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リアクション
■□■3■□■
そんな中、エル・ウィンド(える・うぃんど)が金色のタキシードを身にまとい、いきなりアーデルハイトにひざまずいて手をとり、手の甲に接吻する。
「アーデルハイト様、ボクと結婚してください!」
「な、なんじゃとおおおおお!? ば、馬鹿なことを言うな!」
「ボクは本気です! ボクと結婚すれば、アーデルハイト・ワルプルギス様ではなく、アーデルハイト・ウィンド様になります。つまり、シナリオタイトルに偽りあり! となって、殺されることはなくなるのです!」
「そ、そんなことが本当にあるのか? しかし……」
「お互い本気で結婚するわけじゃありません。このシナリオの間だけです! けっしてハレンチなことではありません!」
「そうか? ならば……」
エルは、アーデルハイトにプロポーズを承諾させた。
金色のタキシードのエルと、黒いウェディングドレスに身をつつんだアーデルハイトが、二人並んで歩く。
「えーと、では、新郎新婦は指輪の交換をしてくれよな!」
年齢的にはセバスチャンが適任っぽかったが、重要参考人のため、ジャックが宣言する。
「本当にこんなんで大丈夫なんじゃろうな……」
「大丈夫です!」
力強く宣言し、エルはアーデルハイトと指輪の交換をする。
結婚式の様子を、四方天 唯乃(しほうてん・ゆいの)がパートナーの機晶姫フィア・ケレブノア(ふぃあ・けれぶのあ)とともに見守る。
フィアは、家庭用ビデオカメラで、撮影を行っていた。
唯乃はただひたすら、アーデルハイトの観察につとめていた。
「ウィンドさん、おめでとう!」
「ありがとう。知り合いに祝福してもらえてうれしいよ!」
唯乃にエルが笑顔で答える。
「実はずっとアーデルハイトさんのことを観察していたのよね。今までのシーンには登場していないとみせかけて、物陰からずっと見守っていたのよ」
「私も唯乃も、小柄なのが幸いして騒動に巻き込まれずにすみましたね」
「フィア……。べ、べつに私、校長より背が低いことを気にしてなんかないわよ?」
「『つんでれ』ですか?」
「どこでそんな言葉を覚えてくるのよ……」
唯乃とフィアがカメラを回しながらそんなやりとりをする中、結婚式は着々と進行する。
「死が二人を分かつまで」
誓いの言葉の最後の締めくくりが宣言される。
「あ、『ふらぐ』ですね」
「だからいったいどこでそんな言葉を?」
そして、エルとアーデルハイトは誓いのキスをしようとする。
直後、エルの腕の中に、アーデルハイトががっくりと倒れていく。
「あ、あ、あ、あ、あ、アーデルハイトさああああああああああああああああん!!」
エルが絶叫し、号泣する。
殺されたアーデルハイトの唇にキスすると、エルは宣言する。
「必ず、必ず敵をとってみせる!」
言うなり、エルはジャックをがくがく揺さぶる。
「犯人はどこにいった! なぜ殺したんだ!」
「ええ? 俺!?」
もはや男性は全員犯人扱いであった。
エルの中で「アーデルハイト(自称)花嫁殺人事件」が開幕しているのであった。
そこに、空からキラキラ光る人物がまたしても登場した。
「イルミンスールのお星様☆」の称号を持つ、立川 るる(たちかわ・るる)であった。
「我らがイルミンスールで物騒な事件! ここは「イルミンスールのお星様☆」るるが犯人をバッチリ照らし出してあげないと。あれ? でも、お星様……星……ほし……ホシ。ホシ!? 違うよっ、るるは犯人(ホシ)なんかじゃないよっ。ここはホンモノの犯人を挙げて、無実を証明しなくっちゃ」
そのような思考に至り、ホシをあげるため、るるはキラキラピカピカ光ってたり、称号に「星」が入る人を探していたのである。
「あなたが犯人だねっ。言い訳なんか聞かないよ! ザンスカールに除草剤を撒こうとして、超ババ先生にぶっ飛ばされたおかげで、パートナーともどもお星様になれたるるだけど、なんだか今回、ぶっ飛ばされる人が多すぎて、お星様のインフレが発生してるし! 『座布団一枚』的に「お星様権」が配布されちゃってるじゃない! どうしてくれるの! るるとしては、うれしいけど複雑な気持ちだよっ」
