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【4周年SP】初夏の川原パーティ

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【4周年SP】初夏の川原パーティ

リアクション

 緒方 樹(おがた・いつき)の目的は、これまでの経験を生かしたサバイバル技術で川魚を捕り、焼いて食べる。
 それだけだった。
 しかし、これが達成されるまでに、いろいろなことが起こった──。

 魚捕りは女性陣が受け持ち、調理は男性陣が担当することになった。
 罠を張って捕まえようとする樹とは対照的に、緋柱 透乃(ひばしら・とうの)は川に飛び込み素手で捕まえようとした。
 緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)は透乃とまったりしたくてついて来たのだが、その透乃が魚捕りに出たので手伝おうとすぐに後を追った。
 陽子の手には訃想の刃鎖がある。
「できるだけ大きいのを狙おう!」
 楽しげな透乃の声に陽子は頷き、水面に目をこらした。
 ……が、そうするまでもなく、巨大魚が群れを成して川を上ってくるのが見えた。
 透乃の目がきらめく。
 彼女が何をしたいのかすぐにわかった陽子が、群を指して誘う。
「透乃ちゃん、片っ端から捕まえましょうか」
「うん。大漁だよ!」
 競い合うように巨大魚の群に突進する二人を見送った樹は、ふつうの罠で捕まえられそうなサイズの魚を求めて、もう少し上流を目指した。
 訃想の刃鎖に絡め取られた巨大サバが岸に放り投げられたかと思うと、今度は訃焼の蛇気の怪力で掴まれた巨大カンパチが宙を舞った。
 地響きをたてて岸に積み上げられていく巨大魚を見ていた月美 芽美(つきみ・めいみ)はというと。
「大きくなくても、おいしそうな魚がいいかな……樹ちゃーん!」
 芽美は上流に行った樹を追いかけた。
 その背を名残惜しそうに見送る霧雨 泰宏(きりさめ・やすひろ)
 身につけているのは貝殻ビキニのみという非常にきわどい姿の芽美を、さらに邪気眼レフで盗み見ていたのだ。
 もっとも、残念に思ったのはそんな邪な思いだけからというわけではないが。
 泰宏は透乃と陽子が仕留めた巨大魚を引きずってきて、調理場の男達に呼びかけた。
「体を張って魚を捕まえてくる女の子達のために、腕を振るうとするか」
「泰ンとこは底抜けに元気だよな、ホント……」
 ベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)が泰宏にやや同情の目を向ける。
 泰宏は苦笑を返したが、透乃達と一緒にいることに不満はない。
 むしろ、彼女達の傍にいられるのは自分だけだと思っている。
「ま、俺もフレイが楽しんでるならそれでいいんだけど」
 と、言って恋人のフレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)を穏やかな目で見るベルク。
 フレンディスはベルクからの視線に気づかず、マスターと呼んで慕う彼のために魚釣りに挑もうとしていた。
 他の女性陣の開放的な姿とは異なり、人一倍恥ずかしがり屋のフレンディスは水着姿ではあるものの、上にはパーカーをはおり、下はロングパレオでしっかり露出を防いでいた。
 彼女は透乃達が瞬く間に巨大魚達を片づけたのを見ると、
「樹さんの様子を見に行きませんか?」
 と誘った。
 樹がいるところは男性陣のところとお互いの様子は見えるが、話し声は聞こえないくらいの位置だ。
 透乃達とやって来たフレンディスは、樹にどんな具合か尋ねた。
