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黒羊郷探訪(第1回/全3回)

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黒羊郷探訪(第1回/全3回)

リアクション

 翌朝、どんよりした表情でまた歩き始めた騎凛ら一行。
「ね、眠い……」
 しばらく歩くと、上りに差しかかった。先は、山道になっているらしい。
 一同はまた馬車を止め、そこで一休憩入れることにする。
 森は開けて、陽が高く昇っているのが見える。もうすぐ、正午になるくらいだろうか。
 ルイスとサクラが申し出て、馬で近辺を探りに行った。
「悪そうなやつらがやって来たら、わてが追い返したるであります」
 マリーはモヒカンを装備した。
「ヒャッハァー」
「マ、マリちゃん……」
「一度言ってみたかったであります何度でも言うたるでありますひゃっはーひゃっはーひゃっは、は!」
 モヒカンに誘われて、モンスターが出現した。
「グルル……」
「ガァァァ」
「パラ実ではなさそうでありますな」
 マリーはカタールを抜き手に装着する。
 一行を取り囲む、醜い鼻に肩幅の大きな猿人の類。手は二又に分かれ鉤爪状になっている。
「さすが異郷。キャラクエにも出てこないような魔物がいるな。……お手並み拝見だぜ」
 大鎌を手にとる朝霧
「騎凛先生の背中は、自分がお守りします」
 ナギナタを持つ騎凛と背中合わせに、ランスをかまえるのはユウ、だが、
「ルゥという婚約者がいながら……」
 涙目でユウを見つめるルゥ。「背中を護る」……「背の君」と勘違いしているのだ。それは、
「ユウの背中を護るのはボクなんだよ!」
 木刀を敵に向けたまま、騎凛に訴える三厳も同じ。
「ユウ!」「あっ。ずるい!」
 ルゥが、ユウの腕に飛びつく。
 すかさず、鉤爪を振りかぶり、ユウに襲いかかる猿人達。
 ひゅんっ。
 抜刀するルゥ。千切れた鉤爪が空に舞う。
 三厳も、鋭い攻撃を木刀で受け流すと、一太刀。すぐに姿勢を正す。この構え……柳生新陰流!
「ハァァァァ!!」
「ライゼ、大丈夫か!?」
 敵を切り倒す、マリー、朝霧。騎凛のナギナタが円を描く。
 後衛のカナリーライゼを盾でかばいつつ、ランスを繰り出すユウ。
「四、五、六、……」ナギナタに突き刺さった猿人の首を数える騎凛。
「逃がすか!」
 朝霧の大鎌が飛び、森へ逃げようとした敵の背に突き立つ。
「ぬっ。もう一匹逃げるであります!」
「……はっ」
 木立の中から、戻って来たルイス
「騎士ルイス! そやつを討ち取るであります!」
「……わかっていますよ……!」
 ルイスの一突き。敵はその場に倒れる。
「これで、討ち漏らしはありませんね?」

「えっ、えっ、ルゥさん? どうしました? 三厳さん?」
 尚、ユウの腕にしっかりしがみついたまま、騎凛を威嚇するルゥ(もはや動物か)。
 三厳も涙目だ。
「……ともかく、」
 と、ルイスが言う。
「どうでしたか? ルイスさん」
「ええ。ありましたよ。あちらに、村が……」
 一同は顔を見合わせ、ほっとした表情。
「さすがに僕だと装備が物騒に過ぎるので、まずはサクラに村へ入ってもらいましたが……」
 サクラによると、村人達は丁重に迎え入れてくれ、こちらを警戒する様子もなかった。
 ここから山を越える旅人達が訪れることがあるようで、宿や道具を揃えるお店もある。
「はい。是非立ち寄っては、とおっしゃっていましたよ。
 騎凛教官?」
「ありがとうございます、サクラさん。ルイスさん」
「はい、それに、ちゃんと黒羊郷のことも聞いてきました。
 この山道から、黒羊郷へ至る道があるそうです」
 サクラは微笑んだ。
「あ、そうでしたね……私達は、黒羊郷へ向かっているのでした」
「教官……」
 こうして騎凛達は、予定の進路とは大幅にずれているようだが、ようやく最初の宿にありつけることとなった。
 そして、黒羊郷へ……。


 ――to be continued...




