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アリスからの緊急連絡

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アリスからの緊急連絡
アリスからの緊急連絡 アリスからの緊急連絡

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アリス2
 如月 佑也(きさらぎ・ゆうや)もアリスからの緊急連絡をうけた一人。
 彼は誰かか助けを求めているものと解釈して掃除用具入れや鍵のかかってる小部屋の鍵を壊して中を覗いて回る。
 だが、中には誰もいない。彼はまずひと安心したが、それでも嫌な予感がしていた。

 エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)は涼司から話は聞いていたが、緊急連絡を受けてもあえてバンダースナッチが襲撃してくる方にかけたようで、部屋の片付けを始めている。
「ガーゴイルと言えば、魔除けの像。他の仮設もあるが、学園の魔除けとなり、怪物に襲われる者をアリスとやらを通して呼び出すことで人的被害を減らそうとしているのでは?」
「やっぱり、元居た所に戻して欲しい、って伝えたいんじやないでしょうか?」
 彼の仮説にミュリエル・クロンティリス(みゅりえる・くろんてぃりす)がそう答える。
「アリスさんが、私と同じ「アリス・リリ」だとしたら、興味もあります。きっと、何かを守りたいってガーゴイルさんの想いに応えたんだと想います」
「そうかねー。まあ、時間まで待つしかない」
 とりあえず戦闘になる可能性も考慮してパワードスーツの装備もしっかりとしておいた。

「こんな電話かかって来たら行ってみたくなりますよね、ね!」
 居候先の屋敷の令嬢にそう告げると、アルメリア・アーミテージ(あるめりあ・あーみてーじ)はぱっと顔を輝かせた。
「こんなに可愛い声なんだもの、きっと可愛い子よね」
 可愛いものが大好きなアルメリアはそう言って大はしゃぎすると、失礼しますとスカートをつまびかせてお屋敷を出て行った。
 
「おーお疲れさん」
 警備員姿でそんな事を言ってきたのは神楽坂 翡翠(かぐらざか・ひすい)である。
 彼は警備員ということで学園に正々堂々と入る手段を手に入れて警戒に当たっていたのだった。
「で、どーです?」
 翡翠の言葉に一同は首を振る。
「変化なし、か。あ? でも不可視の魔法がかけられて集団で人が寝てる? となるとバンダースナッチの前にアリスが活動に入ったのかもな。バンダースナッチの襲撃は10時だからまだ時間あるしな。とにかく自分は見回りを続けるよ。それじゃ」
 そう言って去っていった翡翠に睡魔が襲ってきたのはそれから間もなくだった。
 
 夜、アリス、寝ている人を使っての電話、古代王国のガーゴイル、バンダースナッチ……全てを繋げて考えてみるが、どうしても全部を繋げる為のピースが足りないと考えていると携帯がなり、神崎 優(かんざき・ゆう)は電話にでる。電話の相手は翡翠。

「アリスです」

 それはアリスからの緊急連絡だった。
「こうなれば、あえて乗り出すしかないな……」
 優は美術室で対策をしているはずの涼司の携帯に電話を入れるがつながらない。
「どうなってるんだ?」
 美術室では涼司の携帯が鳴っているが不可視の魔法のせいで誰もとることができない状態だった。
「ええい、仕方がない。直接乗り込むぞ」
 心配そうな顔をしているパートナーたちに事情を説明して武器を取り、優は美術室へ向かう。
 パートナーの水無月 零(みなずき・れい)神代 聖夜(かみしろ・せいや)陰陽の書 刹那(いんようのしょ・せつな)たちと共に。

「こんな時間に美術室で待ってます? ……まさか愛の告白してくれるとか!? 先生まいっちゃいますね〜!」
 言ってることがおかしいが、勘違いでテンションが無駄に上がっているせいだ。アリスのことは超絶美少女と思ってる櫻井 馨(さくらい・かおる)
「愛の告白ぅ?おぬしにそんなもんくるはずないじゃろぅが」
 パートナーが夜に急に家を出ていって不審に思ったルシファー・セラフィム(るしふぁー・せらふぃむ)が問い詰める。
「ま、可愛い声だったんじゃろ? 美少女じゃなくてガーゴイルだとしてもよいではないか」
 その他にも辛辣な言葉を馨に浴びせる。
「それに、それは噂の『アリスからの緊急連絡』じゃしな。愛の告白だったら無差別に電話せんじゃろ」
「ガビーン!」
 絶望の淵に落ちる馨。しかし一転してシリアスモードになるとこう尋ねた。
「となるとルシファーさん、『アリス』の目的は何なんでしょうね……」
 それに対しアリスは自説を述べる。
「……ま、これはわしの予想じゃがのぅ…『そのアリスとガーゴイルは契約しており、ガーゴイルを助けてほしいから』とかかのぅ?
 無視すると『バンダースナッチ』がどうして来るのか全然わからんのじゃが……
 ま、美術室に行けば全部わかるかもしれんの」
 そう言って美術室に向かった二人だった。

