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リアクション
◆第二章「超危険な遺跡」
超危険な遺跡の中を進む光の一行。
その一行よりも前を歩いているのはシリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)、リーブラ・オルタナティヴ(りーぶら・おるたなてぃぶ)にサビク・オルタナティヴ(さびく・おるたなてぃぶ)の3人だ。
遺跡の内部は中々に複雑な道が続いており、マッピングした遺跡の情報を、シリウスは後ろの一行へと送っていた。そしてリーブラが時折襲ってくる魔物を切り伏せ、サビクは神経を研ぎ澄ませて自分たちへと危害を加えようとするものの気配を探っている。
「しっかし、ヴァイシャリーに出かけたはずなのに、こんなところにいるとはな」
「そうですわねぇ。できればこういうのは今回だけにしてほしいですわ」
「ほんとね。超勇者って柄じゃないし……」
それぞれが役目を果たしながら、いつもと変わらぬ様子で会話を交わす3人の間には、強い信頼関係が結ばれているのが感じられた。
「一番手っ取り早いのは横取りだからな。地図の行方に興味はないが、されたら腹が立つし、警戒するに越したことはないだろ」
彼女たちが先行しているのは、横取りを警戒してのことだ。たとえシリウスたちが見つけて、地図を奪われても後ろ(出口側)には本隊が控えている。つまりは挟み撃ちにできる。
「まあ、奪われないにこしたこともないけどね」
「まずは先に手に入れなければなりませんが、どこにあるのでしょうか」
「さあな……おっと。また別れ道か」
3つに別れた通路を見て、シリウスは深い息を吐き出した。そしてその情報を光の勢力一行へと伝えた。
「また別れ道か」
シリウスからの情報に、クレーメック・ジーベック(くれーめっく・じーべっく)もまた、深いため息を吐きだした。
戦場まっただ中から召喚されてしまった彼は、早く仲間の元へ戻らねばと焦りつつ、遺跡攻略に乗り出していた。これが終われば帰れるだろう、と。
――ほんと頼むから、もう少し時と場所を選んで召喚してくれよ。
彼の切実な願いだ。
「ええい、超強いドラゴンだか超覇王の城の地図だか何か知らんが、私の邪魔をするヤツは容赦しない……てゆーか、時間が無いんだよ、時間がッ!」
そう叫びながらも、彼は瞬時に最良の道を考えていた。さっさと帰りたいのが本音だが、焦って失敗すれば本末転倒だ。慎重に、しかし迅速にことを運ばねばならない。そのために必要なのは、冷静さ。
クレーメックは深呼吸を一つし、気持ちを落ち着ける。ただそれだけで気を静められたことから、指揮官としての能力の高さがみてとれた。
――今までに入ってきた情報からして、この遺跡の構造は……となると奥へと進める最短ルートは……確立が低いか。両方に人員を配置……いや人員を割くのは危険か。
思考。そして決断まで、そう時間はかからなかった。
「右か。了解」
シリウスはクレーメックからの連絡を受けて頷き、進路を右に取る。その道があっているかどうかは分からないが、奥へと進んでいることは確かだ。
「思っていたよりも魔物が少ないのが気になりますけれど」
「誰かが倒したのかな?」
「闇のやつらじゃないといいが……ま、ここでうだうだ考えても仕方ねー。行くぜ」
少し急ぐ必要もあるか。
そう思った彼女たちは、今まで以上に気を引き締めながら、遺跡の奥へと進んでいった。
◆光?
「良く分かりませんが、つまり、ダンジョンで首を狩れば良いのです? ふむ、それではお言葉に甘えてー」
そう宣言して、一行より先にダンジョンへと入って行った藤原 優梨子(ふじわら・ゆりこ)は、それはそれは楽しそうにモンスターを狩っていた。
急所狙い……というよりも首を狙って、一撃でしとめていく。首を失った魔物が数歩だけ前へ進んだ後、音を立てて倒れていった。
「うふふふふ。これでたくさんの干し首が作れそうです。ふふふふふ」
微笑みながら今狩ったばかりの首を愛おしそうに抱き上げる姿は、遺跡の薄闇と相まって、見る者の背を凍りつかせるモノがあった。
「ああ、素敵な香りです。きっと素敵な色をしているのでしょうね。良く見えないのが残念です」
明りをつければ綺麗な赤色を見れるだろう。そう思った彼女だが、明りは灯さずに進んでいく。むしろ、時折壁にともされた明りを消していく。そして暗闇の中で魔物と殺し合う。
牙が身体をかすって血が流れても、微笑みは消えない。
「うふふ、ここを死に場所にするのも悪くないですねぇ」
まるで酒に酔ったかのような、そんな明るい笑い声が、薄暗い遺跡の中で響いていた。
◆光
ぶるっと身体を襲った寒気に、七刀 切(しちとう・きり)は周囲を見渡した。
「何か今、笑い声が聞こえたような……気のせい、か。ん〜?」
薄暗い遺跡は、どこか不気味だ。神経を研ぎ澄ませてみても、特に生物の気配は感じない。首をかしげながらも、彼は目の前のトラップへと意識を戻す。
彼もまた、光の一行とは別行動しているのだが、その理由は『お宝探し』だった。
――超危険な遺跡ならお宝だってあるはず!