次回予告

 バンダロハム、ウルレミラを巻き込んで、一触即発の状況となった、教導団・第四師団遠征軍と、黒羊旗を掲げる謎の軍勢。
 バンダロハム北の境界に、いち早く兵を展開させたのは、松平 岩造(まつだいら・がんぞう)の結成した【龍雷連隊】。
 その兵は、バンダロハムの食い詰め浪人どもだ。

 本営では……
「な、何?! 主力の獅子小隊も、ノイエ・シュテルンも到着していないだと!」
 こうして、それぞれ【獅子小隊】、【ノイエ・シュテルン】の兵力として組み入れられる予定だった部隊を率いることになったのは……
 獅子小隊からは、レーゼマン・グリーンフィール(れーぜまん・ぐりーんふぃーる)
 彼のもとに集うのは、レーヂエセイバーズ(※療養中のレーヂエが率いていた部隊)。
「レーゼ殿!」「レーゼ殿!」
「……。レーゼセイバーズ、か……」
 そかれら、ロンデハイネの敗残兵をまとめ、ソフソ・ゾルバルゲラの兵を率いることになったのは、香取 翔子(かとり・しょうこ)
 第四師団・遠征軍総大将パルボンは、この二部隊を黒羊旗へ向けるつもりだ。
「し、しかし。ロンデハイネ部隊長が今だ見つからないというのに……!」
「ええい。そんなことを言っておる場合ではないわ。
 早々に兵を率い、黒羊旗に向かうのだ! わしも行く」
「えっ? パルボン殿も?」

 本陣を出て行くパルボンを見送ると、戦の準備、状況の把握を行う戦部 小次郎(いくさべ・こじろう)クレア・シュミット(くれあ・しゅみっと)
「主力部隊の他にも、幾名か音信が途絶えている者があるのですよね。
 ミヒャエル・ゲルデラー博士(みひゃえる・げるでらー)……。そのパートナーのアマーリエ・ホーエンハイム(あまーりえ・ほーえんはいむ)ロドリーゴ・ボルジア(ろどりーご・ぼるじあ)。彼らは、数日前にこの地方を探るために派遣された組ですね」
「他にも、……」
「クレア様」
「どうした? ハンス
「先程、夏野 夢見(なつの・ゆめみ)様が、この写真を持っておいでになりました。
 何でも、ウルレミラ湖畔の史跡で撮影したものらしいのですが、このようなものが写っていたとのことで……」
「まさか、心霊写真とかじゃないであろうな……」
「いえ。違いますよ。この、後ろに写っているボートをご覧ください」
「……教導団の軍服、か。男だな。もう一人乗っているようだが? デートでもしてたのであろうか。それで?」
「ええ、二枚目、三枚目の写真もご覧ください。時間も記録してありますので、時系列に並べてあります」
「……遠ざかっているな」
「はい。それで、向かっている先にあるこの小島が、例の遊郭のある島で」
 戦部が覗き込む。
「あ」
 ……橘 カオル(たちばな・かおる)殿だ。彼も、電源が入っておりませんか、電波の届かないところにあります……な一人だった。
 遊郭、
 酒場、
 雑居区、
 貧民窟、
 マーケット、
 ウルレミラ、
 ……
 三日月湖を巡ってめいめいの思いで動く生徒達。民達。

 もう一人、行方不明になったこの男。
「ええい、殺せ!! 部隊長たるこの私が山鬼の捕虜になるなど、この上なき屈辱……生きて恥を晒すよりは、死んだ方がましだ!」
 激昂する第四師団の将、ロンデハイネ。しかし、縄で縛られ手の出しようもない。笑う山鬼の頭。
「ナァニ。アンタナカナカ強ガッダ。コノ山鬼頭ト矛ヲ交エタノダ。誇リニ思ウガヨイ」
 その様子を物陰からそっと見守る者達……その中のプリモ・リボルテック(ぷりも・りぼるてっく)
「あれ? オルジナがいない?」
「頭ァ。家乃前ニ小娘ガイタンデ攫ッテ来マシタゼ。オニィィ。
 食べマスカ? ソレトモ、後デ楽シミマスカオニィィ」
「ソソル少女オニ。奥乃部屋ニ閉ジ込メトクダァ!!」

 同じ谷間の宿場で、ぐっすりと眠りこけている新生【ぶちぬこ隊】。
 主力を欠いたまま黒羊旗と対峙することとなった第四師団の戦況を左右することになるのか。

 黙々と山道を進む巡礼。
 レオンハルト・ルーヴェンドルフ(れおんはると・るーべんどるふ)クレーメック・ジーベック(くれーめっく・じーべっく)は同時に聞く。
「あなた方の神の名は?」
 二人ともに、昨日聞き忘れていたことだった。
ラス・アル・ハマル

