空京

校長室

【ザナドゥ魔戦記】盛衰決着、戦記最後の1ページ

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【ザナドゥ魔戦記】盛衰決着、戦記最後の1ページ
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リアクション

 全てが終わって――。
 緋山 政敏は一人、人気のない静かな茂みの中にいた。
 何をするでもなく、ただぼんやりと……手頃な切り株の上に座って、空を見上げる。
 空は暗雲立ちこめたように暗いが、心はそうでもなかった。
 ……と。
「ここにいたんですか」
「あれ? どったの、美幸ちゃん」
 茂みをかき分けて彼のもとにやってきたのは、菜織のパートナーである有栖川 美幸(ありすがわ・みゆき)だった。
 彼女は、なぜか不機嫌そうな顔つきで、彼を近くまでやってくる。
「どったの? じゃないですよ。……あんなに、危ない場所に行って……それで……何の……その……」
「……?」
「だから……えっと…………帰ってきて、何の一言も、ないじゃない……ですか」
「えーと…………必要、だった?」
「必要なかったんですか……っ」
 今にも泣いてしまいそうな顔で詰め寄った美幸に、思わず政敏は姿勢はそのまま後ずさった。
 そのおかげで空いた隣のスペースに、彼女が座る。
「膝枕」
「え?」
「膝枕…………するって……約束したじゃないですか」
「え……でも……」
「早くっ!」
「は、はいっ!?」
 あまりの剣幕で言われたため、慌てて政敏はごろんと寝転び、彼女の膝の上に頭を乗せた。
(柔らかい……)
 思ったが、言ってしまっては殴られそうなので、やめておく。
 政敏が軽く頭の向きを変えてみると、頬を真っ赤にした美幸の顔が目の前にあった。彼女は、今にも泣きそうな表情で政敏を見つめている。
 美幸は、今回の戦いでついた彼の頬の傷跡を、指先でゆっくり触れた。
「…………」
「……良かった…………」
 雫が、政敏の頬にこぼれる。
「…………本当に………………」
 政敏は初めて、彼女の泣き顔を見たような気がした。
 いつも気丈で、怒ってる顔ばっかりしか見てなくて(たいていは政敏が怒らせるわけだが)、頑固で、意地っ張りで……。
 そんな彼女の涙と泣き顔は、とても脆いガラス細工のようだった。
「お帰り……なさい……」
「…………ただいま」
 政敏の手が美幸の頬に伸びる。
 まどろみのなかで――この柔らかなものだけは、離したくなかった。