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リアクション
「あら〜、繭になっちゃって〜、ま〜」
のんきな声を漏らしながら、晃月 蒼(あきつき・あお)はヨウが作った白い楕円形の塊をスケッチしていた。
「そ〜ね〜。むかし〜、蛾の怪獣もこんななってた気がするわ〜」
マノファ・タウレトア(まのふぁ・たうれとあ)が気だるげに返答した。しかし繭を描いている横でエロ漫画描くのはいかがかと。
「あら? そっちは何を描いてるのかしら〜?」
「うん〜? エロ同人〜」
とか言いつつ筆を走らせるそれは、
「わ、えっちいのだ……!」
年端も行かない少女には少し刺激が強かったようだ。が、
「お、あんまエロくないね」
とか言っちゃうのはパラ実の山田 山(やまだ・さん)。
「え、そ、そう〜……なんですか?」
巻き込まれた蒼はそうとしかいえないが、山はペラペラと言葉を繋げる。
「ほら、ここのアングルが真横からで全然エロくないし、骨格も少しイっちゃってるから、多分下書きしてないか人物骨格をちゃんと捉えれてないよね。あと、汁に色気もないし、線がいまいちのっぺりしてるから素人臭いし」
などと俺の黒歴史を直球で公開するような点をズバズバという山。るせぇ分かって描ければ世話ないんだよ。
「あ、あの、もうそれ位にしたほうが〜……」
蒼が冷や汗垂らしながら山を止めるが、すでにマノファは撃沈されており、最早虫の息であった。自分の絵の欠点指摘されると、胸がキュンッてしちゃうの。いや、マジにマジにマジに。
とかやってる観察グループとは少々はなれたところで波羅蜜多活劇制作所の面々が頭を捻っていた。
「いや〜、流石戦争風景。真正面から撮ったところでこれか」
とは樹。みんなして眺めているそれは、映画でみるようなヒロイックなものではなかった。非常に単調に命のやり取りが行われており、このまま出したのではドン引き確定である。
「ふむ。後で別の戦闘シーンを撮って、編集入れてごまかすというのが一番の手ですかな?」
とは聖。
「いや〜、ここは張り切ってる奴をたきつけてヒロイックにやらせてみるってのはどうだ?」
とはずっとカメラを構えていたテオディス・ハルムート(ておでぃす・はるむーと)。
「それではたきつけられた本人が次の瞬間蜂の巣だ。それは許可できない」
が、あっさりとイレブンが却下する。
「なら、キャンティのスーパーパフォーマンスで画面の前のみんなを魅了……」
と、言うところまでキャンティが言うが、全員口をそろえて、
『黙れ3リO。訴えるぞ』
却下される。
「んだとわりゃぁ! 上等じゃけんのぅ、ここにいる全員のタマァとったらぁぁぁぁ!!!!!」
「落ち着いてマイ・ハニー!!」
暴れるキャンティ、うなる寸勁。今、樹の悲しみの拳が悪を討つ!
「おぐふ……」
「すまない、我が友よ……。しかし著作権とドラゴンを守るためには仕方がなかったのだ……! こんな事でしか事態を解決することの出来ない私を、どうか許しておくれ……!!」
くっさいこと述べながら滂沱のごとく涙を流す樹。こやつ中々演技派である。テオディスも「グッジョブッ!」等と抜かしながらカメラを回していた。
「いや〜、キャンティ様がエラいことになったのはともかくとして、問題はあっさりと解決いたしましたな」
シレっと言ってのける聖。まぁいいかと全員が納得したとき、またもやイレブンがあさっての方向を見る。
「何かが、くる……?」
「そあぁぁッ!!」
気合が森の奥を駆け抜け、ガートルードの蹴りが出る。
「チョイヤッサーッ!!」
負けじとマリアルイゼの拳打がこれを迎撃する。
「まったく、中々先へと通してもらえんな……。早く私はドラゴンというのを仕留めてみたいのだ……!」
蹴りを放った軸足を中心に大きく外へ体を回し、脇を狙った手刀を回転の遠心力に載せて放つ。
「ふん、道楽で生き物を殺すやつに通させる理はないな!」
重心を一気に下げ、肘を落とすように手刀迎撃。おまけとばかりに空いた右の掌底。
「お?!」
これを間一髪でかわすが、
「ッ!」
追撃の左回し蹴り。完全に体勢を崩され避ける事もかなわず、右腕を左腕で支えて無理矢理ガード。
「ぐぅッ!?」
骨と肉の軋む音が感覚でガートルードに響く。
「ふふ、折角会えたんだ。わしをちゃ〜んと見ておくれよ。身の入っていない拳打でやられるほど、わしは安くないぞ?」
「言ってくれる。なら、少々本気でいかせてもらうぞ?」
「僥倖。それでこそ闘争だ……!」
互いの視線と交差し、それに拳が追随しようとした瞬間、刀真が光条兵器引き抜いた状態で突っ込んでくる。
「援護します!」
「あなや」
「無粋ッ!」
が、それをさらにシルヴェスターが轟雷閃でもって撃墜。
「ぬぅ!?」
「親分、あっちはわしが引き受けたぁ! さっさと片つけてドラゴン狩りとしゃれ込むぞ!!」
「応ッ!」
「ふは! その意気やよし! しかしてままならんのが人生というのもじゃ!」
「ほざけよぉ!!」
互いの拳が、森全土に響かせるかのように轟音を持って激突する。
故に気が付かなかった。どこからともなく響いてくる地響きに。
「あぁ、そちらへはあまり行かないでください。竹槍に刺されますよ」
「おぉ、それは怖いねぇ……」
仕掛けた本人であるアリーセに注意を受けながらカガチが慎重なのか何なのかよく分からない、軽い足取りで森の奥を進んでゆく。
「うん、しかしものの見事に何もこないねぇ……。こりゃ、お兄さん貧乏くじ引いちゃったかな?」
「貧乏くじって……。何事もないのですから、むしろ当たりを引いたのでは?」
「いんや〜? なんぞの面白いことが起きると聞いたから来たのであって、事が起こらねば本末転倒なのよ、これが」
「はぁ、そういうものなのですか……?」
「ものなのよ〜ん」
が、そんな言葉に反応したか、ズズンと振動が起こった。
「え!? なに?!」
「あらら、こいつぁ大当たり引いちゃったね〜」
笑えるほどに巨大な影が、二人の視線に映った。
「…………。」
一人、少女が何がしかの音を聞いた。
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