波羅蜜多実業高等学校へ

葦原明倫館

校長室

空京大学へ

百合園女学院の秘境を見よ!?

リアクション公開中!

百合園女学院の秘境を見よ!?

リアクション

□□□□□

 プールでは囮であることを忘れたかのように、少女達は楽しく遊んでいた。
 水中に潜って、鬼ごっこをしていた燕は、鬼の紫織に腕を掴まれてしまい、振りほどこうと水の中でもがき、また足を滑らせて誰かの足の付け根あたりを思いっ切り掴んでしまう。
「んぐはぅ!※☆?◆」
 なんだろう、異様に柔らか、かった………………!?
 がばっと水中から顔を出した燕は股間に手を当てているベアの姿を確認すると、深く空気を吸い込んだ。
「きゃぁぁぁぁーっ、男ォォォォォォォォー!」
「堂々と入り込んでくるとはいい度胸ですッ!」
 紫織がビート板を振り上げる。
「まて、自分は盗撮犯じゃない。現場から盗撮犯の位置を特定しようと……っ」
「問答無用です!」
 紫織はビート板でベアを連打する!
「えい、えいっ!」
 アリシア・ノース(ありしあ・のーす)は玉入れの網から玉を取っては、ベアに投げつける。
「いてっ、くっそ……でも、すげぇ楽しかった☆
 ほっくり笑みを浮かべながらも、急いでプールから飛び上がり、ベアは水着姿のままプールサイドからプールの外へと飛び出して行く!
 無駄毛は完璧に処理してあるが! 胸は偽チチであることが一目瞭然で、身体つきは男そのものだ!
「静香さま、逃げてくださいっ」
 悠希がプールから上がって、校長の静香に駆け寄った。
「あっ」
 つるん☆
 水溜りで足を滑らせた悠希の手が、静香の肩に――。
 ビリ……。
「ひっ!」
 ドレスが破けて、胸元が露になり静香は慌てて両手で胸を覆ってしゃがみこんだ。
「ご、ごごごごごご、ごめ、ごめんなさ、いっ」
 真っ赤になって悠希は静香から飛びのいて、蹲った。
(ち、ちらりと下着が見え……っ)
「ど、どどど、どないなってはりますのん? 変質者さんはもうおらへんて聞いてますえ!?」
 エリスは急いでプールから出ようとしたが軽くパニックを起こしており、紫織と衝突して溺れかかる。そんな彼女の様子をティアは変わらず優雅に楽しげに見ていた。
「ヘンターイっ!! 心も体も掃除してあげますっ!」
 綾乃は大声を上げることで周囲に警戒を呼びかけながら、先回りしてデッキブラシを手にベアに飛び掛る。
「天誅です!」
 そしてハウスキーパーでベアを学校の外へと追いやっていく。

「プール内にも紛れ込んでいたようね! ホント、許せない。盗撮なんて女の敵よ! 百合園は百合園生の手で守るのよ!」
 対盗撮自警団、自衛少女隊『リリィ・メイデン』を結成した桜月舞香(さくらづき・まいか)は、ナトレア・アトレア(なとれあ・あとれあ)と共に、スクール水着姿でプール周辺を巡回していた。
 校長の桜井静香が一般人や他校の協力者も有難く迎え入れたことで、更に大きな騒ぎに発展してしまっているようにも思え、ラズィーヤはそれを楽しんでいるかのようでもある。なんとも頭の痛いことだ。
 普段ならば、生徒会が取り締まってくれそうなものだが、ヴァイシャリーの他校との交流会や街の行事に借り出され、現在生徒会のメンバーは殆ど不在なのだ。
「必ず捕まえましょうね」
「勿論よ!」
 ナトレアと舞香が、プールの更衣室に近付いた――その時だった。
 女性が1人、更衣室から飛び出してきた。百合園女学院の制服を着ているが、違和感を感じる。お嬢様風の女性ではなかった。
 訝しげに舞香が近付く。
「どうかしました? ってカメラ!?」
 飛び出てきた女性――リンダ・ウッズ(りんだ・うっず)の手にはカメラが握られている。その後から桐生円(きりゅう・まどか)も姿を現した。こちらは、制服につけているブローチをしきりに気にしている。
「冤罪だったらごめんね。でもこの状況でカメラを持っている人を疑わないわけにはいかないのよ」
 舞香とナトレアはリンダを押さえつけて、服の上から胸に触れた。
「なにするん!」
「女の人、のようですね」
 大きな胸は本物の感触だった。ナトレアはリンダから手を離す。
「パットってことも……っ」
「残念、ボクは女じゃ!」
 バリバリっと上着をはだけ、リンダはふくよかな胸の膨らみを舞香に見せ付ける。
「まいちゃん、ナトレアちゃん!」
 携帯電話を通話状態にしてあったため、別班の桜月綾乃(さくらづき・あやの)姫野香苗(ひめの・かなえ)が駆けつける。こちらもスクール水着姿だ。
「お姉さま方をえっちな目で見るなんて、ぜええええったい許さない。お姉さまの水着姿も裸も全部、香苗のものなんだから!」
 叫びながら現れた香苗だが……。
「はうう……っ!!」
 リンダの胸を見て放心し、持っていた竹箒をぱたんと落とした。
「おっきい……」
 香苗はふらふらとリンダの体に手を伸ばす。
「しっかりして下さい」
 ぺしっと、綾乃が香苗の手を叩く。
「どこの学校の人ですかっ? 学院にあなたのような人はいませんっ」
 綾乃は痴漢撃退用の唐辛子入りスプレーをリンダに噴射する。
「百合園の父兄の皆さんに通報します! 自分達の娘が被害に遭ったとしったらさぞかしお怒りになるでしょうっ。社会的に抹殺されて地位も名誉も全て失えばいいんです!」
 綾乃はスプレーをかけながら、一気に捲くし立てる。
「あたたっ、こまけえこたあいいんだよ! パラ実は心は錦、下は褌!」
 ドンと強い力で、綾乃と香苗を突き飛ばすとリンダは逃走する。
「待てーっ!」
 舞香はリンダを追って行く。
 綾乃はそのままガクリと手を突いた。
 パラ実……既に地位も名誉も無い相手だった。
「大丈夫ですか?」
 ナトレアは心配そうに、倒れたままの香苗に手を伸ばす。
「大丈夫……こ、これ」
 香苗は突き飛ばされる時、思わずリンダが持っていたカメラにしがみついていた。
 特に意識をしたわけじゃないんだけど……断じてカメラが欲しかったわけじゃないんだけどっ。
 このカメラの中に、憧れのお姉様達の数々のあんな映像やこんな映像が眠っているかと思う、と……。
「あう……。香苗には、あのお姉さまを成敗することなんてできないっ。そう、悪いのは男なの! お姉さま達が戦わなきゃならないのも、全てこんな写真を欲しがる男達が悪いの。見つけたらぐっちょぐちょんのけちょんけちょんにしてやるんだからーっ!」
 香苗はカメラをぎゅっと抱きしめたまま、叫ぶのだった。
「……全く困ったものだな」
 ちらりと香苗の手の中のカメラを見た後、憤慨したそぶりで円はプールの方に向かって行く……ブローチ型カメラを携えて。
(アジトで見た仲間がいたんで、協力するつもりだったが……そっちは諦めるか)

 門まで追いかけた舞香も、気高き百合園女学院の生徒としてはスクール水着姿で箒を振り回しつつ学院の外に出ることは出来ず……結果的に、リンダの逃走を許してしまった。