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温室管理人さんの謝礼

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温室管理人さんの謝礼

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4.果物ゲット!

「前に採取した珍種果物でお菓子を作ったら、思った以上に良く出来たんですよね。今回もどんなお菓子を作りましょうか」

 大洞 剛太郎(おおほら・ごうたろう)のパートナーコーディリア・ブラウン(こーでぃりあ・ぶらうん)が、楽しそうに計画を練っている。
 次のお菓子製作のことで頭がいっぱいだった。

「しかし……本当にタネ子を食うんでありますか?」

「もちろんです! あれもどんな味がするんでしょう。楽しみです!」

「はは……」

 タネ子を食べることが出来るとコーディリアにせがまれ、剛太郎は、また温室に来るハメになった。
 もちろん頭を採取するのは剛太郎の役目。前回の経験から、耳栓も持参した。
 本当はタネ子なんか食べたくない剛太郎だが、コーディリアのお願いとあっては断れない。
 草を鎌で刈りながら進む剛太郎だが、タネ子そっちのけで今回もフラフラと珍種果物を探し始めたコーディリアに、気を抜けなかった。

「はぐれるんじゃないぞ?」

「了解です!」

「……本当でありますかぁ?」

 訝しそうに尋ねる剛太郎。知らないうちに、温室の最奥へと向かっていた。

「やっぱりそっちに行くのね」

 後ろから声が聞えた。
 リアクライス・フェリシティ(りあくらいす・ふぇりしてぃ)志位 大地(しい・だいち)が笑って見ている。

「珍種果物を食べに行くんですね」

「温室の一番に奥に、珍しい果物があるって聞いたわ」

「リアクさん、楽しみですねっ」

「………」

「どうしたんですか?」

「用事が終わったんだから、私に無理に付き合うことなんてなかったのに……」

 そっぽを向きながら、リアクライスは本心ではない言葉を告げる。

「リアクさんに会いたかったんですよ」

「……ばか…」

 リアクライスの頬が赤く染まっているのを、大地は見逃さなかった。
 なんとなく、嬉しい。

「なぁにラブコメなんてやってんのよ!」

 腕組みをしながら呆れ顔の宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)が苦笑した。

「私のトレジャーセンス使用で、珍しいモノがありそうな方向がこっちを指しているのよ」

「祥子さん、急ぎましょう。タネ子さんのことも気になりますし」

 神倶鎚 エレン(かぐづち・えれん)が声をかけてくる。

「うん、そうだね」

「珍しい食材を使ってお料理できる機会は貴重ですわ。是非ともタネ子さんで美味しいカレーライスを作ってみたいと思ったのですが……」

 そこまで言って、エレンは首を傾げた。
 管理人さんは調理する必要は無いみたいなことを仰っていました。
 一体どんな食べ物なんでしょう?

「確かここを真っ直ぐ……」

 祥子が、がさがさと草を掻き分けて進んでいくと。
 いくつもの白いテーブル、椅子。
 一面、別世界が広がっている。そして──
 真っ白い実のなっている背丈ほどの小さな木が。

「これこれ! どんな味がするんだろう?」

「真っ白ですねぇ」

 祥子とエレンがその果物をじっくりと観察していると。

「……食べても良いのでありますか?」

 ぽつりと、剛太郎が呟いた。

「ど…どうでしょう」

 コーディリアが苦笑する。
 そして、難しい顔をしながらリアクライスが言った。

「皆に持っていくくらいは……無いわね」

「とりあえず味見でもしてみますか? それくらいは十分にありますし」

 大地の提案に、ごくりと皆の喉が鳴る。

「た、食べちゃおっか……」

 まるで夢遊病のように果実に吸い寄せられていく。
 てゅいん……
 奇妙な音と共に果物がもぎ取った。
 手に持った真っ白い果実を、眼を見交わして、一緒に口の中に入れていく──…

……しぶ。

 渋い!

渋すぎるうぅうううぅ!!!


「あぁああぁあああぁあぁ!! 口が痺れて、おかひいよ〜」

 みんな両手を唇に当てて、まるでお笑い集団のように指をぴろぴろと動かし同じ動作を繰り返す。

「しぶしう〜」

「どうすればひいのこれ〜〜〜なひこれ〜〜〜!?」

「びりびりしゅる〜〜〜!!」

「この果物……食べちゃいけなかったんじゃない? だからこんなに温室奥に追いやられていたんだよ」

「そんなぁ。みんな大丈夫? 口だけ? そのうち体まで痺れてきたなんて言ったら……」

 皆の顔が凍りつく。
 かかかかかかか管理人さん!!!!
 管理人さんに言って謝って治してもらおう!
 タネ子と格闘するのを皆に任せて、果物を食べようとした罰が当たったんだろうか……
 視界が、涙で滲んだ。