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リアクション
◆ ピアス捜索:午後四時 ◆
「さぁ、話してもらおうか」
 ケイがピアスに詰めよった。
「回避方法! 回避方法を教えてください! 早く!!」
 陽太が涙まじりの声で訴える。
「……かいひほう?」
「あのごわいばなじの! どうやっだらあのがんぎんされだ男の子が来なくだるの!?」
 カーチェはもう、あっぷあっぷ状態だ。
「…………」
「も、もうごわぐでごわぐで……」
「……時間が無いから早く教えてよぉ」
 北都がのんびりした口調で言う。
 その横からルカルカが顔を出して。
「亡くなられたというご友人さんの話って嘘なのでしょ?」
「……えっと」
「早く!」
「えっと……」
「早く!!」
「あの……めちゃくちゃ言いにくいんだけど……」
「?」
「信じたの?」
「──……え?」
「あの話、信じちゃった?」
「は?」
「あれ──、…実はあたしが作ったんだ〜!」
「!!!!!????」
「ほら、あれじゃん。小道具が使えなくなっちゃって、どうしようかと思ってさ。他に良い題材も見当たらなくて、それならいっそ作っちゃえ〜って思って」
「…………」
「即興で考えたわりには、かなり良かったんじゃないの〜?」
「……」
「というわけで、……って、あれ? 顔色悪いよ?」
 冗談? 作り話??
 エリシアは、殴りたい衝動を必死に我慢する。
 今、この場に誰もいなければ、完全犯罪をやりとげる自身があった。
 まずはピアスの首をしめて……
「……ふふ、ふふふ…」
 葉月の口からひたすら笑みがこぼれる。もう笑うしかない。
 笑うことしかできない。
「は……葉月? 落ちつかなきゃ駄目だよ? 切れちゃ駄目だからね」
 ミーナがこっそり囁き、冷静になれと真剣な眼差しを葉月に送る。
「あれぇ? いや〜怖がらせちゃった? でも夜話会ってことでは大成功だよね……ふふっ」
 みんなのピアスを見る目が、すわってきている。
 危険を察してか、ピアスは慌てふためいた。
「や、やだなぁ。そんな目で見ないでよ、怖い話なんてたんなる作りもんだろ? ──うわっ!?」
 いきなり。
 ちあきがピアスのスカートをガバッとめくった。下着が一瞬、見えた…気がした。
「な……!」
「ほ、ほ、ほ、ほ、報復だもん!」
「…くっ……」
 ピアスは何か言い返そうと思ったが。
 まだ皆の目は死んでいない。
 これ以上、ここにいたら身ぐるみをはがされてしまうかもしれない……!?
「じゃ、じゃやね! あたしのパンツ見たんだから、これでいいでしょ? みんなによろしく言っといて〜!」
 逃げるようにピアスは去っていった。
 呆然と立ち尽くす面々。
「……なんだか、疲れました」
「うん、疲れたね……」
 葉月とミーナが、深い溜息をついた。
「どうする? みんなに言いに行く?」
「……なんだか疲れちゃったよ」
「そうだね」
「帰ろうか……」
「うん、疲れた……」
 皆はぐったりした身体を引きずり、特殊講堂へは向かわず、各々のいるべき場所へと戻っていく。
「──大体、講堂の生徒は、落ち着けと思うぞ。騒ぎすぎだ。幽霊なんか出ねぇよ」
 淵は冷静な口調で吐き捨てる。
「まぁな、俺もそう思う」
 ダリルも苦笑しながら賛同した。
「あれが真相か……」
 カナタは小さく笑った。
 その様子を見て、ケイが口を尖らす。
「笑い事じゃないぜ! ……ったく」
 口では文句を言うが、ケイの表情には、笑顔が戻っていた。
 ピアスを探した面々の表情には、精神的な疲れは見えていたが、なんだか、とてもさっぱりした顔つきになっていた。
 特殊講堂で恐怖に震えていた人達が真実を知るのは、翌日のこととなる──
  ◆ 
「これで、良かったんだよね……」
 誰かが囁いている。
「ああ言わなきゃ、みんなずっと怖い思いをしちゃうだろうし……」
 小さな吐息。
「あたし自身、本当かどうかも分からない。だけど──」
 ちょっとだけ脚色した。
 その箇所がどこかは、今となっては、もうどうでも良い事だけれど。
「これで本当に終わったんだ、怪談夜話──」
 安堵の溜息をついて誰かは部屋の電気を消す。
 暗くなった部屋には、月明かりが、静かに差し込んでいた。
 
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担当マスターより
▼担当マスター
雪野
▼マスターコメント
今回こちらのシナリオを担当致しました雪野です。
夜話会にご参加下さいまして、ありがとうございました。
無事終わることが出来て、私自身、とても嬉しいです。
ご参加、ありがとうございました。