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百合園女学院の秘境を見よ!?

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百合園女学院の秘境を見よ!?

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第2章 百合園女学院校長室

 百合園女学院の生徒のほか、百合園女学院のプールの授業風景が盗撮されているという噂を聞きつけた一般人、他校生が数名、百合園女学院の校長に面会を求めていた。
 校長の桜井静香(さくらい・しずか)も、確かに覗きはいけないことだとは思ってはいるが。
 水着を着ている姿を見られたからといって、そんなに大事ではないと、大して気に留めず、事件発覚後ものほほーんと毎日を過ごしていた。
「……というわけで、盗撮犯の気の緩みを誘うためには、桜井校長に水着姿になってもらうしかないんです。どうかお願いします!」
「ぶっ……!」
 しかし、ルイス・オルゴン(るいす・おるごん)の突然の熱烈な案に、静香は思わず飲んでいた紅茶を気管に入れてしまい、激しく咳き込む。
「み、水着を着るのは構わないんですけどね……」
 言いながら静香は目を軽く泳がせる。
「校長が、校長こそ! 奴等の好みの女性そのものなんです」
 外見年齢30歳の体格の良い男に、バンとテーブルを叩かれて、ビクッと静香は飛び上がる。
 更に!
「解った。スク水を嫌うのは露出も低く、子供っぽいからじゃけんのお。これならどうじゃ」
 リンダ・ウッズ(りんだ・うっず)がビラリと取り出したのは衝撃の極小ビキニだった。
「校長じゃけえ生徒のために体張らんと! 教育は実戦じゃけん」
 あまりの衝撃的な水着に、静香は口をぱくぱくと開いたり閉じたりしている。
「さあ、さあ!」
「校長、どうぞ覚悟をお決め下さい!」
 リンダとルイスが迫ると、静香は「ひぃ」と小さな悲鳴を上げる。
「ご、ごめんなさい。それはそれだけはどぉぉぉぉぉぉぉぉしても、無理なんだぁーっ!
 静香は涙目になりながら、パートナーのラズィーヤ・ヴァイシャリー(らずぃーや・う゛ぁいしゃりー)の腕をひしっと掴む。
「あら、校長として生徒を守るのは当然ですのに。静香さんは、本当に仕方のない方ですわね☆」
 扇で口元を隠しながら、くすくすとラズィーヤは笑う。
 ぽむ。
 百合園の生徒である真口悠希(まぐち・ゆき)が、静香の肩に手を置いた。
「水着はやっぱり困りますよね。ボクも……」
 その後は口には出さず、悠希は目をぎゅっと瞑って悲壮に握り拳を固める。
(ボクも……女の子達を見ても大きくならないように、事前に違う意味での準備運動をしなきゃいけないですし)
「な、なんか凄い心の声が聞こえた気がする――!」
 静香は突然震えて、あわあわと後退し椅子にぺたんと腰掛けた。
「恐れることはない」
 ルイス同様、体格の良い男が前へ出る。セオボルト・フィッツジェラルド(せおぼると・ふぃっつじぇらるど)だ。
「シャンバラ教導団の者だが、この事件は百合園だけではなく、各地で起きている事件なのでな。情報を提供願えないか?」
「そんなに大きな問題なの? うちの被害っていっても、プールを撮った写真が見つかっただけで、危害を加えられたり、追われたりした生徒はいないんだ」
「なるほど」
 静香の言葉をメモに取りながら、セオボルトはその盗撮と思われる写真を目に低く唸り声を上げる。
(ぬっ。やはりこれは我等の同志が撮ったものではない! 如何に試し撮りとはいえ、百合園内に写真を落とすなどという致命的なミスを我等は決して犯したりはしなぁぁぁぁい!)
「……どうかした?」
「いや、なんでもない。自分はこれで失礼する。見回りもしておこう」
「お願いします。一応女子だけの学校だから、助かるよ……」
「俺も微力ながら協力させてもらう。君達の輝ける学院生活のために」
 スーツでビシッと決めたベア・ヘルロット(べあ・へるろっと)が静香の前に躍り出ると、静香はふわりと可愛らしい笑みを浮かべた。
「頼りにしています」
「それじゃ、プールサイドで待ってるぜっ☆」
 やる気をみなぎらせ、ベアは勇み足で校長室を後にする。
「それにしても、他校の方が多いですわね……」
 ラズィーヤが扇を下ろし少し、窓に近付く。
 校長室の窓から見える場所にも、他校生の姿がちらちらと見受けられる。
「他校から来てまで恥ずかしいことや危険なことを代わりにしてくださるのです。私達は心から歓迎してあげねば」
 学院の生徒である高潮津波(たかしお・つなみ)がラズィーヤに近付き、耳元で囁いた。
「そうですわね……問題を起こさないでいただければ」
「ええ、そのためにも相談が必要かと思いますので、校内及び学校外で打ち合わせをして参ります。水着や囮役に必要な遊び道具の手配にご協力いただけますでしょうか?」
「学院にあるものでしたら、使っていただいて構いません。でも、生徒達が嫌がるかもしれませんので、男性の姿をした人物はプールには入れないで下さいませね?」
「わかりました。男性の姿ではプールには入れません」
 ラズィーヤと津波はにこにこと微笑みあった。