 膝よりやや上くらいまで水に浸かっている樹が、傍に来るようにとフレンディスを手招きする。
 川底の小石に足を取られないよう注意しながら樹の近くまで行くと、そこにはV字型にかけられた網があった。
「ここに魚を追い込み、真ん中の籠に入るようにするんだ。いっぱいになったら新しい籠と交換だ。芦原のポニーテイルが確か魚を誘導しに行ったが……いないようだな」
 芽美の姿が見えない。
「まあいいか。やってみるか?」
「はい、がんばります!」
 フレンディスは笑顔で頷くと、透乃達とさっそく川をさかのぼっていった。
 川に入り、危なっかしい足取りで魚を追い込もうと、腰を低くかがめて身構えるフレンディスに対し、透乃はやはり素手で捕まえたい様子だった。
 でもまあ、一度くらいは罠で捕ってみようかと、フレンディスと同じように構えた。
 ──と、フレンディスの視線がある一点で止まった。
「どうしたの?」
 何となく見られているような気がした透乃が尋ねる。
 すると、フレンディスは今度はサッと陽子に視線を移した。
 透乃と陽子は顔を見合わせて首を傾げる。
 最後にフレンディスは自身の胸元を見つめると、切ないため息をこぼしたのだった。
「私……人様より胸が控えめなのでしょうか?」
 どう答えていいのか迷い、沈黙してしまう透乃。
 代わりに答えたのは、陽子……ではなくレティシア・トワイニング(れてぃしあ・とわいにんぐ)
「ふむ? 常々思うが、我にはとうてい理解できぬな。胸など戦闘の邪魔なだけだ。フレンディスよ、お主の胸が貧相なことは別段気にするでない」
「うぅっ、やっぱり控えめなんですね……。それに、戦闘に胸が邪魔って本当ですか? 透乃さん方は胸が豊かでも充分お強いですよ。それにそれに、殿方……マスターも口にしないだけで、胸が大きいご婦人のほうを好むのかもしれませんし……」
「やれやれ。そんなに気になるなら本人に聞いてみればよかろう」
「そっ、そんなはしたないことできませんっ」
 真っ赤になって慌てるフレンディス。
 対してレティシアは、興味なさそうで冷めた表情でフレンディスを見ていた。
 すると、フレンディスの背後から伸びてきた手が、彼女の胸をむにゅっと掴んだ。
 驚きのあまりフレンディスの超感覚による金毛の犬耳と尻尾がピンと立つ。
「ななっ、何をなさるのでー!?」
 振り向くと、姿が見えなくなっていた芽美がいた。
「ハイドシーカーが失敗しちゃったから、直接測定に来たの」
 やさしげな微笑みは、しかし瞳の奥には妙な色っぽさがあった。
「そ、測定って……何の測定ですか?」
 芽美の手がフレンディスの胸の大きさを確かめるように動く。
「ちょ、ちょっとー!?」
「あら、見た目よりありそうね。どうやって隠してたの? ……う〜ん、ちょっと物足りないなぁ」
「も、物足りない……」
 芽美の独り言を、フレンディスは後ろ向きに受け取りうなだれた。
 彼女の背にあたる芽美の胸もそうとうに豊かだからだ。
 芽美の前に無言であるものが差し出された。
 ローションだ。
 こういうことには興味がないと思っていた透乃からの差し入れに、意外に思いながらも喜んで受け取る。
 ローションを手になじませるため、いったんフレンディスから離れる。
 フレンディスはすかさず逃げようとしたが、それは突然目の前に現れた幽霊に阻止された。
 どんなにかわいい外見をしていても、何の前触れもなく現れては驚くだろう。
 この見た目のかわいい幽霊は、陽子が呼んだレイスの『朧』だ。
「朧さん、人を驚かせてはいけませんよ」
 気のせいか、諌める陽子のセリフが棒読みっぽく聞こえる。
 朧は悪戯がバレた子供のような仕草をした。
 フレンディスはドキドキする胸を押さえる。
 と、脇腹にひんやりとした感触が……。
「めめめ芽美さん!?」
