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リアクション
2章 空を駆る者vs大地を制す者
1戦目が終了後、すぐさま2戦目が開始されていた。
「ええと……相手はどこにいるんだろうね?」
「慎重に探すのじゃぞ」
空から索敵を開始しているのは、ゴットリープ・フリンガー(ごっとりーぷ・ふりんがー)と枝島 幻舟(えだしま・げんしゅう)の2名。
「んーっと……あっ、いた」
フリンガーが振り返った先には森の中で雪玉をこしらえている松井 麗夢(まつい・れむ)の姿が見えた。
麗夢はフリンガー達の姿に気が付くと両手を振っていた。
「あっちは大丈夫そうじゃの」
「みたいだね。僕達もがんばらないと」
そういって二人は空を駆けていくのであった。
空を駆る者、迎撃準備完了。
「まだ敵は見つからないのか」
森の中を索敵するケーニッヒ・ファウスト(けーにっひ・ふぁうすと)はそうぼやいた。
「フリンガー達も発見した気配はないね。こっちも反応なし」
同じくファウストと共に索敵をするのは野部 美悠(のべ・みゆう)。
そしてその二人の近くを歩くのは八上 麻衣(やがみ・まい)が操る式神である。
「どうやら麻衣の式神を準備は大丈夫のようだな。進むぞ」
そういってファウスト隊も地上にて敵を迎撃する準備は整ったようだ。
「んーっ! それにしても一面真っ白ね」
「いつもの恰好じゃなくて本当に良かったと思うわ……」
「そうね……」
森の中で準備をしているのはセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)とセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)の2名。
「まぁ、今回は遊びに来ただけなんだし、楽しまないと!」
「遊びに来ただけ、ねぇ……」
「なんかさっきから空を飛んでるやつはいるし。あれは相手にしたくはないわね」
「そうね……それにしてもわざとばれるように飛んでいるみたいね」
「あれ、わざとなのかしら?」
「なんとなくよ。まぁ、警戒は怠らないようにしましょう」
「そうね。ところでセレアナはさっきからなにしているの?」
「防壁作りよ、こうやって雪で壁を作って氷術で凍らせているわ」
「ふーん……まっ、そんな簡単に見つからないわよ」
「……そういうわけにもいかないらしいわ」
そう呟くセレアナは殺気看破を用いて背後に気配を感知したようだ。
「あら、早いわね。ならさくっと楽しみましょうか」
「えぇ、そうしましょう」
「背後はもらった!」
掛け声と共に現れたのはファウストである。
「いらっしゃいませーよ?」
しかしその奇襲はセレン達にはばれていたようで難なく迎撃できたようだ。
「甘いわね」
「甘いのはアンタ達の方じゃん」
「なっ!?」
今度は側面から美悠が奇襲を仕掛けてきた。
「これで一勝一敗って所ね」
「美悠、よくやったぞ。周りに伏兵はいないな。いくぞ」
戦闘は、セレンとファウストがそれぞれ雪玉を食らいつつも互角の勝負をしていた。
ファウストは神速と軽身功で一時的に身体能力を引き上げ、セレンは持前の運動能力の良さで応戦をしている形であった。
「なかなかやるわね……どうしたのかしら、セレン?」
「ふふふ……面白いわね……」
「貴女楽しむのではなかったかしら?」
「まだ楽しんでいるわよ? まだ……一旦退却するわよ、はさまれてたら不利だわ」
そういうとセレン達はすぐさま退却をした。
ファウストたちは追いかけるが地の利と体力に差があったのかすぐさまセレン達を見失ってしまった。
「ここまでくればとりあえずは大丈夫かしら?」
「そうみたね」
雪原まで逃げてきたセレン達は休憩をしていた。
「……見つけたよっ!」
すると突然上空から声が聞こえたと思うと雪玉が降ってきたのである。
「しまっ……」
「油断したわね……」
全被弾とまではいかないものの、数発当たってしまった二人は空を見上げた。
「いくよ!」
「覚悟するのじゃぞ」
空から雪玉を降らせるのはフリンガーと幻舟の二名。
それぞれスキルで能力を上昇させているのか、命中回避はもちろん、移動速度が格段に上昇してセレン達は地上からの迎撃は困難を極めた。
「ええい! ちょこまかとめんどくさいわね!」
「なんだか目が回りそうだわ」
二人はなんとか被弾を最小限に抑えていたが、こちらからの攻撃はまったく通じなかった。
「空を制する者は戦いを制するのです! 勝利は僕達のものです!」
空から容赦なく降り注ぐ雪玉を回避しつつセレアナは考えを巡らせていた。
「……セレン、もしかして」
「奇遇ね。私もその考えに至ったわ」
「序盤、わざとばれるように空を飛んでいたのは本当だったわね」
「ええ……さっきの二人と今の二人、組んでいるわね」
「そうね。これは結構厄介な相手……」
そう言いかけたセレアナはセレンと表情を見て大きく溜息をついた。
「貴女、本気になったわね」