 かくして、外見が女性であれば、他校生の協力者もしばらくの間学院の中に入ることが許された。
 寧ろ逆に外部の者の介入を当分拒否して、普段どおり男子禁制のまま、生徒と教師以外誰も入れなきゃ問題ないじゃないか!とも言うし、それが百合園の生徒達の一般的な考えもそうであった。事件を利用して学院に潜入し、よからぬことを考える輩も必ずいるだろうから。
 ラズィーヤとしても偏に面白そうだから♪、許可したわけで、今回は特に他校生の協力を必要としていたわけではない。
 ま、この程度の事件なら、深刻に考えず楽しんじゃおうというのが、影の支配者の彼女の考えであり、平和主義である校長の静香は純粋に他校生の協力をとても嬉しく感じていた。
「ちょっと待って」
 蒼空学園の生徒である黒ロリのフリフリ衣装を纏った天良高志(てんら・たかし)が、百合園の制服を纏っている女生徒の腕を掴んで、上から下まで眺め回す。
「な、なななんですかっ」
 大きな鞄を抱えて萎縮する女生徒。高志は彼女の襟首を掴む。
「レーゼマン、間違いない!」
「おお!」
 白ロリのふりふりドレスに身を包んでいたレーゼマン・グリーンフィール(れーぜまん・ぐりーんふぃーる)が、女生徒にがばっと手を伸ばすと、彼女の制服を力づくで脱がしていく。
「ぎゃあああっ」
 露になった上半身からパットが落ちて、ぺたんこな胸が現れる。
「男として、お前たちの所業は許すわけにはいかんのでな」
 レーゼマンが雄雄しく言い放つ。ふりふりドレス姿で!
 服を剥がれた少年は真っ赤になりながら、尻餅をついてじりじりと後退していた。
「やはりそうだったか。侵入者め、即刻学院から退散すれば、これまでのことは見逃してやる」
「う、う……わーっ!」
 少女だった人物は悔し涙を流しながら、学院から逃げ去って行く。
「……それにしても、随分と侵入してるね」
「そうだな」
 高志の方は、元々小柄で可愛らしい顔をしているため、女装もとても似合ってはいるが。
 シャンバラ教導団のレーゼマンの方は顔も身体つきも普通に男性である為、ふりふり衣装が似合っているとは言いがたい。知り合いじゃなければ、即刻高志に捕まっていただろう!
 ともあれ、高志とレーゼマンが暴き出した女装した男子はこれで3人だ。
 ただ、百合園女学院は外見が女子であれば、性別が男である人物も受け入れている特殊な学校である。
 2人が暴いた生徒の中には、事情により性別を隠し女装して通っていた無実な生徒もいたかもしれない。
「待って!」
 次に高志が目をつけたのは、高原瀬蓮(たかはら・せれん)という可愛らしい少女だった。
「わ、わたわたわたしは、男子じゃ、ない、よ……っ」
 胸元を押さえて泣き出しそうな彼女に高志は駆け寄って突如ぎゅっと抱きついた。
「キミのような可愛い娘を疑うわけないよっ、是非写真撮らせて」
「可愛い顔が台無しだ。ほら笑え」
 レーゼマンがふりふりスカートのポケットからデジカメを取り出す。
 知らない人に突如抱きつかれ、とても笑うことが出来ず脅えている瀬蓮をレーゼマンが激写すると、高志は瀬蓮に感謝の言葉を述べて解放する。
 ……こうして2人は、百合園女学院の平和を護る為に! 女装をした男子を暴いて回り、時折可愛い女生徒に駆け寄って抱きつき、堂々と写真を撮らせてもらうのだった。
 ……!?