「パーカーが邪魔ね」
「……!」
 芽美にはおっているパーカーをはぎ取られそうになり、フレンディスは慌てて身ごろを合わせた。
 しかし、そんな抵抗はシルフィア・レーン(しるふぃあ・れーん)の参加により無になる。
 シルフィアは、何か良からぬことをたくらんでいるような笑みを浮かべた。
「フレちゃん、またそんな肌隠しちゃってー。照れることないじゃない。ベルクさんとも仲良くやってるんでしょー? 見せてあげなよ」
「み、見せて……!? そんなこと、できるわけ……それに、私とマスターは……」
「フレちゃんとベルクさんは……?」
「い、言えませぬ!」
「そっかー。それじゃ仕方ないねー……と見せかけてとりゃッ!」
 シルフィアはフレンディスの腕を跳ね上げると、素早く胸を鷲掴みにした。
「……けっこうある」
「そう思うわよね」
 同意したのは芽美だ。
 それからシルフィアの胸を見つめると、
「ふふっ、あなたも立派なものを持ってるのね」
 妖艶に笑うと、芽美はシルフィアの豊かな胸に手を伸ばす。
 何やら妖しい雰囲気になってきた二人に、フレンディスが必死に呼びかけた。
「お二人共、何をなさってるんですかー!? 私を挟んでそんなことなさならないでください! マスターが……いえ、皆さんが見ていますよ!」
「そんなの気にしちゃダメだよー。フレちゃんも、私や芽美くんほどじゃないけど、自信持てないなんて、そんなことないよ。だから、誘惑しちゃ……えないか」
 前後から二人に挟まれて胸を揉まれているフレンディスは、恥ずかしさで真っ赤になった顔を両手で覆ってぷるぷる震えていた。
 誰かを誘惑する余裕はなさそうだ。
 そんな三人の艶めかしい様を、エメリアーヌ・エメラルダ(えめりあーぬ・えめらるだ)が楽しそうに眺めている。
「乳のサイズねぇ。ああ、シルフィアは……アルクの好みなんじゃない? だって、あいつの持ってたデータ……私の本体に保存されてたやつとか見てると、まんまなんだもの。たぶん、私もあんたと同じくらいだと思うわよ」
「え、エメリー。それどういうこと?」
 シルフィアはフレンディスの胸を揉む手を止め、エメリアーヌを見て、それからアルクラント・ジェニアス(あるくらんと・じぇにあす)を見た。
 彼は、調理場の男性達と何やら話し込んでいる。
「そのデータ、今でもあるのかしら? 今度、アル君の部屋に掃除に行ったら探し出して処分しとかないとね!」
「へぇ、部屋に……」
 おもしろい話を聞いたというふうに、にんまりと笑うエメリアーヌ。
 余計なことを教えてしまったと後悔するが、もう遅い。
「男の部屋に入ってどうのこうのなんて、一年前とはずいぶん違うわねー」
「うぅっ……忘れて……!」
「なーんて、本当は知ってんのよ。あんたが最近アルクの部屋に入り浸ってるの」
「もう言わなくていいから!」
 照れて赤くなったシルフィアに、エメリーヌはくすくすと笑い、フレンディスも小さく微笑んだ。
「フレちゃんまで笑ったわね……。ベルクさんとのこと、洗いざらい話してもらうわよー!」
「ええっ!?」
 シルフィアに八つ当たり気味に詰め寄られ、フレンディスは逃げの体勢になる。
 しかし、エメリアーヌもシルフィアに味方したためあっさり掴まり、あれやこれやと問い詰められて再び真っ赤になるのだった。
 とても恥ずかしがり屋のフレンディスには、刺激が強すぎる質問の数々だったようだ。
 成り行きをぼんやり眺めていた透乃は、不意に陽子に目を向けると綺麗な微笑みを浮かべてそっと肩に触れた。
「みんなそれぞれ楽しんでるし、私達も……ね?」
 するすると水着の肩紐を下ろされそうになり、ハッとしてその手を止める陽子。
「こ、ここでですか……? 人の目もありますし、帰ってからにしませんか?」
