リアクション
5.キャンディー作成
「しろたん、しろたん! よかったよぉ! かわいいよぉ!! もうキスしちゃう! ちゅっちゅ」
頑固な水飴職人は愛娘の頬に、キスの雨を降らせる。白珠は、いやがりながらも笑みを浮かべている。
「それでは、水飴は」
健闘 勇刃は、老人のテンションに引きながらも話を切り出す。
「ああ、あいつらには渡していなかったとっておきがある。今日はそれを持って行ってくれ。また来週から今まで通りに卸すと伝えてくれるか?」
老人の視線の先には、水飴の容器がいくつも置かれている。在庫のすべてを蛮族には渡さず密かにとっておいたらしい。
「わかった……」
天鐘 咲夜に袖を引かれた勇人はうなづくと、水飴を持って小屋の外へと向かった。背後からは「どうしてそんなにかわいいんでちゅか〜」などと言う老人の声を聞きながら。
「健闘くんもお父さんになったらあんな感じになるのかな」
「……想像もできんな」
勇刃は肩をすくめて、歩を進める。並んで歩く咲夜の表情には気づかぬままに。
ジャタの森での騒ぎから数日後、宿り木に果実では蒼空学園のカフェテラスで販売するためのキャンディーを作るため、フル稼働で働いていた。学生たちの手で持ち込まれた至高の水飴はもうすぐなくなりそうな勢いである。
そんな忙しさの中でも、ミリアは今回の件で無償で働いてくれた者たちへのせめてものお礼にと特別なキャンディーを作っていた。
「はなまる、はーと……あ、リンゴ飴なんてのもあるんですね」
ミリアの手伝いをしていた本郷 涼介は、色とりどりのキャンディーを見て感嘆の声を上げる。涼介が担当したのは、ミリアの使った器具を片付けたり、指定された材料を量ったりといったあくまでもお手伝い的な作業だった。しかしミリアは涼介に笑みを向けて
「楽しいですね」
と言ってくれる。同じ時間と感情を分かち合う。
この瞬間のためならば、どのような苦難もいとわないだろう。
涼介は自分の中の思いを確かめると、ふたたび作業台の上のキャンディーを見つめた。
願わくは、このキャンディーがどこかの誰かの温かな気持ちを伝える橋渡しとなりますように。
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ホワイトデーのお返しは? おわり
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このたびの東日本大震災により被害を受けられた方々に、心からお見舞い申し上げると共に、一刻も早い復興をお祈り致します。
また、被災地に家族や知人のいるみなさま、無理をして体調を崩したりなさいませんようどうかご自愛ください。
こんにちは。
参加してくださった皆様、ありがとうございます。
今回、水飴の独占をしようとしていた蛮族は、実際にはパラ実とは何の関係もない人たちでした。
――アルファベットもABCくらいまでしかいえない彼らには、ドージェとそれ以外の人たちくらいの認識しかないのかもしれませんね。
それでは。