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のぞき部だよん。

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のぞき部だよん。

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第4章 工作 【6限】

 男子更衣室の葉月ショウは、携帯電話のマイクを忍ばせてブツブツ喋っている。のぞき部員と思われる生徒の名前を列挙しているのだ。この中に首謀者がいるかもしれないし、いなくてもそこから辿っていける。
 既にのぞき部には「見学したい」と申し出て、あっさり認められていた。ゆるゆるののぞき部は、ショウが敵のスパイなどとは露ほども疑わなかったのだ。

「一番見やすいのは、ここよ!」
 沙耶が、のぞき部の中心で“ベストのぞき穴ポイント”を叫ぶ。
 いよいよのぞき穴を開ける作業がはじまるとあって、クライス・クリンプトが前に出た。
「それじゃあ、僕は、これをどこかに貼ろうかな」
 とポスターを提示した。ポイントと違うところに貼って、敵を惑わす……というカモフラージュ作戦だ。 それにしても、教室で拾ってきたというポスターはなんという偶然か、動物園の宣伝だった。キリンとパンダがニッコリ微笑んでいた。
 外から帰ってきた影野は、脚立を抱えている。
「脚立持ってきました」
 上から見渡すように女子更衣室をのぞくと考えていたのだ。メアリを肩車している凛も賛同するが、姫宮は異を唱えた。
「待てよ。俺はよくわかんねえんだけどよ、男なら女の一番大事な部分が見たいんじゃねえのか?」
 姫宮は、床からの高さ70センチあたりにのぞき穴を開けるべきだと主張する。それには麻野樹が反論した。
「姫宮く〜ん。俺はねぇ、目線くらいがねぇ、いいと思うんだよねぇ〜」
「なんでだよ」
「だってぇ、穴開けてるときにぃ、みんなで人のカーテンになってぇ、隠すんでしょう〜? こうやって〜」
 壁にポスターを貼っていたクライス・クリンプトを周囲から隠すように、体を密着させる。
「あああ。麻野さん!」
 クライスは麻野にお尻を触られたようだ。姫宮のイライラは募る。
「だから、なんなんだよ」
「だからぁ、……みんなでぇ、押しくらまんじゅう、やってみよぉ〜」
 麻野が一人で勝手に体を密着させ始めた。
 人のカーテンが押しくらまんじゅうになってることは、もう誰も突っ込まない。
 坂下は巻き込まれながら、全然関係ないことを考えてブツブツ呟いていた。
「この穴が開けば、愛美殿の身体が……やっぱりのぞかない方がいいのではござらぬか? 拙者、いかがいたせばいいのやら……」
 のぞき部は、メチャクチャだ。

 こんなグダグダののぞき部に、入りたくても入れないで悩んでいる者もいる。
 百合園女学院のメイド高務 野々(たかつかさ・のの)だ。
「どうしましょう。さすがに百合園の私が男子更衣室に入るなんて、許されませんもの」
 噂を聞きつけて来てはみたものの、男子更衣室に入れなくて困っていた。
「ああ、どうしましょう」
 更衣室の前で、うろうろ。うろうろ。いつの間にかハウスキーパーを使ってしまい、すっかり綺麗に仕上がっていた。
 野々のパートナーエルシア・リュシュベル(えるしあ・りゅしゅべる)は、百合園女学院に置いてきぼりをくらっていた。
「どこに行ったのかしら。まさかあの放送が関係あるとは思えないですけど……」
 と探し始めた。

 姫宮が麻野と体を密着させている。情に厚い姫宮は、仲間がやってるのを見てるだけ……とはいかなかったようだ。
「そうそう。そんな感じでぇ」
 麻野はどさくさにまぎれてお尻を触り放題。いつもは麻野の暴走をパートナーの雷堂光司が抑えるのだが、今はいない。ここぞとばかりに羽を伸ばしている。
 そして、輪の外に好みの男がいることに気がついた。見学者の葉月ショウだ。あの筋肉、さわりたいぃ〜!
 ショウはまだこっそり連絡を取っていた。
「ところで……アク。この中にのぞき部部長はいないと思うぜ」
「どうしてそう思うんですか?」
「どうしてって、凄まじいカオスだからだよ。リーダーがいたらこうはならねえ」
 そのとき、ショウの全身に悪寒が走る。
「はうう!」
「俺ねぇ、薔薇の学舎の麻野樹って言うんだぁ。君の名前はぁ?」
「お、俺は、葉月ショウだけど……」
「いい筋肉してるよねぇ。胸なんかすごそうだしぃ」
 喋り方はのんびりしてるが、手は早い。素速くシャツの中に手が入って胸を触っていた。
「はあああああああああっ!」
 聞いたことのないショウの声を聞いてしまったアクアは、ズルズルと落ち、女子更衣室の床にへたりこんだ。
 ということは、大草にのぞきの神が降臨……しなかった。
 アリアは水着に着替え終わって、出て行くところだった。
 しかも、剥がれ落ちた『校長使用中』の貼り紙に気がついたアクアが、律儀にもロッカーに貼り直した。 穴を塞ぐ位置に。
 大草は暗闇の中で、うなだれた。
(おわった……)

 その頃。のぞき部の弥涼は、誰もいないトイレで何者かと話し込んでいた。
「わかった。全ては俺たちのシナリオ通りだな……」