葦原明倫館

リアクション

第２章　対抗　【５限授業中】

「のぞき部対策部隊を立ち上げる。のぞきを阻止するために、集まってくれ！」

　のぞき部の放送に対して、すぐに新しい放送が流された。
　放送後。集合場所となった教室には、あっという間に有志が集まってきた。
　放送を流した男、村雨　焔（むらさめ・ほむら）が隊長となったが、メンバーは、やはり女子の方が多い。
「女子にとっては、自衛団ということになるわね」
　やる気満々で一番前に陣取ったのは、白波　理沙（しらなみ・りさ）だ。
「男の夢だかロマンだか知らないけど、そんな下らないものから私達女子の体を守りましょう！」
　そう言われてしまうと、男子としてはなんだかちょっと肩身が狭い。
　それを払拭するかのように、村雨は勇ましく方針を語る。
「のぞきを行った生徒を捕まえ、女子生徒に突き出して仕置きをしてもらいたい。その後、正門前で晒し者にするなんて罰もいいな」
　頷いている者も多い。そして、
「名前を考えたんだ。聞いてくれ。……麒麟（きりん）隊、というのはどうだろう」
　直角にしか曲がらないという伝説の動物、麒麟。曲がったことが許せない彼らには、ピッタリなネーミングだ。
　ただ、村雨のパートナーアリシア・ノース（ありしあ・のーす）は本人の隣で無邪気に間違えていた。
「キリンは首が長いから、高いとこから悪い人を見つけられるもんね♪」

　ここで「キリン隊」の創設時メンバーを整理しておこう。（順不同）
　水原　ゆかり（みずはら・ゆかり）以外は、全員蒼空学園の生徒だ。

◆　キリン隊、男子

村雨焔
橘　恭司（たちばな・きょうじ）
葉月　ショウ（はづき・しょう）
武神　牙竜（たけがみ・がりゅう）
大草　義純（おおくさ・よしずみ）

◆　キリン隊、女子

白波理沙
アリシア・ノース
リリィ・シャーロック（りりぃ・しゃーろっく）
チェルシー・ニール（ちぇるしー・にーる）
秋葉　つかさ（あきば・つかさ）
広瀬　ファイリア（ひろせ・ふぁいりあ）
ウィノナ・ライプニッツ（うぃのな・らいぷにっつ）
マリー・ストークス（まりー・すとーくす）
クレア・アルバート（くれあ・あるばーと）
葉月　アクア（はづき・あくあ）
水原ゆかり（シャンバラ教導団）


　会議は進み、作戦の骨子は大きくこの３つとなった。

１，男子更衣室……のぞき穴を開ける行為を見抜く。させないように見張る。
２，女子更衣室……“ベストのぞき穴ポイント”を探りに男子が女装して来るはずだから、それを見抜く。見張る。
３，女子更衣室……のぞき穴が開けられてものぞかれない、そんな工夫を施す。

　活動拠点が男女で異なるため、男子部隊と女子部隊それぞれに名称をつけることになった。
　村雨が女子部隊の名前を考える。
「男子が麒麟隊だから、えーっと……」
　アリシアが素速く助け船を出すが、無邪気というのは怖いものだ。
「男子がキリンなら、女子はパンダがいいなー」
「いや、待て――」
　と制する村雨をよそに、広瀬ファイリアが賛同する。
「パンダ賛成！　パンダってなんであんなに可愛いんだろねー！」
「ねー！」
　無邪気ほど怖いものはない。
「あの、麒麟は……」
　呟く村雨をよそに、背後の黒板には可愛いキリンとパンダのイラストが描かれていく。
　イラストの上には『キリン隊・パンダ隊、がんばろー！』とカラフルな文字が並んでいる。
　何はともあれ、のぞき部対策部隊「キリン隊」と「パンダ隊」がここに誕生した。みんな、メアドを交換し、勝利の暁にはパーティーをしよう！　と健闘を誓い合った。

　これから壮絶な一日が始まろうとは、まだ誰も気がついていなかった。
　いや、部屋の隅でずっと黙って見ていた秋葉つかさだけが、分かっていたのかもしれない。
「ふふっ。面白くなりそうね……」