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第七章  ヴォル遺跡とクリスティア村

【先行班・地上】の一行はヴォル遺跡の通路を全力疾走していた。なぜかというと答えはシンプル、後ろから巨大な岩が猛スピードで迫ってきているのだ。しかもその岩はご親切なことに魔法陣でコーティングしてあり一切の攻撃を寄せ付けない。
「だ――――! 潰される――――!」
 エメが泣きそうになりながら叫んだ。
「まだ大声をあげる余力が残ってるじゃありませんか。頑張りなさい、大丈夫ですわ」
「そうです。大丈夫です。あなたが潰れても私は痛くありませんから」
「ひでぇ!」
 さけが激を飛ばすが、晶が台無しにする。先頭を走る敏道が青ざめた。
「……最悪や。前見てみい」
 通路の先に魔法陣が現れたのだ。魔法陣が大きな刃の付いた振り子を生み出す。
 前には刃、後ろには巨岩。
「もう駄目! これはもう絶対に死ねる!」
「だからあなたが死んでも――」
「もうそれはいいっての!」
 一行が刃を紙一重でかわして進む。エメも神がかり的な運で当たらずにすんだ。
「部屋だ! 部屋があるぞ! みんなあと少しだ、頑張れ!」
 一行は部屋へと駆け込んでいく。最後のエメがヘッドスライディングで部屋へと飛び込んだ。
巨大な岩は大きな音を立てて扉に衝突しめり込むようにして止まった。
「助かったぁ」
 一同が揃って安堵のため息をつく。
 和輝が何気なく部屋を見回す。先ほどは急いでいて気付かなかったが、部屋にはとても太い管が何十本も並んでおり、中を液体が流れているのだろう音がしている。奥には巨大なフラスコのようなものがあり、ぶくぶくと気泡があがっていた。
「ここは……山水を浄水とかか?」
「これはっ」
 クレアが巨大フラスコの側壁にはめられているプレートを見て大きな声をあげる。
「これはシャンバラ古王国の文字ですね。読めるんですか?」
「多少は。いえ、そのようなことを言っている場合ではないんです。急いで【通信班】に連絡をっ」
 葉月を急かすようにクレアは言った。


【アーリア護衛班・離脱】は以下のとおりだ。
○メイベル・ポーター○セシリア・ライト○武来 弥○高潮 津波○ナトレア・アトレア○飛鳥井 蘭○比島 真紀○サイモン・アームストロング○久世 沙幸○藍玉 美海○御風 黎次○ノエル・ミゼルドリット○葉山 龍壱○空菜 雪○十倉 朱華○ウィスタリア・メドウ○影野 陽太○犬神 疾風○月守 遥

 落とし穴の先は壁や床が光を放っておらず暗闇だった。
「きゃあ」
 不意に女性の悲鳴が聞こえる。
「むむ、何が起こったでありますか! サイモン光を!」
「おう、任せろ!」
 真紀の指示でサイモンが火術のスキルを使う。周囲の様子が確認できるくらい明るくなった。
 すると。
「ちょ、ねーさま! やめてったらぁ」
「ここか、ここがええのんか、ですわ」
 そこにはどさくさに紛れて沙幸の身体を触りまくる実海の姿があった。
「おおっ」
 その光景に男子たちが釘付けになる。
「みんな見てるってば!」
「人が観てるとより興奮しますわね〜」
 どうやら暗闇だったからというわけではないらしい。

「ちょっとメイベルさん! 大変なことをしてくださいましたわね!」
 蘭が強い口調でメイベルを責める。みんなの注目が集まった。
「ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい!」
「ごめんなさいぃ」
 メイベルとセリシアが必死に謝る。
「わたくしに謝って済む問題じゃなくってよ! いいですこと? 護衛の数が減るということは、それだけ危険が増えるということなんですよ」
 蘭の言うことはもっともだ。メイベルのやったことは、取り返しのつかない事態を招きかねないことだった。
「ごめんなさいぃ……ううっ」
 メイベルが堪えきれずに泣いてしまう。
「……もういいですわ。私はあなたが憎くて言っているわけではありませんもの。今やるべきことは一刻も早く班へと合流することですわ。一緒に頑張りましょう」
「はい〜。私、皆さまに迷惑をかけてしまったので、今まで以上に一生懸命働かせていただきますぅ」
 言うや否やメイベルがぽてぽてと走り出し、辺りの捜索を始めた。
「ちょっとメイベルさん。前回はあなたがそのような行動をとろうとしたから――」
 蘭が注意しようとしたが、時すでに遅し。
かちり。メイベルが何らかの罠を発動させてしまう。近くの壁の一部が倒れ、穴になっていたそこから影が出てくる。
「まさかジャイアントラット!?」
 しかしそれはジャイアントラットではなかった。そこから出てきたのはジャイアントコックローチだった。黒くて、てかてかして、素早い……平たく言ってしまえばゴキブリのことだ。ただし大きさはその比ではない。
「いやああああああああああああああああ」
 一同の悲鳴が木霊する。