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◆第一章◆

「旅館を生存させるための戦略、略して……せいぞーん、せんりゃくー!」
 真夜中の部屋に、叫び声が響く。
「な……何や?」
 飛び起きた音々が目撃したのは、黒いロングヘアをなびかせた若い女性が、布団の上に仁王立ちしている姿だった。
「旅館の建て直しが出来ないお前に告げる」
 こっそり女将の寝室に忍び込んだ葛葉 明(くずのは・めい)が、夢のお告げという体でアドバイスを始めたのだ。
「おぬしは、一体……?」
 問いかけには答えず、明は、ビシリと女将を指さした。
「これからお前に、旅館を生存させるための戦略、略して生存戦略を、女将に授けてやる」
「はあ?」
「まず、旅館の周囲に出る魔物の内、猪と熊は鍋にして、この旅館でしか食べられない料理と言え。虎と熊は剥製にするか、毛皮をはいでお土産にしろ、金持ちはそういうのが大好きだ」
「はあ……」
 奇妙な迫力に、音々は、つい、頷いてしまう。
「いいか、魔物で失った客は魔物で取り返せ!」
 ドスン!
「うーん……」
 不意に繰り出された明の当て身で、音々は、気を失ってしまった。