 恥じらいながら少し身を引くが、透乃は手を止めなかった。
「ふぅん、見られなきゃいいの? それなら、こっち」
「え、ちょっと待ってください……!」
 陽子はぐいぐいと手を引っ張られ、川の深いところに連れて行かれる。
 水面が胸のあたりの高さになると透乃は歩みを止め、陽子の水着の上から胸に触れた。
「ここなら見られないね」
「そ、そういう問題では」
「陽子ちゃん、あんまりわがまま言うと、ひどくしちゃうよ。そうしたら、見えなくても何してるか知られちゃうかもね」
「そんな……!」
 それでも抵抗する陽子の手を払い、透乃は彼女の体に触れた。
 いけません、と陽子は嫌がる素振りを見せるが、本当は期待している。
 そのことを自覚してもいる。
 強引にされるのが好きだった。
「フレちゃんがいじられるのを見ながらするのも、たまにはいいよね」
 透乃の手が触れるたび、川の中だというのに、その箇所が熱を持っていき陽子を翻弄するのだった。

 ……というようなことがお天道様の下で繰り広げられていることに、それまでせっせと魚を捕まえていた樹はようやく気がついた。
「お前達は何をやっているんだ……?」
 呆れも含めて疑問を口にするが、みんな答えられる状況ではなかった。
 それどころか、樹の胸も背後から何者かにやわやわと揉まれた。
 振り向くと、エメリアーヌが「やわらかいわね〜」など言いながら酔ったような顔をしている。
「ベレーのところの緑髪か。何故貴様は揉んでいるんだ?」
「フレンディスもいい感じだったけど〜」
 妖しく微笑むエメリアーヌに小さくため息をつくと、樹はフレンディスに目を向けた。
 何か言おうとして、それどころではない様子に口をつぐんだ。
 ならば、こういったことに淡泊な様子だったレティシアは……。
「戦乙女も揉まれているが、我関せずだな」
 レティシアの胸は芽美の両手が覆っていたが、その視線はフレンディスのほうを向いていた。
「芦原の尻尾頭もパートナーと何やらやっているし」
 少し離れた川の中、透乃と陽子は艶めいた表情でとても妖しい。
 この状況の収拾をつけようとして諦めた樹は、捕れた魚の量を確認すると強引に漁の終わりを告げた。
「戻るぞ!」
 みんなの耳に届いていたかはわからない。


 巨大魚をぶつ切りにして煮込んでいる緒方 章(おがた・あきら)が、樹のほうに目をやる。
「女性陣は何だか楽しそうだね♪」
「あのさ親父、あの阿鼻叫喚見てみろよ。楽しいなんて状況じゃネェのわかんだろ?」
「ははは。樹ちゃんも揉まれているけど平気みたいだね。……夜の時とは違うか」
 独り言のようにぼそっと呟かれたセリフの後半は、息子である緒方 太壱(おがた・たいち)には聞こえなかった。
 太壱は見ているほうが赤面しそうな戯れ方をしている女性陣を、何とも言えない表情で眺めた。
「それにしても、そろいもそろってたゆん……ぺたんはネェのかよペタンは。唯一のペタンはベルクの彼女か?」
 どうなんだ、と太壱はベルクを見やる。
「他の女の胸のことは知らねぇが」
 と、前置きしてからベルクは言った。
「前にフレイの胸元を偶然見た時は、見た目よりはあるなと思った」
「確かめなかったの?」
「章さん、俺がどんだけ苦労してフレイとの関係を進めたか知ってるか?」
「あー……うん、そうだね。すごく大変そうだよね。でも、恋人として意識してもらえたなら、あっと一歩だよ。ウェルナートくんがどれだけ想っているかわかってもらうためにも、もっと積極的にスキンシップに励んだらどうかな?」
「もっと積極的にか……だが、下手に突っついて変に服従されても寂しいしな……」
 従者意識を持つ鈍感天然勘違い彼女を持つと、人一倍苦労するという見本がここにあった。
