空京

校長室

【ザナドゥ魔戦記】盛衰決着、戦記最後の1ページ

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【ザナドゥ魔戦記】盛衰決着、戦記最後の1ページ
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リアクション



●戦い終わって……

 ベルゼビュート城は地上5階と6階を封印され、そこにあったものを地下1階へ移した。それは、自ら咎人であることを示す意図でもあった。
 かつての地上6階には今は、主のいない玉座、その上にはバルバトスの“身体”を収めた壺が静かに置かれていた。
 
 通常、魔族は身体から魂が抜けると、急速に腐敗が進んでやがて塵となって消える。が、バルバトスは契約者によってトドメを刺された後も、身体が残り続けた。
 魔族に、火葬という習慣はない。というより、死んだ者をどうする、という決まり事のようなものはなかった。死後もなお残り続けるバルバトスの身体を、腐食させることなく像にしようとしたのは、アムドゥスキアスだった。
「……ボクは確かに、バルバトス様は死んでいいと思ったけど。でも、人間にバルバトス様を殺した、という意識を持ってほしくないと思ったから。
 ルシファー様も、まだ肉体は残っているんでしょ? だったら魂が見つかれば、ルシファー様もバルバトス様も戻って来る事は出来る。ということは、死んでいない。
 ……うん、結局は詭弁かも。あるいはボクが、ただ罪の意識から逃れたかっただけかもしれない」

 現にアムドゥスキアスは、バルバトスをそのようにしたこと――像に変えた上で無数の欠片に変え、壺に収めた。さながら骨壷である――をロノウェやナベリウスに伝えず、ただパイモンにだけ伝えた。パイモンも黙ってそれを聞き入れ、今の場所にバルバトスを安置した。
 公式には、バルバトスは“死んだ”。『国の礎であった四魔将を喪った以上、戦いを続けることは出来ない。ザナドゥは降伏し、以後は諸国の意向に従う』。
 パイモンから直々に宣言が出されると、魔族は改めて、この戦争が終わったことを実感するのであった。

 もはや誰も立ち入れなくなった場所に、かつてルシファーが座っていた椅子と、その椅子を墓標とするようにして眠るバルバトスだけがあった――。


 ベルゼビュート城のある都市、魔都リュシファル。ここでシャンバラとカナン、ザナドゥの間で会談が持たれる。
 三国の間でいくつかの協定が取り決められ、それは『リュシファル宣言』として採択された。
 内容の骨子は以下である。


 シャンバラ及びカナンは、ザナドゥが戦争を終結する意思を選択するのであれば、これを認める。
 シャンバラ及びカナンは、ザナドゥが今後再び戦争を起こし、世界を混乱に陥れる確信に至った時のみ、ザナドゥの滅亡という措置を講じる。これ以外においては国を開き、対話と交流を図るよう求めるものとする。
 ザナドゥの魔族の地上への移住は、当面は世界樹の周囲に限定する。世界樹を保有する領土の責任者の協議を経ているのであれば、領土内に移住する選択肢を選択することは可能とする。

 今回の戦争の引き金となった人物、アーデルハイト・ワルプルギスはイルミンスールを離れ、ザナドゥに降り国の混乱を速やかに収束させることに努めること。
 なお、期間については不定とする。

 ザナドゥを戦争へと導いた勢力は速やかに解散、後は三国の対話と交流に努めること。
 現魔王パイモンは、国を誤らせた責任を今後、国を治めることで償うこと。


 今回の戦争では、望んで、あるいはやむなく魔族側についた契約者が見られた。彼らはシャンバラでは放校処分という扱いになっていたが、戦争が終わり、そういう者たちの行いが本人の意思によるものなのか、魂を奪われるなどして操られていたことによるものなのかの判断が順次、行われつつあった。