そう思ってドラゴン退治は皆に任せてひたすらお宝を探し求めていた。
「よし! これで解除っと……しかし超危険って言うだけあって、罠が超多いなぁ」
軽く汗をぬぐってから切は道を見た。もういくつ目か分からない別れ道。それをじ〜っと見つめ、うん、と首を縦に振る。
「なんかこっちな気がするぜぃ!」
そうして左へと曲がり、気分良く歩いていた切が目にしたのは……。
「ぐぁおおおおおおおっ」
「あれ? もしかしてドラゴン?」
それはそれは大きなトカゲ……いや、ドラゴンだった。切は、ドラゴンの背後にあるすごそうな扉に目をやった後、
「よし、逃げよう! ワイの目当てはお宝! めんどくさいのは全部皆に丸投げだ」
ちょっとの罪悪感を抱きつつ、切は すたこらさっさ とドラゴンの前から逃げ去った。
◆光と闇
「今の声は……ドラゴンっ?」
光の一行は、突如響いた唸り声に驚きの声を上げた。久世 沙幸(くぜ・さゆき)もまた、その1人だ。
「この先にドラゴンがいるのね。よ〜し、超地図をきっと奪い取って見せるんだから!」
気合いを入れなおす彼女たちの前に
「あたしたち闇の勢力に敵対する者は、あたしが捕らえてあげるわ」
1人の女性が立ちふさがった。
「むむ、あれは超女王メニエス!」
沙幸が女性を見て声を上げた。そう、女性の名はメニエス・レイン(めにえす・れいん)。闇の女王として召喚された闇勢力の1人だ。
鞭を片手に持ちながら警戒する光の一行を順に眺めていたメニエスは、伝説の武具、ビキニアーマーに身を包んだ沙幸に目を止めた。そのまま彼女の身体を見つめ、赤い舌で唇を舐める。
「あら、貴方。いい体してるわね。調教しがいがありそう」
「どうやら狙いは私みたい。彼女は私が食い止めるわ! だから、みんなはドラゴンに集中して!」
沙幸が声をあげて皆を促す。少し戸惑った気配の後、沙幸の決意をくみ取って奥へと走って行った。
その場に沙幸とメニエスだけが残る。
「覚悟しなさい超女王メニエス! たあああっ」
勢いよく飛びかかった沙幸の剣がメニエスへと振り降ろされる。だが、
「ふっ甘いわね」
メニエスの振るう鞭がしなり、沙幸の剣へと巻きついた。そして沙幸の振った勢いそのままに引っ張られ、剣が遠くへと投げ飛ばされる。
「しまっ」
「だから甘いと言っているでしょ」
すぐさま体勢を立て直し、剣の元へと行こうとした沙幸に、メニエスは片手を向ける。すると沙幸の身体が、剣とはまるで反対方向へと飛ばされる。
それでも空中で何とか体制を整えて着地した沙幸だったが、着地点を予測していたメニエスの鞭にとらわれる。
鞭はまるで生き物のように動いて沙幸の身体へと巻きついた。
「くっ、この私が敗れるだなんて……ひゃぅっ」
動こうとした沙幸は、メニエスが鞭を動かしたことで押し黙った。その反応にメニエスが笑う。
「あら。鞭がお好き?」
「べ、別に鞭でたたかれて喜んでなんかっ!
たとえ、鞭で叩かれようと、装備を剥ぎ取られようと、心までは屈しないんだもんっ!」
強気の姿勢を崩さない沙幸に、メニエスは「そう? なら遠慮なく」と鞭の中に手を入れ、ごそごそと動かした後、ビキニアーマーを外した。つまりこの鞭の下は……。
「ちょっとなにす……ひゃっ」
「さて、どこまでその強気が持つか、楽しみね」
沙幸を連れてどこかへと去ったメニエスは、それは楽しそうに笑っていた。――沙幸の運命やいかに!?
DISC2を入れてください。
※ありません。妄想でお作りください。
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