「アリスの緊急連絡だ!」
 春日 将人(かすが・まさと)がそう叫ぶとパートナーの衛宮 睡蓮(えみや・すいれん)がビクっと反応した。
「将人さん、行くんですか?」
「ああ、睡蓮はお留守番――」
「嫌です。聞けばバンダースナッチなる魔物が出るとか。そのような所へ将人さん一人で行かせるわけにはまいりません」
 将人の言葉を遮って睡蓮が叫ぶ。
「でないと、あたし、あたし……」
 泣き落としに入る睡蓮。
「う……わ、わかった。睡蓮も一緒に行こう」
「本当ですか!」
 一転して笑顔。女の武器というものを知り尽くしている。
「ああ。10時に美術室だ。行くぞ」
「はい!」
 
「友達からの電話だと思って出たら、「アリスからの緊急連絡」だった。ということで、そんじゃ、ちょっと行って来ますか」
 紫月 唯斗(しづき・ゆいと)はちょっとコンビニ行ってきますかみたいな軽い調子で言った。
「ふむ、「アリスの緊急連絡」のぅ。何とも面妖な事件だな。ま、唯斗がヤル気になってるし何とかなるだろうよ。
 ……というかアヤツは裏があるとか考えんのか? そんなだから毎度わらわがサポートせんといかんのだ」
 パートナーのエクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)もあまり深く考えずバイクに乗り唯斗に抱きついた。
「いくぞ!」
「おう」
 こうして時間は刻一刻と過ぎていく。


 白濁した意識の中で機械的な音を聞いていた
 それは携帯電話の着信音。その身に帯びた役目を果たすべく、メロディーを鳴り響かせる。
 彼女は傍らに置いてある、その音の発生源を薄く開いた目で確認して……
「ふぁ〜い郁乃ちゃんで〜ふ むにゃ」
『今夜10時、蒼空学園美術室で待っています』
「は〜い わかったお」
 芦原 郁乃(あはら・いくの)は寝ぼけた頭でそのままなにも考えずに美術室に向かった。

(――ええっと美術室にいるんだけど…なんで美術室にいるんだろ?
 たしか家で寝てたはずなんだけど…どうして?)
 郁乃が時計を見ると9時45分。携帯電話の着信歴を見るとマビノギオン。どうやら電話を受けて来たみたいだなぁとまだすっきりしない頭を軽く振って思考速度を上げる。

 そしてそのパートナーの蒼天の書 マビノギオン(そうてんのしょ・まびのぎおん)が郁乃に電話をかける。
『あ〜マビノギオンだぁ♪』
(……えっと寝ぼけてますね)
「主 先ほどアリスからの呼び出し電話なんてかかってきてないですよね?」
『うん マビノギオンからの電話しかなかったよ』
 それを聞いてほっとしたのもつかの間。
『で、美術室に呼び出してどうしたの?』
(は? えっと、まさかとは思うんですが……)
「主 今どこにいます?」
『美術室だよ♪』
(うわぁぁぁ! やっぱりだぁ!!)
「主、はやくそこからでてっ!」と言いかけたところで途中で通話が途切れてしまい、慌てて美術室に向かうマビノギオン。

 咲夜 由宇(さくや・ゆう)は10時丁度に学園に忍びこんだ。
 パートナーのアレン・フェリクス(あれん・ふぇりくす)には「夜の学校は怖いですぅ」と言って付いてきてもらったわけだが、弄りと称してこのパートナーは時々由宇を脅かしてくる。
「うう……ぐすん……」
 軽く泣いている由宇。
「ん……まて?」
「どうしたの?」
「戦闘音だ。戦っている気配がする。撤退したほうがよさそうだな……」
「でも……」
「怖いのだろう? ならば逃げるのが得策さ」
「でも、事件は解決したいです!」
「そうか、なら、突入だ!」
「はい!」

「10時はそろそろか。襲われる生徒もでてくるはず」
 生徒たちを囮にしてバンダースナッチを捉えようと企んでいる不動 煙(ふどう・けむい)がそんな不穏な発言をする。
「バンダースナッチ捕まえて従えられるものなのか、ビーストテイマーしか無理なのか、またはバンダースナッチの知識を得たいな」
「それはいいんだが、まだ他にも電話かかってくる奴もいるんじゃないか?」
 パートナーのクー・フーリン(くー・ふーりん)がそう突っ込みを入れる。
「その通り! 電話がかかってくるほどバンダースナッチを捕まえられるということだ」
「で、結局アリスはどうするんだ?調べないのか?」
「バンダースナッチいなくなりそうだしほおっておこう」
「ま、時間が立てば解決するか」
「いざゆかん、バンダースナッチの未知なる世界へ!」
「どこまでもお供するぜ兄弟」
 そうして二人は戦闘の気配のする美術室へと向かったのであった。