るるは、金色のタキシードのエルに思いっきり言いがかりで雷術を放つ。
「くっ、女性に手を上げるのは不本意だが、自らホシを名乗って襲い掛かってくるのだからしかたがない! ボクのアーデルハイトさんを返せーっ!!」
逆上したエルがライトブレードを振るう。
「えっ? 犯人じゃない? ……えへへっ、ごめーん。って、やーん! るるが悪かったよぉー」
るるがぶっ飛ばされる様子も、唯乃とフィアが空を撮影してばっちり記録していた。
「お星様がまた一つ増えたわね」
「増えましたね」
「結局、殺されてしまったじゃないかー! あと、どさくさにまぎれて私の身体に何してるんじゃ!」
「ああ、アーデルハイトさん、戻ってきてくれたんだねぐごはあああああっ」
エルは、復活したアーデルハイトにやはりぶっ飛ばされた。
「お星様がもう一つ増えたわね」
「増えましたね」
そんな惨状を目の当たりにし、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)がジャックに近づいていく。
「おお、美羽! こうなったら全部燃やそうぜ……ごふっ!?」
「証拠はつかんでるのよジャック!」
ミニスカから伸びた脚線美キックが、ジャックの顔面に炸裂する。
「な、なんで俺が飛び蹴りを受け……ぐはっ!?」
(真犯人が使った凶器はどうやら至近距離から発砲できる銃器みたいね。火術限定魔法バカのジャックには、そんなものを扱う技術も頭もないと思うわ。つまり、こうしてジャックを犯人として仕立て上げることで!!)
「『ジャックは無実じゃないか』と主張する人は正直者、便乗してジャックに罪をなすりつけようとする人は容疑者になるはずよ。つまり、ジャックは究極の嘘発見器として機能するのよ!」
シルバ・フォード(しるば・ふぉーど)は、ジャックの手伝いをしようと一緒にいたのだが。
「そうなのか? じゃあ、俺も一緒に手伝うぜ! これだってジャックの手伝いだよな! きっと犯人を捕まえてやる! 熱く燃え上がろうぜー! ファイヤー!」
シルバも、キックを連発する美羽とともに、ジャックをボコボコにするのに参加した。
シルバのパートナーの剣の花嫁雨宮 夏希(あまみや・なつき)は、お散歩気分でついてきていたのだが、突然のことに呆然とする。
「いいんでしょうか……」
「夏希も参加しようぜ! これもジャックのためなんだ! ファイヤー!」
「わかりました。……ふぁいやー」
夏希が、光条兵器の和傘で、ジャックをポカポカ殴る。
「声が小さいぜ!
ファイヤー!!」
「ふぁいやー!」
しかし、その間にも、真犯人の発砲でアーデルハイトは殺された。
「わかったわ!」
「何がだ!?」
ボコボコにされたジャックの横で美羽が、シルバに言う。
「今、姿が見えている人は誰も便乗しなかった……つまり、少なくともこの結婚式場の正式な出席者には犯人はいないってことよ!」
「おお、そうか! さすがだな!」
「……やっぱりどうかと思います」
夏希が我に返ってぼそっとつぶやく。
「お、俺、今回これで出番おわりなの……?」
がくっと力尽きたジャックを唯乃とフィアが撮影する。
「大丈夫。あなたの姿も事件の記録として保存しておくわ!」
「思い出は永遠です」
とりあえず、唯乃は常備している包帯でジャックをグルグル巻きにしてみた。
レオナーズ・アーズナック(れおなーず・あーずなっく)がやってきて、アーデルハイトに護衛を買って出る。
「俺がいついかなるときも一緒です! 安心してください! というわけで、できるだけ密着しましょう!」
「な、何をいっとるのじゃ?」
レオナーズは、アーデルハイトと二人羽織して抱きしめようとする。
「お風呂とかも一緒に入っちゃったりしてキャー!!」
「入るかー!! こ、こらー!!」
もみあうアーデルハイトとレオナーズだが、その様子をレオナーズのパートナーの魔女アーミス・マーセルク(あーみす・まーせるく)が、見咎める。
「レオナったらアホな行動しようとして! 魔法でもなんでも使って止めなくっちゃ!」
しかし、同じくレオナーズのパートナーの吸血鬼ウトナピシュティム・フランツェル(うとなぴしゅてぃむ・ふらんつぇる)が、アーミスを止める。
