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リアクション
(最近、懐が厳しい……)
そのような理由から、組合にてバイトの許可を得た織機 誠(おりはた・まこと)は、希望した綿飴の屋台でバイトをしていた。
「お兄さん、彼女とは良い関係?」
綿飴を求めてやって来た男性客のやや後方で、彼の帰りを待つような女性を見つけ、誠は訊ねた。
「いや、もう1歩てところなんですけどねー……」
上手くいかないものです、とぼやくその客に、笑みを向けると、誠は少しばかり綿飴の量を増やした。
「サービスしておきますよ、頑張ってください」
笑顔で、やや大きめの綿飴を渡すと、その客は喜んで、それを手に、女性の下へと戻っていく。
その様子を眺めていると、サービスされたことを話したのかは喧騒で聞こえないけれど、女性は喜んでいるように見えた。
「上手くいきましたでしょうか」
くすと笑い、誠はまた次の客を待った。
「夜店回りしようぜ。俺の華麗な射的の腕を見せてやるよ」
「それ思いっきりお前に有利じゃねーか陣! 剣使うもんねーかなー」
パートナーのユピリア・クォーレ(ゆぴりあ・くぉーれ)がこそこそ何かをしている様子に放っておいても大丈夫だろうと判断した高柳 陣(たかやなぎ・じん)は、セシル・レオ・ソルシオン(せしるれお・そるしおん)を誘うと屋台の賑わいへと混ざっていく。
一方、ユピリアはというと、花火玉を作成し、打ち上げを花火師に任せた後、大会の会場へとやって来ていた。セシルのパートナーであるアスティ・リリト・セレスト(あすてぃ・りりとせれすと)とカイルフォール・セレスト(かいるふぉーる・せれすと)が彼女の傍を並んで歩く。
「きっと、伝わるよね」
2人と落ち合う場所へと向かいながら、ユピリアはぽつりと呟いた。
「花火作成、頑張ってきたのだろう? まあ、頑張るのはいいが、方向性を間違っていたりして空回りしている……とアスティがよくこぼしているけれどな」
カイルフォールがユピリアを慰めるように返す。やや、励まし以外の言葉も混ざっているけれど。
「そう、アスティも私の目指すもののためにひたむきに働いてくれた。自らの想いを押し付けることなく、私のために泣いて怒ってくれた。あのときのことは生涯忘れない。ユピリアも方向性を間違わずにそうしてひたむきにやっていれば、いつか報われる日が来るだろう。どうしたら陣にきちんと伝わるか。それをよく考えてみるといい」
彼女との日々を思い出しながら語るカイルフォールに、ユピリアはこくりと深く頷く。
もうすぐ花火が上がる時間だ。
「もうそろそろ始まるかな」
花火が見れると聞いてやってきた遥風 優鈴(はるかぜ・ゆうりん)は、金魚すくいや射的などで賑わい、食べ物の匂いが漂う屋台を横目に、花火が良く見えそうな場所を求めて歩き回っていた。
そろそろ開始時刻なのか、屋台の並ぶ通りの人はまばらになって来ていて、それを抜けた先に人が集まり始めている。
優鈴もそこを目指して、歩いていると、喧騒の合間にヒュルルルル……と音が聞こえた。
「ああ……」
音を追いかけるように見上げれば、真っ暗な夜空に大輪の光の華が咲く。
「始まった……」
2発目、3発目と次々と上がっていく花火に、優鈴は見やすい場所を探した。
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