「和輝さん、和輝さんっ!」
「ルーシェリア殿、ここは病室です。騒げば他の方に迷惑がかかります」
 佐野 和輝(さの・かずき)アニス・パラス(あにす・ぱらす)が治療を受けている病室に、ルーシェリア・クレセント(るーしぇりあ・くれせんと)の抑え切れないといった声が響く。アルトリア・セイバー(あるとりあ・せいばー)に窘められ、一つ二つ深呼吸をして、ルーシェリアは起き上がった和輝に用件を告げる。
「和輝さんの情状酌量が、認められそうなんです。保護観察になってしまうかもしれませんけど、みんなで一緒に地上へ帰れるんですよ」
「……そうか……」
 嬉しそうなルーシェリアとは対照的に、和輝の顔は晴れない。いわば執行猶予期間を設けられたのであって、自分が犯した罪が消え去るわけではない。
「……ホント? アニス、和輝と別れなくていいの? スノーと和輝と、一緒にお家、帰れるの?」
 その時、苦しげな表情でアニスがベッドから身を起こす。彼女の方がよっぽど重傷だったのだが、和輝の身を案じて途中まで起きていたのを、和輝が半ば強引に寝かせていた。
「うん、大丈夫だよ。だからアニスさん、今は傷を治すことだけに専念して」
「……クレセントの言う通りだ。今は休め、アニス」
「……うん……おやすみ……和輝……」
 気持ち和らいだ表情を浮かべて、アニスが再び床につく。すぐにすぅ、すぅ、と寝息が聞こえてきた。
「……大変なのは、これからなんだろうな。俺の罪は完全に許されたわけじゃない。どこに行っても『やっかい者』扱いかもしれない。
 アニスとスノーを俺に付き合わせてしまうことが……俺は、辛い」
「……厳しいことを言っているかもしれませんけど……生きてこそできる償いも、あると思いますよ。
 もし、和輝さんが犠牲になることでアニスさんやスノーさんが救われたとしても、二人はきっと喜ばないですぅ。……その、私だって、そうですし……」
 言って、ぽっ、と頬を赤くして、ルーシェリアが視線を逸らす。
「……ありがとう。その……助けてくれたこともそうだけど、そう言ってくれたことは、嬉しい……んだと思う」
 いつも表情や感情を偽ってきた和輝の、その時だけはきっと、素直な感情が出ていた。

 以上のように、情状酌量が認められる者もいれば、逆に罪を問われる者もいる。これまで本人としてはうまく立ち回ってきたつもりの天貴 彩羽(あまむち・あやは)であった。以前より彼女を追っていた者たちの労力が、ついに報われたと言っていいだろう。
 彼女はメイシュロットで身柄を拘束され、所属する学校に連行された。シラを切り続ける彩羽の前に、イルミンスールより提供されたイコンの情報が突きつけられる。アルマインのことなら誰よりも詳しいアーデルハイトの捺印入りの書類は、彼女がアルマインを駆り、シャンバラとカナンに痛手を負わせたことを証明していた。
 コントラクターの権利を剥奪する措置の仕組みがない以上、彼女に課せられる最大の罪は、『放校処分』である。


 世界樹イルミンスールがかつての位置に着座し、世界樹クリフォトと接触を持ったことで、世界樹を介して両国の行き来が出来るようになった。
 世界樹クリフォトと世界樹イルミンスールの行き来は、ザナドゥ側からはまず、地上1階で手続きを受ける。書類等に問題がなければそのまま上に上がり、地上2階もしくは4階で待機した後、クリフォト上空へと向かう。着いた先はイルミンスールの地上付近であり、そこで再度手続きを受け、問題がなければ晴れてイルミンスールの外、地上へ出ることが出来る。ここの責任者は主に、アーデルハイトである。
 逆にイルミンスール側からは、今は暫定的にエリザベートが責任者となって、校長室に集められた希望者をザナドゥ側の時とは別のルートでザナドゥへ送り届けていた。別のルートなのは、アーデルハイトと接触する機会をなるべく避けているためである。二人が仲良くしては立場上、いらぬ誤解を招きかねない。

 一方、世界樹セフィロトとの行き来については、これまで使用していた橋頭堡が基礎として利用されることになった。
 流石に、キシュに直接出てこられるのは影響が大きかったため、新たに橋頭堡と結ばれたセフィロトの分身をゲートとして、キシュの北部に創ることになった。キシュ北部は険しい山岳地帯である。もし魔族が本格的な移住をカナンに求めてきた際は、この場所が選択される運びとなっていた。

 今は交流が始まったばかりだが、時が経てばその内、イルミンスールの中に学校があるようにクリフォトにも、学校ができるのかもしれない。
 それはまだ、何とも言えない。『ザナドゥ魔戦記』の次の物語は、複数の可能性がありつつもまだその1ページ目を書かれていないのだから――。


