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海水浴したいの

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第六章 夏を遊び尽くす
「皆で海へ遊びに行くのもいいよね、すごく楽しみ!」
 サズウェル・フェズタ(さずうぇる・ふぇずた)はパートナーの フクシアン・マイラニックス(ふくしあん・まいらにっくす)や友人の五百蔵 東雲(いよろい・しののめ)神凪 深月(かんなぎ・みづき)達と共に夏の海に繰り出していた。
「遊ぶのは良いが、アイツ泳いだ事ねぇって言うからな……あ、胃痛が…」
 思わず胃を押さえたのは、サズウェルを心配してついて来たフクシアンだ。
 それでも、海に入る素振りのないパートナーに、やがてホッと息を付き。
「大丈夫そうだな。なら、泳ぎがてら魚介類でも採ってくるか」
 呟き、場を後にしたのだった。
「おぉ、サズウェルは泳がないのか?」
「ん〜泳いだ事、ないからねぇ……って、何で抱きつくの?!」
 代わってやってきたのは、深月だった。
 黒い水着をセクスィに身にまとった深月は、「カワイイのぅ」と言いつつハグしてきたのだ。
 とはいえ、健全な男子なら顔を真っ赤にしてしまうだろうに、サズウェルの反応はイマイチ薄い。
 ついでに深月にも異性という意識がないので、さながらじゃれ合いといった風だが。
「んん、かわゆいかわゆい」
 最後に頭をするっと撫でられ、深月は別の得物もとい愛でる対象をハグしに行ったのである。
「で、キミは何をしてるの?」
「……蟹と格闘中……です」
 一つ溜め息をもらしたサズウェルが尋ねたのは、先ほどから何やら座り込んでいた、ワンピースの水着を着たリタリエイター・アルヴァス(りたりえいたー・あるばす)だった。
「楽しい?」
「……割と」
 格闘というか、指先でおちょくっているらしい。
 そんな二人の横で、元気な声が響いた。
「来たよ、海!」
「昨日は嵐みたいでしたが、何とか晴れましたね」
「ん〜、嵐のおかげで空気が綺麗だねぇ」
 一つ大きく深呼吸した天野 木枯(あまの・こがらし)天野 稲穂(あまの・いなほ)は、カラリとした夏の空気を胸いっぱい吸い込んだ。
「おっ、今日はよろしく〜」
「うん、こっちこそ」
 サズウェル達と挨拶を交わした木枯、その背を稲穂の指がちょいとつついた。
「あれ? 木枯さん、あそこに何かありますよ?」
「あぁ〜、昨日の嵐で打ち上げられたんだねぇ」
 定番のヤシの実や色とりどりの貝、は良いとして。
「あ、ごみが落ちてます。ああ、こっちにも」
 千切れた木々の他、観光客の残したらしいゴミ、家の破片っぽいもの等などなど。
 捨て置けず、ビニール袋片手にゴミを拾い始める稲穂に、木枯は苦笑をもらし。
「……みんな、ごめんけど先にバーベキューの用意をしてもらえるかな、すぐに戻るから」
「こちらは任せてくれて良い」
「うん、ありがと」
 そう、準備している玖純 飛都(くすみ・ひさと)に告げると、稲穂の隣に並ぶのだった。

「飛都くん、私はサラダを準備してくるわね」
「やれやれ、元気な事だ」
 持ってきた飲み物と紙コップとを置いた飛都は、自分でも気付かぬままに微かに頬を緩めた。
「まぁそれが取り得ってね」
 肩口でボブカットの髪を揺らしながら、トマトマリネとグリーンサラダの用意をしているオデット・オディール(おでっと・おでぃーる)を見つめる飛都にフランソワ・ショパン(ふらんそわ・しょぱん)は小さく苦笑した。
「成る程、ああいった一生懸命さは好ましいものだ」
「……あれよね、無自覚なんでしょうけど、飛都も大概よね」
