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リアクション
第3章 たくさんいるうちのジャタ族一部族のこと
レベッカ・ウォレス(れべっか・うぉれす)とパートナーの剣の花嫁アリシア・スウィーニー(ありしあ・すうぃーにー)は、臨海学校で仲良くなったジャタ族を助けようと、ジャタ族の村に駆けつけた。
「ジャタ族の族長や皆は私の友達だヨ! 友達のピンチなら助けるのは当たり前だヨ! 頑張るヨ!」
「ジャタ族の皆さんにお会いするのは久しぶりです。楽しみですね。……でも、以前、ジャタの魔大樹なんて、ありましたっけ?」
「アレ?」
スパイクバイクでありえない爆走をして駆けつけたのは、アリシアの言葉通り、以前訪れたジャタ族の村とは違う村であった。
「ええっと、こまけぇことハ、気にスンナ、だヨ!」
「そうですね。同じパラ実でジャタ族ですし」
レベッカとアリシアは、パラ実らしい「おおらかな解釈」でもって、無数にあるうちの部族のひとつであるここのジャタ族ともとりあえず協力体制を築くことにした。
「へへへ、姉ちゃんたち、俺たちに味方するとは感心だなあ」
丈の短い白のタンクトップと、デニム地のマイクロミニホットパンツのレベッカと、犬耳カチューシャのアリシアは、ジャタ族の若者にデレデレ歓待された。
いろいろ勘違いしたガートルード・ハーレック(がーとるーど・はーれっく)は、パートナーの機晶姫シルヴェスター・ウィッカー(しるう゛ぇすたー・うぃっかー)とともに、ジャタ族をあおっていた。
「イルミンの大魔女が倒されました!! 緑髪の幼女の姿だが恐るべき力を持つ邪妖精ザンスカーが復活しました。目的は世界を滅ぼす事。最初の目標はジャタの森。止めようとしたイルミンスール最強の魔女アーデルハイトが腕の一振りで簡単に倒され、邪妖精の力によって、イルミン校長も動けない様です。イルミン校長からザンスカーの蛮行を止める様に生徒に指示が下ったと聞いています」
「もちろん邪妖精を倒せば世界の危機を救った勇者でイルミン校長から褒美が貰えるはずです!」
お金に目がないパラ実生が集まりやすい話にしようと、褒美の話を付け加えたガートルードだったが、邪妖精の話は本気で信じていた。
「世界の危機が迫っとるんじゃ。親分に協力してくれ。わしからも頼む」
シルヴェスターは、少女素体に、何故か広島弁で喋る陽気で派手好きな男性人格が宿った機晶姫である。
「先生! 頼りにしてます! 今こそ、世界の危機を救う勇者がジャタの地に集うときです!」
ガートルードの言葉に、ジャタ族から歓声が上がる。
一方、鷹野 栗(たかの・まろん)は、生物部の部長で、生物への愛は筋金入りであり、人と自然との関係について、いつもぐるぐると考えている、ドルイド学科所属のイルミンスール生である。
「ぐるぐるとかんがえよ」とは魂や五感で考えよ、という意味である。
そして、ぐるぐるとかんがえた結果、
「除草剤を撒くなんてだめぇーーー!!」
ということになった。
「お願いです、ジャタ族の皆さん、ざんすかさんには怪我をさせないでほしいのです!」
平和的にざんすかを追い払えれば、と考えていた栗だが、血の気の多いジャタ族は戦闘モードになってしまっている。
「わかったぜ! 怪我させないように『一撃で』ぶっ殺してやるぜ!」
「ち、ちがうのですー!!」
栗の叫び声がむなしく響きわたった。
十六夜 泡(いざよい・うたかた)は、
「ざんすかは『ジャタの魔大樹が瘴気を撒き散らしているから周辺は魔物が多い』と言っているが、それは本当なのだろうか?」
と思い、
「逆に魔大樹があるから、この程度に収まっているのではないか?」
と仮説を立てていた。
植物の光合成のような感じで、瘴気を吸収して清浄な空気を出していると考えたのである。
そして、ジャタの魔大樹が本当に悪いのか確認するため、ジャタ族に伝承を聞きに来ていた。
「うむ、おぬしの言うとおり、魔大樹様は昔から瘴気を吸収して、この地に瘴気が増えすぎないようにしてくださっているのじゃ」
「やはり、そうだったんだね」
ジャタ族の語り部の老人の言葉に、泡はうなずく。
「じゃあ、どうして、『魔物が増える』なんてことになったんだろう?」
「それは……」
語り部は意味ありげに沈黙する。
「ジャタ族族長!! 一対一の決闘を申し込む!!」
城定 英希(じょうじょう・えいき)の声で、泡と語り部の会話はかき消された。
「漢らしく、一対一の決闘で、勝った方の言うことを聞くルールだ! 俺はウィザードだが、魔法は使わない! ドラゴンアーツだけ使わせてもらう!」
「族長に決闘を申し込むだと! 命知らずなヤツだ!!」
ジャタ族たちにどよめきが走る。
「ガハハハハハハハハハハハハハハ!! 面白い!!」
地響きのような笑い声が、集落の奥から響いてきた。
「このジャタ族族長、グレートマシンガンが遊んでやろう、小僧!!」
出てきたのは、身長30メートルの巨漢であった。巨人といったほうがいいかもしれない。
「え? さ、さすがに予想してなかったんだけど!? ていうか、名前、グ、グレートマシンガン!?」
