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リアクション
1章 雪原の戦い
「わー! 雪ですー!」
「あんまりはしゃいでいるとはぐれるよ」
雪に覆われた平原を歩くのは3人。
長原 淳二(ながはら・じゅんじ)とミーナ・ナナティア(みーな・ななてぃあ)、そしてこのチームに参加した雅羅・サンダース三世(まさら・さんだーすざさーど)である。
「雅羅さん、よろしくね!」
「よろしく。それにしても雪合戦なんてめずらしいこと考えたね」
「えぇ、海がいきなりやろうと言い出したのよ」
「なるほど。……って、おいミーナ先行くなって」
「他のみなさんはどこでしょー!」
早く雪合戦がしたいのが雪玉を抱えながらミーナは雪原を走り抜けていた。
「元気だなぁ。まぁ、せっかくのイベントだし、俺も楽しむか」
そう言うと淳二はミーナを追いかけて行った。
「あの二人、元気ね……ついていけるかしら?」
二人の後ろ姿を見て雅羅は苦笑いをしていた。
「敵はどこに隠れているのネ?」
「今のところ、周りには見当たらないわね」
索敵をしながら雪道を歩くのはロレンツォ・バルトーリ(ろれんつぉ・ばるとーり)とそのパートナーのアリアンナ・コッソット(ありあんな・こっそっと) 。そして湯浅 忍(ゆあさ・しのぶ)の3人。
「早く戦いがしたいぜ! はやくででこーい!」
「戦いなんて物騒アルネ」
「そうか? 戦いなんて燃えるだけじゃねぇか! ……ところでロレンツォはなにを抱えてるんだ?」
忍はロレンツォの抱えているものを指差して尋ねた。
「これアルネ? 山スキーネ!」
「なんでそんなものを抱えてるんだよ……。まぁ、いいや。ところでアリアンナはたまーに火術を使っているみたいだけど、なにしてんだ?」
「これかしら? 撤退ルートに氷の場所を仕替えておいたら後で相手の移動の妨害になるかと思ってね」
「なるほど、さすが指揮官!」
「指揮官は私ネ!」
「二人とも仲が良くて嫉妬しちゃうわ」
そう言うとアリアンナはトラップを仕掛け終わったのか、今度は先行して進み始めた。
「アリアンナ、どうしたアルネ?」
「ちょっと先に行って偵察してくるわ」
「気を付けるのネ!」
直ぐにアリアンナの姿は見えなくなった。
「頼りになるな、アイツ。俺たちも頑張らないとな、指揮官!」
「そうネ。じゃあ進むアルネ」
ロレンツォのチームは少しずつ森の中を進撃していった。
「たくさん雪玉出来きましたー」
「柚、お疲れー。海の奴、どこにいったんだ?」
「海くんなら、この周りで防衛をするのに最適な場所をさがしに行ったよ」
「なるほど、敵に見つからないといいけどね」
森の中で雪玉を作り、防衛主体で動いているのは杜守 柚(ともり・ゆず)と杜守 三月(ともり・みつき)、そして高円寺 海(こうえんじ・かい)の3人チーム。
「今戻った。少し北の方に木々に囲まれて、なおかつ見晴しもそれなりにいい場所があったぞ」
「海、お手柄―! じゃあそっちに移動しよっか」
「うん、海くんありがとうございます」
「気にするな、指揮官がんばれよ」
「はっ、はい! 頑張ります……!」
「柚―! 照れてないで早くいくよー!」
海の声援に少し頬を赤らめた柚をからかいながら三月は防衛地点になる場所に向かって行った。
柚は海の3歩後ろを歩く形でついて行っていたようである。
「ロレンツォ、敵、見つけたわよ」
「山スキーの出番アルネ!」
「やられるだけだろ」
ロレンツォの発言にあきれた顔をする忍だが、敵が見つかったということで本人も少し動揺しているようだ。
「まぁ、冗談はこの辺にするアルネ。湯浅さんは正面から突撃アルネ。アリアンナと私は背後から回って奇襲ネ!」
「おっ、なんか指揮官っぽいな。んじゃいってくるぜ!」
そう言い残し、忍は正面から突撃するべく走って行った。
「元気なものね、じゃあ私達も行こうかしら」
「そうネ。じゃあ、山スキーを……」
「ロレンツォ、それはしまいなさい」
「わかったネ……」
二人はそれぞれ奇襲するべく見つけた敵の背後に回るように行動を開始した。
「……っ! 三月ちゃん、海くん、正面から誰か来ます!」
「敵かなー? 海、ちゃーんと柚のこと護ってあげてね!」
「わかった」
正面から来る敵の気配を察知し、臨戦態勢になる柚チーム。
「……きたっ!」
三月の目の前から現れたのは忍である。
「いざ尋常に!……って、あれ?」
「へへーん! 君が来るのは予想済みだよ!」
そういうと三月は忍の投げた雪玉を華麗に躱して、お返しとばかりに投げた雪玉をあてる。
「ちょ! 当たらないし、当たるし!」
「まだまだ行くよー! それそれー!」