「ふふふ……っもう本気だすわ! この私を敵に回したことを後悔するといいわ!」
そういうとセレンは攻撃をやめ、回避に徹した。
「なるほど、わかったわ」
セレアナもセレンの動きに合わせて回避に専念するのであった。
「ねぇ、あの二人攻撃をやめたよ? これはチャンスかな」
「そうじゃな……」
「なら一気に攻めよう!」
そういうと更なる猛攻をフリンガー隊は開始するのであった。
「そろそろ相手も疲れてきたんじゃ……!?」
しばらく猛攻を続けたフリンガーは手元にもう雪玉が残っていないことに気が付いた。
「しまった! 僕は一時退却します!」
「殿は私が勤める! 早く退却するのじゃ!」
そういうと幻舟はその場に残りフリンガーは退却をした。
「……作戦通りね。じゃあそっちはよろしく、セレアナ」
「貴女もしっかりやるのよ」
そしてフリンガーの後を追うようにセレンは雪原を駆けた。
「いいわ! あんたが空を制するのなら私は大地を制してこの勝負勝ってみせるわ!」
「これが狙いでしたか……!」
幻舟はセレンの行動を見て妨害にでた。
「行かせないんじゃ!」
しかし、セレンを邪魔するように投げた雪玉はセレアナの雪玉によって相殺されていた。
「貴女の相手は私よ」
「むぅ……」
これよりセレン隊とフリンガー、ファウスト連合との全面戦争が開始された。
「はぁ……はぁ……」
「しぶといわね……!」
森の上空を駆けるのフリンガー、そして森の中を駆けるのはセレン。
「すばしっこいやつね!……!」
すると左右の木の陰から雪玉が数発飛んできた。
「まさか援軍? 最初の奴らかしら……」
敵は姿を見せないでまるでフリンガーから視線をそらさせるかのように攻撃をしてくる。
「怪しいわね……さっきのやつらならすぐに攻撃をしてきそうだし」
セレンは回避しつつフリンガーを見失わないように必死に追いかけていた。
「麻衣の式神でも振り切れないです……!」
「今あたしが向かっているわ。それまでなんとか耐えて!」
「その声は……美悠さん!」
美悠はテレパシーを用いて、援護に向かっているとフリンガー達に伝えた。
「なら、僕が追手を振り切れるか……勝負の分かれ目ですね」
そういうと全速力でフリンガーは補給地点へと向かった。
後方の空ではもはや幻舟が飛んでいる姿は見えなかった。
「セレアナ……あっちは決着がついたみたいね。こっちも頑張らないと!」
再び加速し左右から飛んでくる雪玉を物ともしないで突き進んでいく。
「麗夢……」
「フリンガー! 大丈夫だったの!」
補給地点に着いたフリンガーはもはや疲れ果てた顔をしていた。
「大丈夫じゃなかった……ごめん」
「えっ?」
そういうと背後の森からセレンが現れた。
「案内ご苦労さま。じゃあ決着をつけようかしら? 空と大地、どっちが強いか!」
「っ!? フリンガー、立って!」
そう言って満身創痍なフリンガーを無理矢理立たせて戦闘を開始する麗夢。
「ここで私達がなんとかしないとダメだよ!」
檄を飛ばすと麗夢は小型飛空艇に乗り込み、上空から迎撃を開始。
しかし、森の中もありさらにフリンガー達と同じ弱点、
「上空では雪玉を生産できない」
と、いう条件を背負ってしまい、雪玉は大地に飲まれていくばかりであった。
「当たらないよ……!」
「森の上空からはさすがにきついですね……」
「ごめん! 間に合いそうもないわ! あんたたちの仇はこっちで取るから安心しな!」
「美悠さん、それ僕達が死んじゃうみたいじゃないですか……」
そう言っている内にフリンガー達の雪玉はゼロになってしまった。
空を制する者と大地を駆ける者の戦いはこうしてセレンの勝利で幕を閉じたのである。
「あら、遅かったじゃない」
「ちょっと道中、やり残したことがあったから」
そういうとセレンは麻衣の操っていた式神の破片を渡した。
「これはなにかしら?」
「追いかけているとき、妨害にあったんだけどどうやら後ろで式神を操っている人がいたみたいね」
「用意周到ね。けど、式神を無力化したし、上空部隊も無力化したし、残るは……」
「えぇ、残るは……」
すると森の中からファウストと美悠が現れた。
「ダメ、麻衣はこっちまで追いつけないみたい。あたしらで決着つけるしかないね、これは」
「分かった。なら為すべき事は一つだな」
「さっきぶりね、覚悟はできたかしら?」
「貴様らこそ、やられる覚悟はできたのであろうな?」
ファウストとセレンはお互いを睨み付けた。
「いい殺気ね。いいわ」
「準備はいいな。いくぞ」
そういうと4名はそれぞれ戦闘態勢になった。
一瞬の静寂。
刹那、ファウストとセレンは突撃した。
「「この雪原を制するのは……」」
「私よ!」
「我だ!」
指揮官である双方の衝突により戦闘は開始された。
互いのパートナーは
「お互い、熱い主人を持ったわね」
「熱すぎてびっくりだよ……」
なんて冷静な声がしたが、戦闘こそは熾烈を極めた。
第2戦、これにて終了。
空と大地を制し、この雪原の覇者となったのはいったいどちらなのか。