 章も太壱も苦笑するしかない。
 そんな三人の会話にあえて加わらず、巨大魚の魚肉をすり身にしていたアルクラントは、このままこの話題が流れてくれるといいと願っていた。
 この手の話はどうにも苦手だった。
 しかし、世の中そう甘くなかったようで。
「ジェニアスくんは? もう確かめたの?」
「た、確かめたって……。何か、今日の章はずい分テンション高くない?」
 アルクラントの何気ない問いに、章はこれ以上ないほどに緩んだ笑みを見せた。
「この人ほら、新婚さんだから」
「ああ、そうか」
 泰宏の耳打ちに、アルクラントは納得した。
「やっと名実ともに『夫婦』になれたからねぇ。最高に機嫌が良いんだよ〜。──で、どうなのジェニアスくん? まさか興味がないなんてことはないよね?」
 まるで酔っ払いに絡まれているようだと感じながらも、アルクラントは律儀に答えた。
「そんなことはないけど。ん……この間、みんなで温泉に行ったんだ。その時に……肝心のところは湯煙に隠れていたが……その、すごかった」
 その時のことを思い出したのか、アルクラントは無意識に作業の手を止め、口元を覆う。
「まさに理想というか、あれをいずれ自由にしていいとか……!」
 ちょっと過激なその発言に、彼らはつい、いけない想像をしてしまった。
 が、そこは既婚者だからか、章はアルクラントの微妙な言い回しに気がついた。
「いずれってことは、まだ何もしてないの?」
「あ、うん。まだ手出してない」
「そうなんだ……」
「ヘタレと言いたければ言うがいいさ……」
「僕は何も言ってないよ。人それぞれだしね。そういや霧雨くんとこもいろいろありそうだねぇ。ほら、クリスマスとか」
「去年のクリスマスか? 確かに芽美と二人で過ごしたが」
「でも、恋人じゃないんでしょ?」
「そうだなぁ。そう見られることもあるけど……」
 泰宏と芽美の関係は傍から見るとよくわからない。
 本人が言うように恋人同士に見られることもあるが、使用人のように見られることもある。
「芽美のことは好きだが、恐ろしいやつだとも思ってる」
「なるほど、攻略中か」
「待て、何でそうなる」
 章の中で、泰宏と芽美の関係が確定されそうになっていた。
 その章の目が不意に鋭く光り、太壱の手から目にも止まらぬ速さでスマホを奪い取った。
 そして、つつつっとアルクラントやベルク、泰宏のところへ移動する。
「油断大敵だよ太壱。さて……」
 章は彼らにも見えるようにスマホを持ち、待ち受け画面を見た。
 そこには、太壱の想い人の花嫁姿があった。
「へぇ、花嫁衣裳か……いったいどこで手に入れたんでしょうね?」
「合成か?」
「ウェルナートくん、どうやら合成ではなさそうだよ。笑顔もとっても素敵だし」
 どうしたのこれ、とアルクラントと泰宏の視線が太壱を刺す。
 太壱は章の手からスマホを取り返してヤケクソ気味に叫んだ。
「オメーらよぉ、俺よか好きなコと距離近いんだから、ぐずぐずしてねぇでヤることヤっちまえよ! どうせ了承は取れてんだろ? デキ婚でも何でもしやがりゃいいんだよ、ちくしょー!」
「まあまあ落ち着いて」
 なだめようとする章が余計癪に障り、太壱はぎろりと睨んだ。
 その時、樹の声が聞こえてきた。
「アキラ! 塩焼きの準備は整っているか!?」
「樹ちゃん、OKだよ〜」
 章は怒りの収まらない太壱を残し、樹のほうへ行ってしまった。
 困ったのは取り残された泰宏達三人で。
「章さん、俺達に全部押しつけて行ったな。あの魚を煮込んでる鍋とか、どうすんだ?」
「私達でやるしかないね」
 諦めたようにアルクラントが返すと、泰宏は励ますように肩を叩いた。
 まずは、太壱の機嫌を直すところから。
 こうして、彼らの魚尽くしパーティは本格的に始まったのだった。