「まあまあ、この方が面白そうじゃん? 二人羽織させちゃおうぜ」
「ちょ、ちょっと、放しなさいよウトナ!」
その隙に、レオナーズはアーデルハイトとの二人羽織を成功させた。
「これで合法的に抱きしめられるよ」
「合法的って……」
レオナーズの言葉に、アーデルハイトが脱力する。
そこに、城定 英希(じょうじょう・えいき)が釣竿を持って、空飛ぶ箒に乗ってやってきた。
(なんだか面白そうなゲームが始まってるじゃないか! 至近距離で撃たれて死ぬ……ってことは動き回ってれば打たれないんじゃ? ……俺、アーデルハイト先生を守りきったら、沢山いる先生の内の一人を分けて下さいって頼んでみるんだ……)
謎のフラグを立てつつ、英希はアーデルハイトを釣竿に引っ掛ける。
二人羽織のレオナーズも一緒に釣れてしまったが、気にしない。
「わー! また釣竿に!?」
「ちょ、ちょっと、何するんだよ!?」
「女性に軽々しくさわるのは紳士のすることじゃないからね。というわけで、『紳士的な方法』として、釣竿でひっかけて空飛ぶ箒で学校中を飛び回る作戦だよ」
「こらー、紳士的かどうかはさておくとしても、なんで空飛ぶ箒に乗ってる必要があるんじゃ!」
「俺、これがねんがんの箒に初めて乗る機会なんです、堪えて下さい」
いい笑顔で、英希が答える。
「それ、行けー!」
「ぎゃああああああ!?」
「うわー、アーデルハイト様が落ちないようにしっかり抱きしめなきゃ!」
飛行開始する英希に、アーデルハイトが悲鳴を上げ、レオナーズがうれしそうにする。
「ちょっと、レオナーっ!?」
「面白くなってきたぜー」
アーミスとウトナも、慌てて後を追いかける。
一方そのころ、校内の一室では、神名 祐太(かみな・ゆうた)が、学生達を集めていた。
「さあ、賭けた賭けた! 犯人は誰か。ざんすかかもしれないし、セバスチャンかもしれない、もしかしたら生徒の誰かやもしれない。はたまた他校の人間かもしれない。 犯人は誰だ!? それから、いつも『こんなこともあろうかと』で復活するアーデルハイトがどれだけ、そしてどんな風に復活してくるのか!? 当てたやつが賞金ゲットだ!」
祐太は、トトカルチョの小賭博場を、校長や教職員に見つかりにくい場所で開催していたのだ。
学生達は盛り上がり、祐太の作ったチケットを購入する。
「ふふふふふふふ。これで大儲けだぜ!!」
お金が大好きな祐太が、札束を握りしめて数えながらにやにやする。
幼いころから貧乏で苦労してきたため、お金に関わることの行動力と頭の回転はすさまじい祐太であった。
そこに、方向音痴な英希が、アーデルハイトとレオナーズを吊るしたまま、部屋に突っ込んできた。
「私のことで賭け事とは、ふざけるなお前らー! 許さん!」
アーデルハイトが魔法をぶっ放す。
「ぎゃああああああああああ!? 俺の金が!?」
部屋はまとめてぶっ飛ばされ、お金もすべて灰になる。
「お、俺の金が……一瞬で……」
ぶっ倒れた祐太は、黒焦げのお札を握りしめて気絶した。
「あれー、なんだったんだ今のは。でも、こうしてずっと移動し続けていれば狙撃されることもないはず!」
「ああっ!? アーデルハイト様!?」
英希が宣言したとたん、レオナーズが悲鳴を上げる。
アーデルハイトはまたしても狙撃されて死んでしまったのだ。
「あっ。……うーん残念。まぁ死んじゃったものは仕方ないよねー。という訳で検死しようかな」
一瞬驚いた英希だったが、すぐにアーデルハイトの死体を下ろしてあさろうとする。
「ペロッ……これは、アーデルハイト様の……!?」
「な、なんてハレンチな!」
服をめくる英希に、レオナーズが息を飲む。
「ばっかもーん!!」
復活して走ってきたアーデルハイトが、英希とレオナーズをぶっ飛ばす。
「やっと追いついた! いいかげんにしなさいよ!」
「うわあ、アーミス、いたいいたい!」
「どうして俺様まで殴られるんだ!?」
「ウトナも同罪でしょ!!」
アーミスは、レオナーズとウトナをボコるのであった。
その様子を、一部始終、唯乃が観察し、フィアがビデオカメラに記録するのであった。
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