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リアクション
第6章 料理は愛情の味が決め手
「私たちは味噌味のきんぴらでも作りましょうか」
ゴボウや人参の泥を洗い流し、ナナ・ノルデン(なな・のるでん)は洗った野菜の皮を剥く。
エリザベートは食べる専門なのか、料理を手伝わずに校長室で待機している。
「野菜を切るのは簡単だよね」
ズィーベン・ズューデン(ずぃーべん・ずゅーでん)が横から余計なことを言う。
「料理は心です!心を込めて作れば美味しくなるんですよ」
食べやすい大きさに包丁で切っていく。
「塩と砂糖を間違ったりすると大変なことになるよね」
「―・・・使う前にひと摘まみ味をみてください」
「(重曹と間違ったらもっと悲惨なことになるんだよね)」
「分量はこれくらいでしょうか」
「たぶんね」
調味料を加えて、ナナが不安な味付けしていく。
「向こうは大丈夫なのか?」
適当な分量で調味料を加えていくナナたちを、近くで料理していたケイが不安そうな目で見る。
「見た目も大事だけど、やっぱり料理は味だよな」
「野菜の皮剥き終わったのだよ」
「あぁ、ありがとう。後はこれを煮込むだけだな」
水と野菜を鍋に入れて焦げ茶色になるまで煮込み、十全大補湯を使った薬膳スープを作る。
「―・・・よし出来た。星次郎、食べてみてくれないか」
ケイは器によそってやり、星次郎に手渡す。
「―・・・うん・・・美味いな!」
「そうか・・・よかった」
アーデルハイトたちの分を器によそい、カフェテラスへ持って行く準備をする。
「体に良くって食べられればなんでもいいわよね」
「どういう料理を作るのでございますか?」
アリシア・ミスティフォッグ(ありしあ・みすてぃふぉっぐ)の怪しげな雰囲気を察知した小鳥遊 律(たかなし・りつ)が恐る恐る訊く
「早く材料をとってきなさい」
「うぅ・・・はい」
言われるままにカゴから食材を取り、アリシアに手渡す。
「いい?こういうのは見た目より味なのよ。いあーいあーはすたぁーはすたぁ〜♪」
妖しげな歌を口ずさみながら、何かの儀式のように鍋をかき回す。
「よしよし、いー感じにできたわねぇ。律・・・あんたちょっとコレ味見してみなさい」
「え・・・あ・・・味見でございますか?・・・・・・うう・・・・・・。アリシア様・・・申し訳ありませんが・・・・・・不味いどころではありませ・・・・・・げふっ」
お玉ですくって味見してみるとヘドロのような酷い味がし、アリシアは白目をむいて床に倒れこむ。
「・・・・・・ふぅ、あー料理楽しかった。十分満喫したしそろそろ帰ろうかしら♪」
鍋を片付けて終わると床に倒れて失神している律の姿が目に映り、彼女を抱えて逃げるように家庭科室から出て行った。
「食材が百合園の学園の方にも届けられていると思っていたのですが・・・。生徒さんたちがイルミンの方で料理しているようですからここに来てしまいました」
百合園の制服を着た小牧 桜(こまき・さくら)は、ラズィーヤのためにワインゼリーとアイスクリームを作ろうとしていた。
「えっと鍋は・・・これを使いましょう」
コンロの上に鍋を置くと、ワインがないか探す。
「―・・・ここにあるのはコルクが抜いてあるやつだけですわね」
瓶の空いているワインを冷蔵庫から取り、桜はワインゼリーを金型に流して冷蔵庫の中に入れた。
「次はお洒落なアイスを作りましょう」
植物性ゼリーを水に溶かし、さらにコンロの火にかけて沸騰させて溶かした。
ナイアガラのアイスワインを混ぜてワイングラスに注ぎ冷凍庫の中で冷やす。
冷やしている間に、葉月たちが採ってきたベリーを砂糖煮して、裏ごししてソースを作る。
「ゼリーとアイスが冷えるまで、しばらく待っていましょうか・・・」
桜は椅子の上に座って、デザートが冷え固まるのを待ことにした。
「今回はちょっと仁科が暴走するから、先生ちょっと手伝ってくれない?」
佐々木 弥十郎(ささき・やじゅうろう)が、近くで人参の皮を剥いている真名美・西園寺(まなみ・さいおんじ)に声をかける。
「えっ、うんいいよ」
仁科 響(にしな・ひびき)の茶碗蒸し作りを手伝ってやる。
「後は器に入れて後蒸すだけだから1人で出来るよね?」
「はい出来ます!」
元気のいい返事を聞き、西園寺はキャロットケーキ作りに戻った。
鍋で薬膳ミルク粥をコンロの火にかけている間、弥十郎は薔薇の香りのするお酒とドクダミを加えた、パウンドケーキ型のローズケーキを作っていた。
「あとはオーブンで焼くだけだね。さて、仁科の方は大丈夫かな」
響が途中で暴走していないか心配し、出来栄えをチェックしに行く。
茶碗蒸に柚子の皮を追加したまではよかったが、唐辛子の粉やシナモンパウダーまで加えていた。
「あっ!蒸しあがりましたよ」
「それじゃあ味見しようかな。―・・・うっうぅぅ・・・。何を入れたんだよ!」
器に入れて後蒸すだけの茶碗蒸しに余計な手を加え、辛くて異様な風味になってしまっていた。
眉を吊り上げて響を叱りつける。
「柚子の皮の他に唐辛子の粉やシナモンパウダーとか・・・」
「どうしたの?」
キャロットケーキをオーブンに入れ終わった西園寺が、何事かと仁科たちの所に駆け寄る。
「もっと美味しくしようと他の材料もいれてみたんです」
