気が一同を満たしていた。

 そこへ、全校放送を終えたルミーナ・レバレッジ(るみーな・ればれっじ)小谷 愛美(こたに・まなみ)を伴って駆けつけてきた。

「マリエル、無事だった?」

「あ、マナ、ルミーナさん。うん、みんなが助けてくれたから、あたしは大丈夫」

「そう、それはよかったですわ」

 ルミーナがマリエルの元気な姿に喜んでいると、ウサギ小屋の前には、放送を聞いた生徒たちがぞくぞくと集まってきた。

「あ、ルミーナさん、ウサギはどうなりました? 私、捕獲作戦にご一緒します!」

 こう元気に挨拶をするのは、アリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)

「ありがとうアリア。いまマリエルたちが1匹捕まえたけど、まだ残りの9匹が逃げたままなの」

「ええっ? そうなんですか? ルミーナさんに万一の事があったら大変だわ。私、ルミーナさんの護衛をしながらウサギを探します」

「それじゃあまず、ウサギの説明をしないとね・・・・・・」

 生徒たちは輪になって、ルミーナを囲んだ。

「まず、今回逃げたウサギはパラミタヴォーパルバニーといいます。身体の大きさは30〜50cm程、ウサギにしては少し大きめね」

 ツァンダからメイド活動のためにやってきていた高務 野々(たかつかさ・のの)は、言いにくい名前に舌を噛みそうになった。

「パラミタ・ぼーぱる・バニー・・・・・・?」

「そう、このウサギは白い毛をして、一見するとかわいいんだけど、鋭い前歯をもっているの」

「ふーん。まぁとにかく、捕まえるからには、ウサギの食べそうなものを至れり尽くせりで用意しないと・・・・・・」

「あ、ちょっと待って。普通のウサギは草食でしょ。でも、このパラミタヴォーパルバニーは肉食なの」

「え? じゃあ、肉を用意しなくちゃいけないのですか? ウサギって草食だったんじゃ・・・・・・なんか、嫌な予感がしますね」

「うん。で、狩りをするときは、音もなく物陰に潜んで気配を消し、相手が油断したところを襲うのよ」

 これを聞いたガートルード・ハーレック(がーとるーど・はーれっく)は、目をキラリと光らせた。

「まるで暗殺者のようですね」

 パラミタヴォーパルバニーとの戦闘は、高レベル暗殺者との戦闘の練習になる!

 こう踏んだガートルードは、俄然燃えて来た。

「ええ、だから首狩りウサギともいわれているわ。シャンバラのいち蛮族は、このパラミタヴォーパルバニーを飼い慣らしているの。ウサギに首を狩らせて、干し首を作っていたという逸話もありますわ」

「ええー?」

 生徒たちがどよめく。

 しかし、ここで騎沙良 詩穂(きさら・しほ)は、悠然と和歌?を詠んだ。

 鳴かぬなら 私が鳴こう ホトトギス
 狩られたら 私が狩り返す 内頸静脈

 これには一部、失笑が漏れた。

 この状況でこの発言はあるかよと、明らかにドン引きしている生徒たちの気持ちが伝わってくる。

 だが、藤原 優梨子(ふじわら・ゆりこ)だけは喜んでいた。

「詩穂さん、いいなぁ・・・・・・それに、綺麗な咽喉をお持ちですね。思わず聞き惚れちゃったわ」

「ホント? さすがは優梨子ちゃんね。わかってるぅ。詩穂、最近アイドルになってきてるなあって感じるの。購買でキャラクターグッズが出たしね☆
 ・・・・・・でも、パラミタヴォーパルバニーかぁ、蒼空学園もとんでもない生き物を飼っているんだね。これはやっぱり狩られたら狩り返さないと!」

「うん、私も一人の首狩り好きとして、パラミタヴォーパルバニーにはライバル意識を感じます。相手にとって不足なしってとこね」


 ルミーナ・レバレッジ(るみーな・ればれっじ)は、生徒たちの注目を自分に戻すべく、話を再開した。

「みんな、決して油断はしないでね。パラミタヴォーパルバニーは小さくて素早いから、剣や銃で攻撃しても、なかなか当たらないと思います。それに、気配を殺しているから気づきにくいけど『殺気看破』のスキルを使えば気配を察知することができるわ」

 高務 野々(たかつかさ・のの)は、ルミーナの話を終わりまで聞こうとせず、もう捕獲に動こうとしていた。

「動物の扱いは若干苦手ですが・・・・・・守株待兔と申しますし、私も捕獲のお手伝いすることにしましょう」

「とにかく、見た目とは違って危険だから、みんな気をつけてね。お昼休みの間に残りの9匹をなんとしてでも捕まえなくては・・・・・・」

 心配そうにするルミーナに対して、霧島 春美(きりしま・はるみ)は自信たっぷりの笑顔を見せた。

「うふふ、いいところに通りかかったようね。事件のあるところに【マジカルホームズ】ありよ。ルミーナさん、心配しないで。私たちうさ耳ペアが、マジカルホームズの名に懸けて、お騒がせ事件を解決します☆ 私がのりだしたからには絶対ハッピーエンドなんだから☆」

 しかし、はしゃぐ春美の傍らでは、パートナーのピクシコラ・ドロセラ(ぴくしこら・どろせら)が少しつまらなそうにしていた。

『あーあ、マジック☆倶楽部の部員を探そうと思って蒼空学園にまで来たというのに、なぜか兎探しになっちゃったわ・・・・・・』

 しかし、ピクシコラの気持ちなど知らいでか、霧島 春美(きりしま・はるみ)は超感覚を使ってうさ耳を出すを出すと、自分の頭にかぶせた。

「あら、ピクシーもうさ耳がついてるのよね。いいね、うさ耳ペアで事件を解決よ! パラミタヴォーパルバニー、相手にとって不足はないわ。いくら気配を殺したって、私のうさ耳の敵ではないわよ☆」

 あまりに喜ぶ春美をみて、ピクシコラも思わず相好を崩していた。

「春美があんなに生き生きとしてるなんて・・・・・・人助けだし、いいかな? よぉーし、私もがんばるぞー」

 ソラ・ウィンディリア(そら・うぃんでぃりあ)も、春美たちに触発されたようだ。

「荒らぶってキタ〜!! 私も5000年前に一度首を落とされたことがあるんからね」

 芦原 郁乃(あはら・いくの)は、ソラの過去に驚きつつ、ウサギをどう警戒するか思案していた。

「パラミタヴォーパルバニーは不意打ちで襲って来るんだよねぇ。ということは、まず禁猟区を発動して、周囲を注意しながら、ウサギの後ろから近づいていこう・・・・・・といっても運動は得意じゃないから捕獲は千種にまかせようかな」

 そういうと、パートナーの十束 千種(とくさ・ちぐさ)と連れ立って、ウサギを探しに行った。

 他の生徒たちも、逃げたウサギたちを捕獲すべく、各所に散っていった。

 葛葉 明(くずのは・めい)も、捕獲に向かったが、心情としては、ウサギを檻に戻したくない気持ちが強かった。

「肉食のウサギが脱走したって、大変なことになったわね。でも、きっとウサギも野に帰りたかったのね。もし見つけたら捕まえて、こっそり野に放してあげよう・・・・・・」