波羅蜜多実業高等学校へ

葦原明倫館

校長室

空京大学へ

集え勇者よ!

リアクション公開中!

集え勇者よ!

リアクション


第二章 地上からの先行

 【先行班・地上】のメンバーは以下のとおりである。
荒巻 さけ(あらまき・さけ)日野 晶(ひの・あきら)菅野 葉月(すがの・はづき)ミーナ・コーミア(みーな・こーみあ)陽神 光(ひのかみ・ひかる)レティナ・エンペリウス(れてぃな・えんぺりうす)エメ・シェンノート(えめ・しぇんのーと)井上 敏道(いのうえ・としみち)アラン・シャロン(あらん・しゃろん)安芸宮 和輝(あきみや・かずき)クレア・シルフィアミッド(くれあ・しるふぃあみっど)ロイ・エルテクス(ろい・えるてくす)ミリア・イオテール(みりあ・いおてーる)

 一行がヴォル遺跡へと着く。遺跡はクリスティアの北にあるなだらかな山の中腹にあった。
遺跡は長方形でなんの外装もない。のっぺりとした壁に長い年月を経て茂った植物が複雑に絡み合っており、荒廃が激しくかなりの年月を感じさせる。
正面には中へと続く入口があんぐりと開いていた。
「あれ? ねえ葉月。遺跡の入口には炎があるって話だったよね?」
 ミーナが葉月の腕に抱きつきながら小首を傾げる。
「そうでしたが……おかしいですね」
  葉月の表情がかげる。
「ガセ情報とかだったんじゃないですか?ほら、噂とかって尾ひれ背びれがつくでしょ」
エメが肩をすくめる。しかし彼が入口へと踏み入れようとした、その時。
 ボンッ。
 突如、炎が起こり入口を塞いだ。エメは寸でのところで直撃は免れたが、火の粉が飛んで自慢の髪の毛に燃え移ってしまう。
「だ――――! 焦げ、私の髪が焦げる!」
「ミリア、頼む!」
「嫌、めんどい」
「即答かよっ。消してやってくれよ」
「……まったくロイは人使いが荒いですね」
 ミリアがぱちりと指を鳴らす。するとエメの頭上からバケツをひっくり返したように水が降ってきた。一応鎮火するが腑に落ちないといった表情のエメ。
「……ふっ。水も滴るいい男とはこのことですね」
「体裁を整えようとしているところ申し訳ありませんが、頭の方をちょっと確認したほうがよろしいのではなくて? その、ねえ」
「はい、あぜ焼きの後みたいになってます」
「ま゛っ」
 さけが言葉を選んでいると、正直者なのはいいが鈍感な晶がずばりと言った。エメは撃沈、そのまま倒れこんでしまう。

「みんな、見て見て! 大発見!」
 入口の横でなにかを探すように屈みこんでいた陽神光が手を招く。そこには小さな魔法陣があった。
「光、これはなんです?」
「シャンバラ古王国の失われた魔法だよ! これがセンサーみたいになってて、感知すると炎でこんがり丸焼けにするって寸法だね!」
 レティナが尋ねると、陽神光が興奮した面持ちで答えた。
「シャンバラ古王国の失われた魔法。噂には聞いていましたが……」
「ああ……え、えっと……どうしましょう」
 安芸宮とそのパートナー、クレアが言葉を呑む。
 シャンバラ古王国は現在のテクノロジーでも再現できないような技術を有していた。ヴォル遺跡がその時代のものとなれば、おのずと危険は高まる。
 一行の間に長い沈黙がおとずれる。
「わたくしは進みますわよ」
 それを打ち破ったのはさけだった。
「後発班のためのトラップ解除は難しいかもしれませんが、遺跡には村を救う手がかりがあるはず。それを手をこまねいてみているなんて、わたくしには出来ませんわ」
「では私も同行しましょう」
 晶が名乗りをあげる。
「オレらも行くで。旅は道連れってやつや。な、アラン」
「うむ。百聞は一見にしかずと言うしな」
 敏道がにかっと笑う。
 それでみんなの意思も固まったのか、誰も引き返すものはいなかった。

 一行の最初の問題は入口を塞ぐ炎だ。これをどうにかしないことには調査もなにもあったものではない。
「ではウィザードの方々。お願いします」
 葉月が促がすとロイ、ミリア、アラン、ミーナが燃えさかる炎へと手をかざす。すると轟々と燃える炎が歪み始めた。
 ウィザードのスキル、火術だ。
 炎の中心からこじ開けられるように穴が広がっていく。
「葉月、今のうちよ! ちゃちゃっと入っちゃって!」
 ミーナが叫ぶ。
「くそ、なんて火力だ。今にも制御が振り切られそうだ」
「たしかに……凄まじいっ」
「情けない。帰ったら特訓ですね、ロイ。そちらのドラゴンさんもいかがかしら?」
「おおっ! 魔女である貴殿からの指導とは願ってもない!」
「止めた方がいいぜ、アランさん。こいつのは特訓という名のいびりなんだ」
「ロイ……あなたには念入りな特訓が必要ですね」
「ちょっとみんな真面目にやってよ〜」
 こうしてウィザードたちの活躍により一行はヴォル遺跡へと入ることができた。
 中は真四角の部屋になっていた。なにか特殊な魔法でもかかっているのだろうか、壁や床が淡く光っており室内はうすぼんやりとしている。外壁同様に装飾など一切なく、四辺にはそれぞれ簡素な扉が備え付けられているだけだった。
「さて、先ほどの汚名返上といかせていただきましょう。某教授もびっくりな――」
「エメっち、チョイ待ち! 光チョーップ!」
「おぶぅ」
「そんでもって光キーック! みんな気をつけて! 迂闊なことは禁物だよ」
「どういうこっちゃねん」
「罠だらけってこと!」
「ひ、光君……注意だけなら最初の一発だけでよかったのでは……がくり」
 エメがまたしても倒れ伏す。
 「面白いやんけ。せいぜい飽きさせてくれるなや、ヴォル遺跡さんよ」
 敏道が目を線のようにし、右の拳を左の手のひらに打ちつけた。