 はぁっとワザとらしく溜め息を付いたフランソワに、飛都は首を捻った。
 木枯が用意してくれた野菜や、フクシアンが文字通り海で採って来た新鮮な魚介類。
 切ったり洗ったり、下ごしらえは思ったより早く終わってしまい、手持ち無沙汰になった飛都はちょっと考えてしまう。
「こういう時って、何をするものなんだろう?」
 こんな風に遊んだ経験があまりない飛都である。
 たくさんの知識も鋭い観察眼も考察力も、まるで役に立たなくて少しだけ困ってしまう。
 何とは無しに空を見上げると、嵐が過ぎた後のせいだろう、何時もより星が綺麗に見えた。
「そういえば……」
 思い出したのは、どこかで聞いた伝承だった。
 人と人との繋がりが、哀しい結果を生んだ物語。
 人と繋がる事、誰かを想う事、それは時に悲しい出来事を引き起こす。
 けれども。
 飛都の耳に届く、周囲の皆のそれぞれの、様々な声。
「バーベキューと言えばだよね♪」
「確かにそうだけど兄さん、流石に持ってき過ぎじゃないかしら?」
「盛大に肉を食い、花火で締める。これぞ夏の風物詩だぞ」
「アル君楽しそうだね」
「ほらな、アルクラントさんもこう言ってるし」
「フルーツも持ってきたぞ」
「サっちゃん、ナイス! オディほらほら楽しみだよねぇ」
「私の作ったサラダも是非食べて下さいね!」
 知っているそれらは、何故か心地よい。
 まるで、遠い日の哀しみを慰撫するように。
 聞こえる声が一層賑やかになった。
「飛都くん、そろそろ始めましょうって♪」
 キラキラ、キラキラと輝く場所から呼ばれ。
 飲み物を用意しつつ向かう飛都の口元には、穏やかな笑みが浮かんでいた。


「バーベキューと言えばやっぱりだよね♪」
 と主張してマンガ肉や恐竜ステーキを持ち込んだ瀬乃 和深(せの・かずみ)は、わくわくしながら待っていた。
「兄さん、ただ待っているだけでは焼けませんよ」
「うん、でも俺は食べる専門だから♪」
 和深の妹である瀬乃 月琥(せの・つきこ)は、満面の笑顔で言い切る兄に一つ溜め息をつくと、ドドンと存在感を放つ兄持参の肉へと手を伸ばすのだった。
「さあ、みんなの持ち寄った食材、どんどん焼くぞ」
「おお…アル君が張り切ってる…こういうイベント的なものだと凄い頑張り様ね」
 もう一人、気合の入ったアルクラント・ジェニアス(あるくらんと・じぇにあす)シルフィア・レーン(しるふぃあ・れーん)は感心する。
 言葉の通り、肉やら野菜やらを手際良く焼いていくアルクラント。
「ほい、熱いから気ぃつけてな」
 同じような手際で焼けた肉やホタテを配って行くのは、深月のパートナー狼木 聖(ろうぎ・せい)だ。
 達人は達人を知る、或いは苦労人は苦労人を知る。
 アルクラントと聖は視線を交わし合うと、互いの健闘を祈り合い戦場に臨んだ。
「あ、それはまだ焼けてない。こっちは焼けてるからどうぞ」
「……ばぁべきゅう」
 東雲のパートナーである上杉 三郎景虎(うえすぎ・さぶろうかげとら)は、アルクラントから渡されたぶ厚い肉をじっと見つめた。
 英霊……昔の時代の者でナラカから出て間もない三郎景虎である、現代文化や横文字には弱い。
 故に、これがばぁべきゅうなるものか、と思ったわけだが。
「えっとね、バーベキューっていうのは、こういう風に直火で肉や野菜、魚貝類などを焼く料理 、もしくはその調理法や行為を指すの」
 気付いたリキュカリア・ルノ(りきゅかりあ・るの)が一応、と訂正したので、正しい知識が得られたようだ。
 そんなやり取りに気付いたのだろう、アルクラントが苦笑まじりに促した……焼く手は些かも鈍らないまま。
「ほら、熱いうちが上手いぞ」
 三郎景虎は基本、東雲以外を信じていない。
