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新年交流会に出すおせち料理を考案せよ!

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新年交流会に出すおせち料理を考案せよ!

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「おーっと、これはコック長さんも絶賛だ! この御二方の今後に大きく期待が持てますね。さて、盛り上がってきた所でこれからは口休めの甘味枠ですね、佐々木 弥十郎組&真名美・西園寺組『創作おせち アクリトン』。さあ、名前から想像はできませんが、一体どんな料理が出てくるのでしょうか?」
 登場した料理を見て、審査員やギャラリー一同が小さく声を上げた。そこには小さいながらも、緑の鮮やかな茶巾絞りが姿を表した。
 パッと見、美味しそうな和菓子にもとれるこの創作料理。さて、その御味はどうだろう?
「さて気になる結果は……『青』二人に『赤』一人。まずまずの高評価のようですが、綿貫さん、何かコメントをお願いします」
「んー、そうやね。さつまいもを潰して茶巾絞りにしたみたいやったけど、一口サイズでなかなか食べやすい味になってたんが高評価や。見た目も綺麗な緑色やし、あの緑を出すのは難しいと思うねん、何を使ったのか気になるところやね。あと、あの風味は枇杷の種が入ってるっぽいな。あれは美容や健康にはめっちゃええって話やけど、実は取り過ぎるとあかんねん、だから口休めやからってついつい食べ過ぎには注意しなあかんところが玉にキズやね」
「あはは、やはりどんな美味しいものでも食べ過ぎには注意が必要ってことですね、女性には特にこの時期気になる問題もありますし……って、コホン、話が脱線してしまいましたね。気を取り直して、泉 椿&ミナ・エロマ&弁天屋 菊組より『鯛の口取り菓子』です。美しい芸術的作品は、目で楽しんでよし、味で楽しんでよしという正月には欠かせない縁起物の一品、果たしてその評価はいかほどに!」
 ミルディアが早くも高評するその料理が運ばれた途端、先ほどとは違い、今度はその完成された美しさに思わず声をあげる。
 それはまるで生きている鯛と錯覚するほど瑞々しく、今にも泳ぎだしそうなほど活き活きとした美の造形に、会場の者はみな心を奪われた。
「これも文句なしの『青』三人だ! やはり御節料理というだけあって、和菓子系は雰囲気も合って高評価を得やすいようですね。この食べるのももったいないくらい口取り菓子に、葉山理事長からはどんな言葉をいただけるのでしょうか?」
「ん、俺か? まあ、そうだな。確かに芸術ってのはよくわからないが、こいつは凄いって素人の俺でもよく分かるくらいの作品だな。そして肝心の味もだが、一つ一つ違う餡を使っているみたいだから飽きもせず、濃い物を食べ続けた後にはちょうどいい口休みになるんじゃないか?」
「なるほど、見た目も味もこだわりを感じるまさに職人芸でしたね、理事長ありがとうございました。続きましてリュース・ティアーレ組の『栗きんとんのパイ包み』。御節料理の定番とも言える栗きんとんをまさかのパイで包み上げたこの料理、厳格な和の中でも一際目立つ洋風の優雅なひとときを演出、まさに和と洋のコラボレーションの一品です」
 運ばれてきた料理は一見洋菓子にもとれるが、食べてみるとサックリとしたパイ生地の中から出てくる栗とさつまいもの金団、味と触感の二つで楽しませてくれる一品だ。
 しばらく試食が進み、いざ裁定が下されてみたら『青』一人に『赤』も一人という結果が表示され、ギャラリーの中からはどうしたんだろうかと、心配と戸惑いの声が小さく上がる。
「あれ、まだ一人ボタンを押していない方がいらっしゃるようですね?」
 機械の故障かと慌てて審査員の方に視線を向けると、ボタンを押した様子もなく、ただ顔をうつむかせているコック長に気がついた。
「あの、コック長さん? どこかお加減が……」
「そうか……わかったぞ!」
 心配になってミルディアが声をかけようとしたその時、ずっとうつむいたままのコック長が椅子を倒してしまうほど勢いよく立ち上がり、ガシャンと椅子の倒れる音がすべての視線を一斉に集めた。
 今、コック長の脳裏にはまさに雷鳴の轟のごとく圧倒的に、閃光のような直感が頭の中を駆け抜ける。それは今まで悩みに悩み抜き、渇望していたアイデアと言う名の一筋の光明が、まるで湯水のように溢れでてスランプという名の壁を決壊させた瞬間でもあった。
「きた……きたきたきた、閃いたぞおおおおおおお!!」
 早くこのアイデアを形にしたい、この胸高なる想いを料理という形でぶつけたい。そう考えると居ても立ってもいられなくなったコック長は、コンテストの流れすらもお構いなしに駈け出した。
「ちょっとコック長さん!? あーあ……行っちゃいましたね」
 結局コック長の唐突すぎる言動行動に追いつけるものは皆無であったため、誰もが唖然としながらコック長が消えていった校舎への正面玄関に視線を向けたまま完全停止。さっきまでの空気とは打って変わった冷たい真冬の風が、ヒューッと静かな音を立てて会場の空気を吹き去った。
「で、この場合ってさ……」
『このコンテストの続きはどうなるの〜!?』
 たっぷり一分ほどの静寂の後に、誰かの呟きにハッと我に返った会場にいた全員が叫びました。