波羅蜜多実業高等学校へ

葦原明倫館

校長室

空京大学へ

猫耳メイドが大切なあなたのために作ります♪

リアクション公開中!

猫耳メイドが大切なあなたのために作ります♪

リアクション

「あっ! こらっ! 待ってぇぇぇぇぇ!!」
 ミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)は平原を走るニワトリを全力で追いかけた。
 親子丼の肉を確保するために平原を訪れた生徒達は、各々の方法でニワトリの確保を試みる。
「すごいですわね。まさに根性。わたくしには真似できそうにありませんわ」
 ミルディアの走り去る姿を眺めながらリリィ・クロウ(りりぃ・くろう)は呟いた。
 リリィが祝福されし種モミを取り出す。
「ここは労せずにいきましょう。それ――!!」
 リリィは祝福されし種モミを周囲にばら撒き、茂みに身を伏せて隠れた。
「さぁ略奪者よ!どこからでもかかっておいでなさい!」
 それから数分もしないうちに作戦の効果が発揮される。
 ニワトリが祝福されし種モミにつられてやっきてたのだった。
 ニワトリが祝福されし種モミを前に、警戒して周囲をキョロキョロと見渡していた。
 リリィはニワトリが食べ始めるまで、その場で耐えた。
 そして――
「――いまですわっ!!」
 ニワトリが祝福されし種モミを食べ始めたのを確認して、リリィは飛び出した。
 リリィはニワトリに飛びかかると、首根っこに掴みかかる。
 ニワトリは首を絞めつけた痛みで足をばたつかせながら、つぶれたような声で叫びをあげていた。
「大人しくなさい!」
 リリィがニワトリを抑え込もうとしていると、どこからともなく次々とニワトリ達が現れた。
 するとニワトリ達はリリィに向かって勢いよく飛びかかり、回転しながら鋭い嘴を脇腹へと突き刺しにかかってきた。
「ちょ、ちょっとやめて――げふっ!?」
 リリィは自身に【ヒール】をかけながらどうにか耐える。だが、数の多いニワトリ相手に着々とダメージを蓄積していった。
 その時、銃声が轟き、ニワトリ達の動きが止まった。
 リリィが片手で腰を抑えながら顔を上げると、ルクセン・レアム(るくせん・れあむ)が銃口をニワトリに向けていた。
 ニワトリ達は仲間の救出を諦めて逃げ出していった。
「大丈夫?」
「ええ、なんとか……」
 リリィはぐったりと首を垂らして痙攣するニワトリが握りながら立ち上がる。
 ふらついて倒れそうになるリリィの腕をルクセンが掴む。。
「気を付けて。ここら辺にトラップをしかけてあるか――」

「待ってぇぇぇぇぇ――!!」
 
 ルクセンが周辺に仕掛けられていた罠の場所をリリィに教えようとしていると、ミルディアがニワトリを追いかけて全力で走ってきた。
 その先にはルクセンが仕掛けた罠がある。
「あ、ちょっと、そこは――」
「うわっ!?」
 ルクセンが止める前に、ミルディアが落とし穴にかかり、ニワトリと一緒に落下した。
 ルクセンは慌てて落とし穴に近づく。  
 すると、落とし穴からひょっこりとミルディアが顔を出してきた。
「やっとゲットしたよ!!」
 ミルディアの暴れるニワトリを両手で持ち上げながら、二カッと笑った
「おめでとうございますわ。わたくしも先ほど一羽目を捕まえた所ですわ」
「あたしもまだ一羽目!」
 リリィとミルディアがお互いの戦果を見せ合う。
 すると、話の展開上ルクセンにも質問の矛先が向かうのだが、彼女はまだ一匹も捕獲していなかったため、答えることを暫し躊躇った。
「えっと、私はまだ一匹も……」
「……」
「……」
 答えたルクセンをリリィとミルディアはじぃーと見つめていた。
「……な、なに、何かいいたいわけ?」
「「へぇ〜、そうなの」」
 ミルディアとリリィが口端を吊りあげて笑みを浮かべる。
 ルクセンの顔が赤く染まった。。
 ミルディアが落とし穴の周りに種を蒔いておくようにリリィに頼んだ。
 その横でルクセンは何やら作戦を経てている二人に背を向けると、拳を強く握りしめて決意を露わにする。
「絶対、負けないんだからっ!」


「オッサン、そっちにいったぞ!」
「わかっている」
 翠門 静玖(みかな・しずひさ)に言われ、風羽 斐(かざはね・あやる)はニワトリを反対側から【サイコキネシス】で黒い布で囲った。
 静玖と斐によって黒い布で周囲を覆われたニワトリは、少しおとなしくなる。
「よし、このまま誘導するぞ。雨泉、準備はいいか?」
「はい。いつでもいいです、お父様!」
 斐の問いに朱桜 雨泉(すおう・めい)が大きく手を振って応える。
 斐と静玖は息を合わせて、ニワトリを覆っていた黒い布の間に少しだけ隙間をつくり、木の根元で罠を仕掛けて待つ雨泉の元へと誘導した。
 ニワトリはなんなく罠にとらえられ、斐達は無事捕獲に成功した。
「よくやったぞ、雨泉」
「はい。チームワークの勝利です」
 斐に褒められ、雨泉が嬉しそうに笑っていた。
 すると静玖が次の獲物を捕えるべく動き出す。
「さっさと次にいくぞ。大量に捕まえないと、これっぽっちじゃ全然足らないだろ」
 雨泉が次の罠を用意し、斐と静玖がニワトリを誘導しにいった。