 それでも、和深達は東雲の友人であり……ならば、毒など疑う必要はなかろう。
「……美味い」
「それは良かった、たくさん食べてくれ……あぁ、肉ばっかり食べてないで野菜も食べなきゃダメだよ」
「分かってます。私に嫌いな食べ物はありませんから」
 後半部を向けられた稲穂は答えてから、「あ」と声をもらした。
「木枯さんはアルコール類と辛いものが苦手です。残したりはしませんけど」
「あぁ私もビールはダメだね……そっちの御仁は? 酒もどうだい?」
「いただこう」
「サブちゃん、くれぐれも呑み過ぎないようにね」
 釘を刺すリキュカリアに頷き、三郎景虎は久方ぶりの酒を口にした。
 勿論、視界には常に東雲を入れ、その動向を冷静に把握はしながら。
「少し落ち着いたから、瀬乃もちゃんと食べぇ。おっと、好き嫌いしてると大きくなれへんでー」
「一言余計だよ!」
 すまんすまん、と笑いながら月琥の皿に肉と野菜を乗せてやった聖は。
「お母さん肉追加じゃ〜」
「誰がお母さんやねん!!」
 深月に突っ込みながら、肉をたくさんよそって上げるのだった。
 ちなみにその深月、ご飯を炊いて希望者に配っていたりする、飯ごう炊飯!
「バーベキューで肉だけでお腹いっぱいにするのもいいが、やはりご飯は日本人の心なのじゃ」
「……美味しい」
 ポツリ呟くリタリエイターもどこか嬉しそうである。
「あ、今更だけど、この水着どうかな。ちょっと張り切って選んでみたんだけど…」
 と、焼きが一段落したのを見て取り、ふと問うたシルフィアに、アルクラントは「かわいいよ」と素直に返した。
「え、かわいい? ふふ、ありがと」
 率直な称賛に、満足げな微笑みが浮かんだ。
「ホンに可愛いのぅ」
「え?、きゃっ……」
 すかさず深月にハグされ、少し照れてしまうが。
 可愛いと言われ嬉しくない筈がなく……それに。
 周囲を見回し、美味しそうな楽しそうな顔達に出会い、シルフィアの笑みは更に深まった。
「私も海で泳いで疲れたけど、皆でこうやってご飯を食べるのって楽しいね。今日は私も食べるわよー」
「まぁ、ほどほどに……後で体重計に乗って後悔しない程度にな」
「え、体重? 私食べても変わらないのよね」
 しれっと言うパートナーのお椀、真っ白いご飯の上に、アルクラントは笑って、焼けたばかりの肉を乗せてやった。

「食べ終わったら、少し時間くれるかな?」
 サズウェルが言ったのは、皆のお腹が十分に膨れた頃だった。
 自分の持ってきた新鮮なフルーツで、皆が口の中をサッパリさせているのを、見計らって。
 そのサズウェルの手には、蝋燭のくっ付いた笹舟が在った。
「随分たくさん作ったのね、大変だったでしょ?」
「いや。昼間、何かごそごそ作ってたのは俺も知ってる。だが、アイツがたまには一人でやると言いだしたんだ、俺は手伝わねぇよ」
 フクシアンの言葉に、フランソワは「あら」とちょっと目を細めた。
 やればできる自慢の弟……サズウェルを見つめるフクシアンの眼差しは、誇らしげだったからだ。
「サズウェルさんが何をするのか分からないけど、楽しそうだ行こうぜ……お?」
 後を追おうとした和深だったが、ツンと服の裾を引かれ、後ろを見ると。
 焼けた肉の大皿を持って、月琥がにっっっこりと笑顔を浮かべていた。
「……残ったわね」
「うん、俺だけじゃなく皆、色々と持ってきてくれたからな」
「責任をもって兄さんが食べてください」
「え?、あの月琥……月琥サン? さすがに俺も、もうそんなには食べられないかな、って」
「責任をもって兄さんが食べてください」
「待っ……むぎゅっ?!」
 月琥は言って、和深の口にステーキ肉を突っ込むのであった。
「この海の言い伝え、聞いたんだ……そうしたら、この海が天の川、二人が織姫と彦星みたいで、ならこの光で道を照らせば迷わず行けるんじゃないかなって」
