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【ぷりかる】夜消えた世界

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【ぷりかる】夜消えた世界

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「最上階も近いですな」
「そうねー。色々とどうなるかと思ったけど、順調ね」

 十文字 宵一(じゅうもんじ・よいいち)の言葉に、アーシアは頷く。

「むー……」

 護衛の一環とはいえアーシアやシェヘラザードと仲良くしている宵一を見て、ヨルディア・スカーレット(よるでぃあ・すかーれっと)の機嫌は目に見えて悪い。
 特に、シェヘラザードの宵一への視線がヨルディアには物凄く気になっていた。
 アーシアはともかく、シェヘラザードが宵一へと向ける値踏みするような視線が、ヨルディアの乙女なセンサーにビンビンに引っかかるのだ。

「お姉さま、どうしたでふ?」
「ううん、気のせいだと思います……さあ、敵ですわ」

 リイム・クローバー(りいむ・くろーばー)にそう答えると、ヨルディアは光のゴーレムへと向き直る。
 MURAMASA【一天六地】」と「妖刀金色夜叉」の二刀流。
 闇黒属性を持った二刀は、光のゴーレムの弱点である。

「僕はただ可愛いだけの抱き枕ではないんでふよ」
「やっちゃいなさい、リイム!」

 一方のリイムもアーシアやシェヘラザード達に良い所を見せようと気合充分だ。

「しっかし、こんなハタ迷惑な塔。そもそも一体誰が建てたやら」
「天才とロリコンの合成物かな」

 エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)にサラリと答えるアーシア。

「誰がロリコンだ! ……え、俺の事じゃない? こりゃ失礼」
「……ふぅん?」
「何を納得してるのよ、あたしにも教えなさいよ」

 視線をそらすエヴァルトと、その先に回りこむアーシア。
 ロリコンじゃないと公言するエヴァルトにとって、あまり触れられたくない話題ではある。

「む。後ろからも来たわよエヴァルト」
「光のゴーレムか……」

 シェヘラザードに言われ、振り向いて。
 ここまでに分かった事を反芻しながら、エヴァルトは考える。
 ゴーレムは、光で構成されていて、塔の外に出たら崩壊する。

「つまりだ、塔内の光から遮断すればいいわけか?」
「理論的にはそうなるかなあ」
「影か……闇、ですか」

 エヴァルトとアーシアの言葉に、リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)は頷く。

「かなり眩しいようだけど盾を掲げれば多少の影は出来るはず。ゴーレムの弱体化は出来ずとも、みんなの視界を確保したいところだけど……」
「夜は決して闇にあらず、陽はなくとも星はあり。月と陽は共にあれども星は陽と諸とも見ること能わず、夜は星を見、また星に見られている」

 リカインの言葉に続けるように、ケセラン・パサラン(けせらん・ぱさらん)が詩的な言葉を呟く。
 言いながらケサランが取り出したものは、闇の輝石。
 ここに来るまでの間で、有効だと確認された戦術の一つだ。

「エヴァルトも皆も一度私の真後ろに! 普段は中々使えないけど……聞かせてあげるわ、私の本気の咆哮……!」

 響き渡る咆哮に、光のゴーレムが消滅し。新しい光のゴーレムが現れる。

「ヨルディア、エヴァルト! 皆も……この階を抜ければ最上階よ! あたし達が悪の野望を砕くまで、あと少し……頑張りましょう!」

 シェヘラザードの言葉に、全員が奮い立つ。
 そう、残すは最上階。

 そこに、最終制御装置があるのだから。