「待ちなさぁぁぁい!!」
「ま……ってくれ……」
 光る箒に乗ってニワトリを追いかける謎の魔法少女ろざりぃぬ(本命:九条 ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず))と、ヘトヘトになりながらその後を走って追いかけるシン・クーリッジ(しん・くーりっじ)
 ろざりぃぬ達はニワトリを追いかけて、仕掛けた落とし穴に捕えると、【ヒプノシス】をかけて眠らせた。
「よっし! また一羽GETです!」
 ガッツポーズを決めるろざりぃぬの横で、シンは肩で息をしながら必死に呼吸を整えていた。
 その様子を見たろざりぃぬが頬を膨らませる。
「ちょっと、だらしないぞぉ〜」
「だっ……てさオレ……走り、だし……ぜぇぜぇ」
 シンは何度も深呼吸して辛うじて会話ができる状態だった。
 シンは呼吸を落ち着かせると、ため息を吐いてから話を続ける。
「ハァ……ほんと、料理作るほうに回りたかったぜ。オレが家事とか得意なのしってるだろ。まぁ、一応、受けた以上最後までやるけどさ。もう少し楽をさせて欲しいぜ」
「楽ってあんな感じに?」
 ろざりぃぬが指さしながら尋ねる。
 そこでは落とし穴の周囲にばら撒かれた種に集まってきたニワトリを、隠れていたミルディアが飛出して穴へと引きづりこむ姿があった。
「なんか、ハエトリソウみたいだぜ」
「どっちかというと、アリジゴクの方じゃない」
 シンがどことなくヤル気ないオーラが漂ってくる。
「あのねぇ。言っとくけど、楽したらヒロインキャラとしては駄目なんだからね。ちゃんとわかってくれないと困るよ。私は魔法少女なんだから」
「はいはい。ごっこ遊びね……」
 ろざりぃぬの本職は魔法少女ではなかった。
 シンは面倒なパートナーだと思い深いため息を吐くと――諦めることにした。
「仕方ねぇ、ロゼが……」
「ロゼではない、ろざりぃぬと呼べ!」
「ろざりぃぬが、この「ごっこ遊び」に飽きるまで付き合ってやるかな」
 シンは気持ちを切り替えて、再び息をきらしながら草原を走り出した。


「はい、今回の目標の正式発表!! それは「あゆむさんの為に親子丼の材料を集める」でした!!」
 アザレア・パルテノン(あざれあ・ぱるてのん)がパチパチと拍手をしながら、目の前で呆然としている男は二人に公言した。
「俺はただ親子丼が食べれるゆうからきたんやが……」
「私もアザレアに「親子丼を作りましょう」と誘われたはずなのだが……」
 騙されて連れてこられた剣崎 士狼(けんざき・しろう)郭嘉 奉考(かくか・ほうこう)は眉をひそめる。
「ほら、つべこべ言ってないでさっさとニワトリを確保しましょう」
「面倒じゃのう……」
「サボっちゃ駄目ですよー」
 アザレアに急かされて、士狼はニワトリを探しに行く。
 奉考は罠を用意し、アザレアは士狼とは別の方角でニワトリが草原の中に隠れていないか目を凝らしている。
 士狼もそれに習って草の間に目を凝らした。
 すると士狼は、何やら太い枝が三本重なったような巨大な足跡を見つけた。
「士狼さん、どうかしましたか?」
 士狼が真剣に地面を眺めていることに気づいたアザレアが近づいてくる。
 すると、士狼は急にその場から離れ、近くの木陰に移動した。
「ヤル気が起きん」
 士狼は武器を膝に置きながら、木陰に腰を降ろした。
「ちょ、ちょっと士狼さん!?」
 アザレアは騙したことを怒っているのではと思い、慌てた。
「「敵を欺くなら、先ずは味方から」と思い、士狼さんを騙したことは謝ります。ほら、手伝えばちゃんと親子丼だって食べれるわけですし、一緒に頑張りましょうよ」
「……いやじゃけん」
 何度も誘うアザレアに対し、士狼は一向に首を縦に振らない。
 ついにはアザレアの方が折れてしまう。
「もう、知しません。絶対に親子丼分けてあげませんからね!」
 アザレアが目元にうっすら涙を浮かばせて、士狼の元を立ち去った。
「おい、士狼!」
 アザレアが立ち去り静かになったと思いきや、代わりに奉考が士狼に文句を言いにやって来た。
「アザレアの今回の行動は私達のことを考えてのことだろう。なのにそれを無下に断るとはひどすぎる。少しは彼女のことも考えるべきだであろう」
 だが、士狼は何も答えず、奉考の目をじっと見返しただけだった。
 交差する視線。やがて奉考が視線を士狼の金色の瞳から、手に握られた武器へと移動する。
「その表情、何か考える所があるのだろうな……」
 奉考の質問に士狼は黙ってうなずいた。
 奉考は暫く考えるように黙り込むと、不満を吐き出すように深いため息を吐いた。
「わかった。アザレアには私からも少し告げ口しておこう。だがな……少しは働かないと後が怖いことになるぞ」
 奉考がアザレアの元へと向かっていく。
 士狼は後のことを考えると、自然と眉間に皺がよっていく。
 ――士狼は肩を落としてため息を吐いた。