 件の二人は昨夜、海に還ったようだと地元の漁師さんだかが話していた。
 だけど、否、だからこそ、天に行く道を照らして導いて上げたい、と。
「その二人の供養も兼ねて皆に喜んで貰えるようにね!」
「きっと……その二人も喜ぶはずだ」
 にっこりと笑むサズウェルに、飛都は頬を緩めた。
 そうしてふと思う。
 確かに自分は昔よりも口数が多くなったと。
 それは少し気恥ずかしいようなくすぐったいような、不思議な心地で……でも、決して悪くは無かった。
 夜の海に炎を灯した笹舟が送りだされるのを見ながら、飛都は思った。
 ゆらゆらしながら、不思議と彼方……水平線へと流されていく赤い光。
 フクシアンがある程度海の道に沿うように【サイコキネシス】で誘導しているのだと、何人が気付いたかどうか。
 ただ、見つめる全員に分かるのは、その光景がひどく幻想的でロマンチックだという事。
 そして、彼方に消えていく光は確かに、標のようであるという事だった。

「さて、イカしたサプライズも終わったって事で、もう一つのメインイベントだな」
 ニッと口の端を釣り上げるアルクラント。
「あれ? 誰が花火をもって……」
「用意しておきました」
 ニッコリと打ち上げ花火やら線香花火やらをズラリ、出した稲穂に、顔を輝かせる木枯。
「但し、花火のゴミもちゃんと持ち帰りましょうね」
 念のためと釘を指してから、稲穂は皆に花火を配るのであった。
「遂に……来たっ!」
 その中で、東雲はカッと目を見開いた。
「小さい頃は殆ど入院していて外の遊びを知らなかった俺に、従兄弟が教えてくれた『打ち上げ花火二刀流』を試す時がきた……!」
 稲穂から渡された打ち上げ花火。
 東雲はその打ち上げ花火を二つ両手に持った、歓喜に僅かに震える手で。
「待って待ってストップストップ!!!」
 慌ててスッ飛んで来たのはリキュカリアだった。
「あのね、東雲は初心者でしょ? そんな危ない事はダメだよ!」
「え? 駄目? でもあいつはやってたって……本当は駄目?」
 ダメだしされて「むぅ」と頬を膨らませる東雲。
 それでも何とか思いとどまってくれたらしい東雲にホッと胸を撫で下ろし、リキュカリアは二つの打ち上げ花火を取り上げ、代わりに普通の花火を手渡した。
「はい、これで遊んでね」
「シノこっち、この先っぽに日を点けるんだよ」
「うん……うわっ、パチパチするよ!」
「手、離しちゃダメだからな」
 最初は不満げだった東雲も、和深に促され初めての花火を目にすると、途端表情を明るくさせた。
「東雲はこれで大丈夫かな。……あ、サブちゃん、シロの監視お願いね!」
 放置しておくと厄介っぽい気がするンガイ・ウッド(んがい・うっど)を三郎景虎に任せ、
「ボクも花火を楽しもう、っと。あ、ねぇボクにも一本、ちょうだい♪」
 リキュカリアは呟くと、月琥へと手を振った。
「……物の怪の監視はまぁいいのだがな。まぁ……術師も、たまには気を抜く必要があるだろう。本当に腑に落ちないが、あの化け猫の警戒と花火の監督はしてやる」
 東雲が怪我をしてしまったらいけないからな、と呟き、三郎景虎は腕を組んで周囲へと視線を走らせるのであった。
「ふむ、我がエージェントの願いをかなえるべく、我が打ち上げ花火二刀流をしてやろうではないか!」
 三郎景虎の監視の目もあり暫く大人しくしていたンガイだったが、やがて飽きた。
 ていうか、東雲の代わりに、その願いを叶えてやろうではないか、と唐突に思い立った。
 本来なら我がエージェントに願いを果たさせてやりたいところだが、ご主人様とかネガティブ侍の眼が怖いとかでは断じて違うのである……本当ですじょ?