(世界樹に対する敬意は変わらない。たとえそれが魔族の地に根を張る世界樹、クリフォトであっても)
 地上にあるものとは異なる作りをしたクリフォトに触れ、叶 白竜(よう・ぱいろん)が思いを巡らす。全ては世界樹の掌の上での争い事のようでもあるし、世界樹は全く我関せずというところかもしれない。
「……誰だって、生きたい場所で生きたい」

 地下で生きることを強いられていた魔族たち。確かに多くの者はそのことに気付きもせず、ある意味で幸せに日々の生活を送っていたかもしれない。
 そして今回の戦争を経て、魔族は『望めば、地上での生活を送ることが出来る。これまでと変わらず、地下で生活を送ることも出来る』状態にある。選択し、選択したことに責任を持つ。彼らは自立を、求められていた。

「……人が向かうべき道を、教えて欲しい」
 果たして人は、何処へ向かうのか。何処へ向かうべきなのか。
 人間も、これからは自立を求められているのかもしれない。当たり前のように地上に住んでいた今までと違い、これからは選択して地上、もしくはそれ以外の場所に住み、責任を持つということを。

「……って、随分と思慮に耽ってる割に、ちゃっかりサンプルは採取するのね。
 そうだなぁ……世界樹と人の関係、オレにはよく分からない。……ま、男は女を大事にしろ、ってことだな、うん」
 白竜の護衛をしていた世 羅儀(せい・らぎ)が、自分でそのような結論を立てて納得することにする。
「ああ、可哀想なクリフォトちゃん。勝手にテレポーターにされて、あの時は大層不愉快だったでしょう?
 今は、大丈夫なの? イルミンスールと繋がっているということは、イルミンスールと和解したの? それともどこか無理してない?」
「……母は、今日も通常運転だな。まあ、我等は母と一緒であれば、なんだっていいのだ。
 皆もそうであろう?」
 別所では、クリフォトの幹に身を寄せ、語りかけるように多比良 幽那(たひら・ゆうな)が言葉を発するのを、アッシュ・フラクシナス(あっしゅ・ふらくしなす)龍樹【ロサ=アテール】、アルラウネ達が揃ってお茶会をしながら、見守っていた。
 お嬢様なヴィスカシアもお茶会。
 クリフォトに突っかかっているリリシウムもお茶会。
 クールなラディアータもお茶会。
 ぽやぽやとディルフィナもお茶会。
 ぼーっとしながらナルキススもお茶会。
「みんなお茶会をすればいいじゃない!」
「……そうだな。平和になったのだ、皆で輪になってお茶会、よいではないか」
 呟くアッシュがお茶を口にする。……気のせいか、いつもより美味しく感じられた。

 ……そう、少なくとも今は、平和なのだ。
 幾多のページで黒く血塗られた物語を紡いできた『ザナドゥ魔戦記』は、まさに最後の1ページ目でやっと、安らかな一場面を記すことが出来たのである――。

『ザナドゥ魔戦記 Fin.』

担当マスターより

▼担当マスター

蒼フロ運営チーム

▼マスターコメント

猫宮烈です。(ぺこり

……えー、終わりの挨拶というのはなかなか、思い付かないものですね(汗
改めまして、【ザナドゥ魔戦記】にお付き合いいただき、どうもありがとうございました。

蒼フロ世界でも、そして現実でも今年一年、色々な出来事がありました。
来年はどちらも、平和な一年になるといいですね。

個人としては、今回の企画を通じて多くのことを考えさせられました。
何かを貫き通すことの大変さ、そしてある意味魔族より怖い、人間の欲望のコントロールの難しさ。
キャラクターが葛藤しているのか、自分が葛藤しているのか。蒼フロ世界では妥当であるはずの描写が、現実を考慮すれば誤った描写になる……。
エンターテイメントとは何か、という所まで考えが及ぶこともありました。

『みんなが楽しめる作品を作る』というのがクリエイターの仕事であるなら、自分の手がけたこの企画は不十分だったと認めないといけないし、
自分もまだまだ未熟だと認めないといけないわけで。
戦いが終わってもキャラクターはそれぞれに葛藤を抱えていますし、それは自分も同じ事。
……まあ、それがすなわち『生きている』ということなのでしょう。