「茶碗蒸しにシナモンなんて合わないよ」
「面白い味になると思ったんですけど・・・」
「薬草は魔法と一緒でね。組み合わせで危ないものもあるんだよ。食べ合わせで栄養摂取の効率が悪くなるのもあるからね」
「そうだったんですか・・・。でもどうやって作り直したら・・・」
「一緒に作るから大丈夫だよ」
手早く作り直してやり、蒸し器に茶碗蒸しを入れて蒸し始めた。
アーデルハイトたちの病を治すのに使った余った魔法草を使い、エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)はマンドラゴラのチョコムースを作り、オレンジソースをかけていた。
「よし・・・クルミ乗せて完成と。油を使う料理があまりなかったから、お嬢さん方に怪我もないようだな」
料理を作っていたエースを他所に、クマラ カールッティケーヤ(くまら・かーるってぃけーや)とカルキノスが、余った佐々木たちの料理を食べていた。
「うーん・・・飾り付けにカタクリとハス・・・ユリの花を使おうか」
エースは料理に、きれいに飾りつけをする。
「これで完璧だな」
出来栄えの良さに、フッと笑う。
弥十郎は家庭科室を覗く水神 樹(みなかみ・いつき)の姿を見つけ、皿に乗せた焼きたてのローズケーキを両手に抱えて駆け寄る。
「さっき作ってみたんだけど・・・良かったら食べてみてくれるかな」
「いいんですか?」
椅子に座り水神は、切り分けられたケーキを口の中に入れる。
「どう・・・・・・かな」
「―・・・口の中で薔薇の香が広がって美味しいですよ」
「そうか・・・よかった♪」
弥十郎もケーキを食べる。
「ありがとう、ごちそうさま。ちょっと行かなきゃいけない所があるから私はこれで失礼しますね」
「あぁうん。行ってらっしゃい」
家庭科室を出て行く水神に、弥十郎は片手を振った。
「味は・・・大丈夫そうね。こんな感じかな・・・」
慣れない手つきで、歌菜は一生懸命に料理を作っていた。
「―・・・一応味見したけど大丈夫かな。王子・・・味はどう?」
パラミタ人参やニンニク、ナツメなどを使ったサムゲタンと芝麻布丁を、リヒャルト・ラムゼー(りひゃると・らむぜー)に味見してもらう。
「うん、凄く美味しい。とても美味しく出来てるよ歌菜ちゃん」
「本当に・・・?」
リヒャルトにもう一度聞くと、彼はコクリと頷いた。
「わぁいやったー♪」
歌菜はお玉を握ったまま、嬉しそうに笑う。
「それじゃあ、お皿に盛りつけようかな」
食器棚から丁度いい大きさの皿を取り、お玉ですくったサムゲタンを注ぎ、小皿に芝麻布丁を形が崩れないようにそっと盛りつけた。
「セトさんと音子さんたちが獲ってきてくれた魚を使って、お吸い物とお刺身を作りましょう」
石鯛のウロコを包丁で落とし、魚を食べやすい大きさに手馴れた手つきで切っていく。
「えっと次は・・・ダシをつくらなければいけませんね。静香様それを鍋に入れてください」
「これくらいかな」
「それくらいですね。そして丁度いい温度になったら魚をいれましょうか。―・・・そろそろ味見してみないと・・・」
お玉で少しすくい味見をする。
「―・・・上手く出来たようですね。余った石鯛とフグをお刺身にしちゃいましょう」
魚を刺身用に切り分け、きれいに皿に盛る。
「さて・・・味を調えて完成だな」
本郷 涼介(ほんごう・りょうすけ)はサムゲタン風スープを、塩コショウで味を調える。
「ふむ・・・これくらいでいいかな」
ゴマとクコの実を、パラパラと散らして器に盛る。
「ちょっと難しかったけど、なんとかできたかな?」
間違えないようにレシピを見ながら、クレア・ワイズマン(くれあ・わいずまん)はフルーツを沢山使い、レモンシロップをかけた杏仁豆腐を完成させた。
「これなら食べやすいよね♪」
病み上がりの人でも食べやすい風味に仕上げた。
ベア・ヘルロット(べあ・へるろっと)が豪華な料理が出来上がる時間帯に、家庭科室にやってきた。
空腹のあまり石ころが飴に見えてしまうほど、極限の空腹状態だった。
料理を作っている生徒たちの目を盗み、全て食べつくして逃げようと狙っている。
「(やっぱり来たわね・・・)」
ジュリエットたちが採ってきたサルノコシカケでリゾットを作っていたマナ・ファクトリ(まな・ふぁくとり)は、仕上げをしている料理を狙っているベアの気配を察知する。
刺身が盛られた皿にベアが手を伸ばそうとした瞬間、マナは黄緑のショートソードの形状をした光条兵器を、彼の頭上スレスレに投げつけた。
「皆がせっかく作った料理に何しようとしていたの?」
「ちょっと味見を・・・」
「どーせ全部食べようとでも思っていたんでしょ!」
「―・・・なぁ少しだけならいいだろ?」
「駄目よ!」
出口を指差して、犬にハウス!という雰囲気で言う。
「腹が減ってしょうがないんだよ」
「そこをなんとか・・・」
「夕飯まで我慢するのよ!」
「なっ何ぃい!昼飯も食べてないのにか!?」
赤色の双眸で叱りつけるマナに、ベアは抗議するように言う。
マナは首を左右に振って、頑として却下した。
犬のようにベアはしょんぼりした顔をする。
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