「どうした、まさかいまさら怖気づいたのではあるまいな!?」
「くっ、こ、こんなところで退けるかーっ!!」
英希は半ばヤケになり、グレートマシンガンに踊りかかる。
英希のパートナーのドラゴニュートジゼル・フォスター(じぜる・ふぉすたー)は、宣言する。
「いいか! 何人たりともこの決闘の邪魔をする者は許さんぞ!」
ジゼルの一喝に、ジャタ族たちは下がっていく。
もっとも、この状態でグレートマシンガンに好んで近づくジャタ族はいないであろうことは明らかだが。
「ガハハハハハ!! 踏み潰してくれるわ!!」
「うるさい! 悪ぶってねぇで少しは協力しやがれ! このわからず屋がぁ!!」
英希は、グレートマシンガンの足に拳を叩き込むも、さすがに大きさが違いすぎる。
「どうした、蚊に刺されたようにも感じんぞ!?」
「くっ!!」
巨体悪役のお決まりの台詞を吐いて、グレートマシンガンは、英希をつまみあげると、地面に叩きつけた。
「うっ……」
「ガハハハハ!! このグレートマシンガン様に逆らうものには死あるのみ!!」
地面に横たわる英希を踏み潰そうと、グレートマシンガンが足を上げたところ、ジャタ族が割って入る。
「戦いはそこまでだ、族長!!」
「もう、勝負はついています、グレートマシンガン様!!」
ジゼルも、慌てて英希をかばい、後退させる。
「チッ……。体の小さい奴ららしく細かいことを気にしおって。命拾いしたな!!」
グレートマシンガンは、再び地響きを立てて歩み去った。
「おまえたち、英希をかばってくれたこと、礼を言うぞ!」
「あの族長に一対一で決闘を挑んだ勇者だ! 当然のことだぜ!」
ジゼルは、この部族の一般人にはわりといい奴もいるのだということに気づいたのだった。
一方、ナナ・ノルデン(なな・のるでん)、とパートナーの魔女ズィーベン・ズューデン(ずぃーべん・ずゅーでん)は、山吹色のお菓子、通称「カシオリ」を用意して、族長に謁見していた。
「えーと、えーと、グレートマシンガンさん、おっきいですね?」
「ナナ、混乱する気持ちはわかるけど、本題に入ろうよ」
「そ、そうでした。どうして今回、ジャタの森とザンスカールの森の精霊が抗争することになってしまったんですか?」
「ガハハハハ。このグレートマシンガン様が、ジャタの魔大樹に瘴気を集め始めたことが、ザンスカールの小娘は気にいらんらしいな! もっとも、俺の計画に気づいているやつがいるとも思えんが!!」
「カシオリ」をもらって上機嫌のグレートマシンガンは、ベラベラとしゃべる。
「えっ、グレートマシンガンさんが、瘴気を集めているんですか?」
「そのとおりだ。ジャタの魔大樹には瘴気を吸収して空気を清浄化する力があるが、俺はもっと効率的に瘴気を貯める方法を手に入れたのだ。鏖殺寺院の奴が教えてくれたのでな! そして手に入れたのがこの巨体よ! このまま瘴気を集め続ければ、俺はドージェを超えることすらできるだろう!!」
ナナとズィーベンはそっくりな顔を見合わせた。
「じゃあ、ジャタの森の精霊はどうしてるんですか?」
「さあな。俺はもはや精霊の力など借りずとも、ジャタの魔大樹で世界を征服してやるぞ!!」
予想外の展開に、ナナは戦慄し、ズィーベンは面白くなってきた、と思っていた。
そのころ、ジャタ族の集落の広場では、朱 黎明(しゅ・れいめい)が、ジャタ族を相手に演説を行っていた。
「諸君 私はパラ実が好きだ。
諸君 私はパラ実が大好きだ。
モヒカンが好きだ。
リーゼントが好きだ。
コンビニが好きだ。
ゲーセンが好きだ。
ファミレスが好きだ。
バイク屋が好きだ。
100円ショップが好きだ。
ドージェ様が好きだ。
キマクで。
ツァンダで。
ザンスカールで。
ヴァイシャリーで。
タシガンで。
このパラミタにいる全てのパラ実生徒が大好きだ。
バイクをならべたパラ実の一斉発進が轟音と共に大地を吹き飛ばすのが好きだ。
空中高く舞い上がった砂煙が排ガスでばらばらになった時など心がおどる。
波羅蜜多タイタンズの操る魔球が敵チームを撃破するのが好きだ。
悲鳴を上げて燃えさかる球場から飛び出してきた敵チームを、
釘バットでなぎ倒した時など胸がすくような気持ちだった。
しかし今イルミンは我らの愛すべき土地を蝕もうとしている。
諸君 私は戦争を地獄の様な戦争を望んでいる。
君達は一体何を望んでいる?
更なる戦争を望むか?
情け容赦のない糞の様な戦争を望むか?
鉄風雷火の限りを尽くし三千世界の鴉を殺す嵐の様な闘争を望むか?」
ここまで話し、黎明は「戦争!! 戦争!! 戦争!!」と書かれた紙をジャタ族に見せ、
「叫んでくださいお願いします!」と頼み込んだ。
「おい、そんな難しい漢字わかんねえよ!!」
「ひらがなで書けよ!!」
ジャタ族から野次が飛ぶ。
「あ、そ、ソウデスね」
黎明は紙に、「せんそう!! せんそう!! せんそう!!」とルビを振った。
「「「「「「「「「「戦争!! 戦争!! 戦争!!」」」」」」」」」」
ジャタ族から叫びがあがる。
「よろしい。ならば戦争だ」