 名にはともあれ、やるとなれば善は急げである。
「さて火をつけて、と」
 器用に二つの打ち上げ花火を手に、火を点けるンガイ。
 ちょっと花火を下に向けて火を……うんそう、ちょっと花火を下に向けて。
「……お? おおおお? 身体が浮……にゃああぁぁ!?」
 シュ……ヒュルるるるるるる〜。
 ふわっ、浮いたンガイの小さな身体は次の瞬間、ものすっごい勢いで天高く上がって行った、キラーン
「あれ、今、何か……」
「うん、多分気のせいだよ」
「……事もなし」
 小首を傾げた月琥にリキュカリアはイイ笑顔を向け、三郎景虎はンガイの飛んで行った方向を仰いでから、何事も無かったように東雲へと視線を戻したのだった。
「よし、じゃあ連発いくぞ!」
「少し下がってた方がえぇかもしれへん」
 浜辺にズラリと並べた花火に、片端から点火していくアルクラントと聖。
「「「お〜っ」」」「たまや〜」「かぎや〜」「……玉だから、か?」「あのね三郎さん、あれは掛け声なんだよ」「「「すごいキレイ〜」」」
 赤や黄色や緑、地上に夜空に咲いた、色とりどりの光の華。
 見上げる顔のどれもが輝いていた。
「こんな楽しい日々が、これからも続きますように」
 その様子を見つめながら、ふと月琥は胸中で願った。
 誰もが笑っている、楽しそうに皆で遊んで……それが何だか胸が痛くなるほど、幸せで。
「……ん」
 と、和深が見透かしたかのように、月琥の頭を撫でた。
「突然、どうしたの?」
「ん、いや別に……うん、何となく」
 穏やかに微笑まれた月琥は、照れた顔を見られないようにちょっとだけ俯き、誤魔化すように和深の膨れたお腹にパンチしたのだった。
「ねぇフラン、それなぁに? 地味だけど……それも花火なの?」
「あら、線香花火は初めて?」
 にっこり笑うと、フランソワはオデットが手にした花火に火をつけた。
 ジジ…と紙縒りが燃える。
「線香花火には、4つの花が咲くのよ」
「花?」
「ふふ、見てて。まずは… 牡丹」
 紙縒りの先で丸くなった熱が、かすかに震え。
「次が、松葉」
 やがて、火の糸が踊るように輝き、無数に伸びては消える。
 いつの間にか、フランソワの元には何人かが集まっていた。
「そして、柳」
 火の糸が彗星のようにすぅっと尾を引く。
 小さな星がいくつも生まれては夜闇に溶ける様子に、オデットは目を奪われた。
「最後に―― ちり菊」
 その囁きに応えたのか、はらはらと花びらのように火が散り……ぽとり、と落ちた。
「最後の線香花火は寂しいけれど、皆で素敵な思い出をしっかり作って、帰らないとね。これも大切な素敵八卦(日記)の1ページだ」
 何となくしんみりした雰囲気をそう、振り払ったのはアルクラントだった。
「皆と出会えて、一緒に遊んで、たくさん思い出作って…これからも、たくさんステキな出来事に出会えるといいね」
 花火が終わっても、今日が終わっても、また楽しい事は出来る……シルフィアの言葉に、オデットが月琥が深月達は、それぞれ嬉しそうに頷いたのだった。