終わりの挨拶だというのに、これでは相応しくないですね(汗
救いなのは、このリアクションが出たのが年末ということでしょうか。

この場を借りまして、当企画にお付き合い頂いた古戝マスター、寺岡マスター、夜光マスターにお礼申し上げます。
御三方の協力がなければ、当企画はとうに立ち消えていました。本当にどうもありがとうございました。

来年は、不足していたと認めるべき、参加して頂いたお客様に何かをお返しするという気持ちを持って、シナリオ運営に当たりたいと思います。
それでは、もしまたご縁がありましたら、その時はどうぞよろしくお願いいたします。




おはようございます。ゲームマスターの古戝正規です。
「【ザナドゥ魔戦記】盛衰決着、戦記最後の1ページ」如何だったでしょうか。
お楽しみ頂けたなら幸いです。

【ザナドゥ魔戦記】もいよいよ最終回、気付けばすっかり年の瀬でした。
カナンの人々も今年は安心した年明けを迎えられそうですね。
真の復興と発展はこれから、正に年明けと共に始まります。

今年一年、ありがとうございました。2012年もよろしくお願い致します。
次の機会にもお会いできることを心より祈っております。 




こんにちは、または初めまして、寺岡 志乃といいます。
この度はたくさんの方々にご参加いただけましたこと、大変ありがたく思っています。
6月より始まりました【ザナドゥ魔戦記】も、とうとうグランドフィナーレの運びとなりました。
早いもので、もう半年が過ぎたのかと感慨にふけることしばし……。

正直、右も左も分からないままのスタートでした。己の力不足をまざまざと思い知らされ、歯噛みする日々の繰り返しでした。
はたして自分に最後までやり遂げることができるのか、自問自答したことも数知れず……。
ともすれば立ち止まりかける足を叱咤しつつ、混迷とともに歩いてきたように思います。
それだけにこうして完結を迎えた今、たくさんの方々のはげましや助力によって自分はこの日を迎えることができたのだと実感しています。
感謝しております。本当にありがとうございました。

そしてザナドゥ魔戦記ですが。
魔戦記はこれで終わりますが、ザナドゥはまだまだ始まったばかりのように思います。
地上人と魔族がともに手をとり合い、歩んでいくための道につながる扉は開いたばかり。この道がどこへつながっているかもようとして知れません。乗り越えなくてはならない壁はこれからも立ちふさがることでしょう。自らの偏見と不安に、ともすればすぐに揺れてしまう魔族を、ぜひ皆さんの手で力強く導いていってくださればと思います。

同じく東カナン国もまた、これで1000年に1度の災厄から解放されました、めでたしめでたし、というわけではありません。
首都・アガデはまだ崩壊したままですし、問題も数多く取り残されています。
戦いが終わったとはいえ、バァルとセテカに安息の日々が訪れるのは、まだまだはるか先のよう……。

はたして本当にその日は訪れてくれるのか?
よければご参加いただきまして、ぜひそのお手伝いをしていただけたらと思います。
その日を楽しみにお待ちしております。

それでは。また。




シナリオにご参加くださった皆さま、お疲れ様でした。
そして、いつもご参加ありがとうございます。夜光ヤナギです。
いつものことながらですが、少しでも皆さまの物語のお役に立てられたならば、幸いに思います。

【ザナドゥ魔戦記】も、6月から始まりまして、約半年ですか。
その前の【カナン再生記】から考えますと、約1年間ということになります。
こうして振り返ると、短くもあり、長くもありまして。
若輩者の自分がその一端として、皆様の物語を書き記せたことが、何よりも喜ばしいことであります。
今思えば、あまりにもふがいなかったなぁと色々反省も多いのですが。
それも含めまして……思い出の一部にしていただけると、私も救われる思いです。
今後も精進してまいります。

さて、無事にグランドフィナーレ!
では、ありますが、まだまだザナドゥ、カナンの物語は続いていくのではないでしょうか?
少なくとも、こうして皆さまと冒険させていただいた私自身のなかでは、これからのシャンバラ含む世界の動向に、とても興味深いものを持っております。
またいずれ機会のある時は、ご一緒に冒険できたら……とても嬉しいです。

長々となってしまいましたが、そろそろこのへんで失礼させていただこうかと。
それでは、またお会いできるときを楽しみにしております。
ご参加本当にありがとうございました。