 迷いつつも、目的地に近付きつつある騎凛 セイカ(きりん・せいか)教官らの旅の一行。
「セイカ〜、もし副官が引退したら俺がパ〜トナ〜になってやる」
「あ、朝霧さんっ? 朝霧 垂(あさぎり・しづり)さんってば!
 酔ってませんか、って酔ってますよね、あ、朝霧さんあっああん」
 おっぱいがむにっとかぷにっとか。
「……」「……」
 温泉の前で、座って見張りをするユウ・ルクセンベール(ゆう・るくせんべーる)ルイス・マーティン(るいす・まーてぃん)
「ユ、ユウどう? ボクのこと……」
 隠れ身(現在ローグ)で、近くの陰からちらっと裸を覗かせる柳生 三厳(やぎゅう・みつよし)ちゃん。「綺麗?」
「ユウ」もっと大胆に、裸でユウを堂々誘惑するルゥ・ヴェルニア(るぅ・う゛ぇるにあ)。(裸の露出度合いは想像にお任せ。)
「ああっ、ルゥそんなのずるいよぉ……! く、よしルミナがいなんだボクだって、ほら、ユウ!」
「……」「……」
 ユウとルイス。
「……(鼻血)」「……(鼻血)」(最後は御決まりでした。)
「ハァァァ!! 教導団おっぱい三国志でありますぞ、ヒャッハァー」マリー・ランカスター(まりー・らんかすたー)。女性だ。


 黒羊郷では、何が起こりつつあるのか。


 第二回へ続く。


担当マスターより

▼担当マスター

今唯ケンタロウ

▼マスターコメント

 ご参加頂いた皆様。ありがとうございました。
 「黒羊郷探訪」の第1回、いかがでしたか?
 今回は"冒険"シナリオ! ということでして、今までの"バトル"とは違う雰囲気を楽しんで頂けましたでしょうか。(とくに教導団の修学旅行がバトルバトルだっただけに……。)
 初回ということもあって、PCさん・NPCさんらの登場シーンや場所の描写も多く、かなりの枚数になっています。
 登場シーンが数回に渡っている方もいますので、章立てを参考にしてみてください。他の人がどんな冒険をしているのか、見てみるのも楽しいと思います。色んなところに、以降のストーリーの伏線がありますので、できれば時間のあるときに読んで頂ければ……。

 今回、続きものですので、最後がエピローグではなく次回予告(?)になってます。(※次回登場するかや招待枠とはあまり関係有りません(あくまでエピローグ(オマケ)代わりと思ってください)。但し物語のヒントは隠されています。)
 また、そこに登場していることが全てではなく、今回ほんとにあちこちで伏線が貼られ……これについては思い悩みましたが次回への招待枠が全然足りておりません。招待の有無に関しては必ずしもアクションの優劣だけではないので、それについてはあまり気にせずに皆様とこの旅を続けていければと思います。たとえば今回の続きがあるけど次回参加されない(登場しない)場合でもその人の旅は続いていて、また次回から新たに参加される方は今回登場していないけどやはりその人の旅をしてきているのであって、物語のどこかの時点で皆様にお会いできる(描ける)ことをと祈っています。(そういう各キャラクターの見えない部分というのをなるべく含めてリアクションを書けるといいなと思っているのですが。)


 シナリオガイドの記述についての幾つかの訂正と補足ですが、
 湖賊の活動範囲でもあり黒羊郷まで続いている川は、三日月湖の東にあり、蛇行していますが、およそ南北に流れているということになります。
 それと「黒羊旗」については、最初教導団は把握しておらず、騎狼部隊の偵察によってその情報がもたらされる、というふうにしました。

 それからワールドマップをご覧頂くと、ヒラニプラの山脈のちょっと南の辺りに、大きな雲がかかっている所があると思います。おおよそその下に目指す「黒羊郷」があります。
 (そこに至る草原地方や三日月湖地方は地図上では「見えない」ということになりますが、そこは地図の縮尺が不明なので……ということで)

 今回のアクションを読んで感想めいたものを述べさせて頂けるなら、新しくシナリオに入ってくださった方で、全体がぴりっと引き締まるアクションやはっとさせられるアクションが幾つかあったように感じました。
 今唯シナリオにかんしては、これ失敗したかな? と思う結果でも実は失敗でなかったりします。(個人的にはむしろ失敗してたり何か知らないけどえらいことになってるという方が物語の醍醐味になっていると思うのですが。)
 それがたとえば別の事件のきっかけになったり、別のPCさんのとったアクションと絡み合ってきたり、して何か思わぬ結果が生まれれば成功かなと思います。
 明確な勝ち負け判定が欲しい人にはどこか物足りないとか、何となく釈然としなかったりするかも知れませんが。
 それで物語が動いているという感触を掴めればいちばんいいかなと思うのですが。冒険シナリオですし手探りしつつやってゆきたいです。


 次回は、展開からするとバトルシーンが増えるかな、という状況になってきていますが、もちろん独自の旅を続けることもできます。重要なNPCも、登場してきます。
 「黒羊郷探訪 第2回」公開予定は、12月7日(月曜)。
 新しい人も、リアクションを読んでどこか面白そうと思ってくださった人ももしいらっしゃいましたら、是非ご参加してみてください。(今唯)


 追記12/1*誤字脱字等、それからマスターコメントの送付ミスを修正致しました。届いていないという方、また、他に何かお気づきの点等ございましたら、お手数ですがご一報ください。*ご意見・ご感想もお待ちしております。