そんな二人の戦闘を見ながら柚は頭を抱えた。
「柚、どうした?」
「えっと……あの人、一人みたいだけど、雪玉あんまりもっていないのが気になって……」
「一人でチーム作ったんじゃないか?」
「なら、もっと不思議なんです……やられているだけで逃げようとしない……まるで……」
柚はそう言いかけてはっとした顔になった。
「海くん、相手は一人じゃないです! これは囮です! 」
「あらぁ、よく気が付いたわねお嬢ちゃん!」
次の瞬間、背後からロレンツォとアリアンナが現れ奇襲攻撃を仕掛けていた。
「湯浅さん、よくやったアルネ! あとはひたすら逃げてほしいネ!」
「逃げるだな! 任せろ!」
その命令を聞くと忍はすばらしい回避力で一時戦線離脱をした。
「三月ちゃん、追わなくていいです! 今は海くんの援護をお願いします!」
「わかったよ!」
柚たちは必至に反撃に出ていたが、防衛していた所に奇襲をされ防衛がほぼ役に立たなくなっていた。
おまけに場所が森の中なのでうまく反撃ができないのである。
けれどそれはロレンツォ達が上手く攻撃できないのも同じである。さらに、柚がほんの少し早くロレンツォの作戦に気が付いたおかげで海を早く行動させることができ、被害は最小限に抑えられていた。
「さすが防衛ってわけね。ガードが堅いわ……」
「それでも、それなりの戦果はあげれたネ! 今こそ山スキーの……」
「たのしかったわお嬢ちゃん、また後でお相手よろしくね?」
ロレンツォ達はここが引き際だと決断したのだろう、雪玉が全部切れるとにすぐさま撤退を始めた。
「柚、相手が逃げていくよ!? どうするの?」
「……この先は見晴しのいい平原です。こちらの雪玉もまだ残っていますし……追いましょう!」
「りょーかい!」
「わかった」
ロレンツォ達の後を追うように柚チームも行動を開始した。
「……おーい!」
「湯浅さん、見つけたネ」
「なら、このまま先に逃げましょう」
ロレンツォ達は森から平原に向かって一直線に逃げていた。
「ん? アリアンナ、そういえばこの先に……」
「そうよ、さっき私が仕掛けたトラップがあるわ。お嬢ちゃんたちの足止めができると思うわ」
そう発言したアリアンナの目の前に氷の上で転んでいる少女を見つけた。
「痛いですー! ここ滑って歩きにくいです!」
「そうだね。どうしてここだけ氷になっているんだろう?……」
「「「あ」」」
氷の上で苦戦していたのは淳二チームであった。
「淳二、敵ですよー!」
「みたいだね。じゃあ、遠慮なく……」
「うぉぉぉぉぉおお! 逃げるぜ!」
「こんなとこに敵、いたアルカ!?」
思わぬエンカウントにロレンツォチームは総崩れになってしまった。
ただし、忍はこんな状況でも被弾ゼロに抑えたらしい。
「ロレンツォ、あわてないのよ! 今は逃げることを考えて……って、もう一人逃げ切ったみたいね……」
「わかったアルネ!」
すると背後から追いついた柚チームにロレンツォ達ははさまれてしまった。
「淳二―! また人が増えたです!」
「なんかここにみんな集まっちゃったみたいだね。……ん?」
ミーナの後ろで雅羅がなぜか怖い笑顔で笑ってた。
「雅羅さん、どうしたの?」
「いや、向こうのチームに海がいるからちょっとね……」
すると雅羅は淳二たちに恐怖の提案をしてきた。
「淳二、ミーナ、提案なんだけどせっかく雪合戦しに参加してくれたのよね? なら雪玉をいっぱい持っている海がいるチームを狙いましょうか。そっちのほうが楽しめると思うわ」
「なっ!」
「私は賛成―!」
「淳二も、いいわね?」
「うっ、うん……」
そういうと淳二チームは標的を柚のチームに変更した。
柚はその状況を見て、不安そうな顔をしていた
「ねぇ、海くん……雅羅さんに何かしたの?」
「あんまり心当たりがないんだが……」
すると向こうから雅羅の叫びが聞こえてくる。
「アンタがルールとか決めるのを全部私に任せたせいでどれだけ大変だったと思っているのよ!」
三月はあきれた顔で
「なるほど……海、もっと手伝ってあげなよ……」
「今度はそうする……」
と海に説教していた。
「とっ、とにかく狙われたのが私達なので応戦しましょう! まだ雪玉はたくさんあるので大丈夫です!」
「そうだね! 海! ちゃんと働きなさいよ!」
そういって柚チームは雪玉を構えた。
「なんか本気ださないと雅羅さんに怒られそう……悪いけど、いくよ!」
「雪合戦ですー!」
ミーナの一投により戦闘は始まった。
「いたアルヨ!」
「おっしゃぁ! 俺の出番だな!」
即興で雪玉をこしらえたロレンツォ達を交えて、戦闘は大乱戦になったのである。
これにて第一試合目終了。
最後の乱戦でみんな満身創痍であった。