リアクション
5.触手との戦い
「タネ子採取に向かった皆のため……ここで時間を稼ぐ!」
朔が叫んだ。
ヒロアサの「怨敵二閃」で、能力強化した状態で触手を切り刻みながら戦いに挑む。
アルティマ・トゥーレで触手凍らせたり、ライトニングウェポンで帯電させたり──色々試しているうちに朔に疲れが見え始めた。
触手は、その隙を見逃さなかった。
「!? え、エロイのは……嫌いなんです!」
朔は必死に抵抗を試みる。
「や、やめろ! そんなところにそんなもの…入れるな! 離せ! はーなーせー! …ひゃあッ!お、お願い……やめて…ください…やめて…」
「朔ッチ大丈夫!? …って、言っているそばから触手が! うわあああん、やっぱりボク、不幸だ〜!!!」
ブラッドクロスの足に触手が絡みつく。
「料理人を目指す一人として、タネ子を食べに来ただけなのに……なんでこんな目に〜!」
「やっふぅー! スカサハ大暴れなのです! 助けますよぉ」
スカサハは素手で触手を取り払いにかかる。
が。
「たすけ……っ」
「!!」
救助を求めたブラッドクロスの不幸体質の余波を浴び、触手の中へと一緒に引きずり込まれる。
「いやっ! ゃあ…っ!!」
「……あ〜ぁ、とうとう三人…逝ってしまったようですな」
ファインダー超しに様子を伺っていた里也は、自前のカメラにその様をひたすら撮り続けた。
触手ごときに捕まる私ではありませぬぞ。
何気に勘は鋭い里也は触手には捕まりにくかった。
「もうちょっとここの構図を……」
里也は納得のいくものをカメラに収めるべく、場所移動を開始した。
「──ったく、なんだってこう触手ばっかり」
朔を捕らえている触手を切りながら、レイディスは顔を赤くした。
溶けてどろどろの衣服から、肌が見え隠れする。
レイディスはぐったりとして力が抜け切っている朔を背負った。そして──
「!?」
胸が胸が胸が!
直に当たっている!!!!
「こ、ここは…危険だから、バーストダッシュでひとまず安全なところに運ぶぜ。ほほ他の皆はまた、迎えに来るから、順番な」
聞いているのかいないのか、反応が無い。
「…い、行くぞ?」
レイディスは耳まで真っ赤にしながら、全神経は背中に集中していた。
(はははははは恥ずかしい〜〜〜〜)
心の中で叫びながら必死に走った。
◆
「おら〜! 斬って斬って斬りまくりますよー!!!」
ウィングは村雨と光条兵器で触手を余裕で切り捨て、斬り続けた。
(襲ってこなくなるまで、私は触手に立ち向かいます!)
救助はそっちのけで触手をぶった切る。
「ふは…ふはははは……」
なんだか楽しくなってきた。
気分が乗ってきたウィングは、突然懐から怪盗マスクを取りだし装着した。
「ふはは、まだだ、まだ終わらんよ!」
正義の味方なのか悪鬼なのか分からない形相のウィングの暴走が始まる。
そんなウィングを横目で見ながら、カガチは呟いた。
「誰も助けてくれない……」
少し考えた後に、再び発狂する。
「たーすけてへぇええええぇえーーー!!!」
渋い声は、本当に渋すぎて、助けを求めているようには聞えない。
「ちっ……」
カガチはは舌打ちすると、自力で触手を引きちぎった。軽く切れる。
「……」
(ところで触手は食えるんだろうか?)
「魔物食人こと「パラミタを食い倒す会」会長が味見をしてやるんだねぇ」
カガチは手近な触手に齧りついた。
「ちょっと渋いかな? しかしよく煮て灰汁を抜き甘辛く煮れば案外いけるか。適度に調理してタネ子さんの網焼きにでも添えておこうかねぇ」
切れても蠢き続ける触手をポケットに入れ、カガチは土産にした。
「──ああ、筋肉が縛られて…これぞまさに芸術! すばらしかったわぁ☆」
リナリエッタは、こっそり物陰からルイや変熊やカガチを見ていた。
(タネ子に特攻してくれる、イケメン他校生の触手プレイをじっくり観察よぉ☆)
「だけど……」
既に周りには誰もいない。他の餌食を探さなくては。
突撃する振りをして触手を使い、兎を捕まえるように足元で触手同士を縛り付けて自然に転ぶように罠を仕掛けた。
「誰か手伝って頂戴〜!」
リナリエッタは満面の笑顔で助っ人を呼ぶ。
さぁ。次の獲物だだぁれ? イケメンならなおよし! …ふふ。
◆
「あっ、ニャンコ、そこの切れた触手拾っといて?」
春美が娘子に声をかけた。
「ええ? …って、こんなのどうするのよ?」
「えっ、そのー、なんだ、そう、もって帰って記念にするのよ」
何故か春美はぽっと頬を赤らめた。
そんな春美を見ながら独り言のように娘子が呟く。
「そんなに気持ちよかったの……?」
「ちちち違うわよ、変なこと考えないでよ! エッチなことになんか使わないって ホントよ?」
「……」
「ななななにその目は! アルバイト先の花屋の人に見せるつもりだったの!」
「…………」
果たしてそれが本当なのか、真実は闇の中だ……
◆
「パワーブレスで強化してウォーハンマーで応戦ですわっ!」
それでもよろよろしながら、留美はハンマーを振り回した。
「あら、あららら…ハンマー…重いですー…空振りしてしまったら…あっ」
思った通りハンマーに逆に振り回されて、触手に絡みとられてしまった。
「きゃああぁあんっ」
「留美さん!!」
バニッシュを使用しタネ子の注意を引き付け、触手から逃れるべく走り回っていた繭が、留美のピンチに気付いた。
が、しかし──
足がもつれて転んでしまった。
触手が飛び掛るように向かってきて、ずるずると奥に引きずりこまれていく。
「え?」
「えぇ???」
留美と繭。触手は二人をこれでもかと言わんばかりに密着させ、擦り合わせる。
「あぁああ! ひぅっ……」
「やぁ……っ」
身体をすり合わせているだけなのに、それでちょっと変な気分になってくるっ!
「男の人は怖いですけど……女の人なら何をされても……っ」
繭の口から危ない言葉が飛び出す。
そして更に悠希までもが加わった。
(このままじゃボクも静香さまみたいに……!)
悠希は歯を食いしばった。
溶けていく…溶けていってしまう、静香さまの服が跡形も無い位にボロボロ……
「うらぁ!燃えやがれや!!」
ラルクが装備してる闘気で触手を燃やしていく。ドラゴンアーツと武術も併用して。
「効いてないわけでもなさそうだが……まだ弱いな。だったら凍らせてみる!」
アルティマ・トゥーレに変更して攻撃を開始する。
「そして極めつけ!」
ナックル型の光条兵器を取り出した。
「……まさかここまで追い詰められるとは思ってもいなかったな。すまんが使わせてもらうぜ? ──おらぁっ!」
攻撃が終わり、荒い息をつきながらラルクは顔を上げた。
「おっと…捕らえられてた奴ら……助けねぇとな」
側に行って悠希を抱き起こした。
「ありがとう、助かりました…ってつまり今のボクはただの悠希な訳でっ…」
…ぶっふーっ!!
周りの人達のあられもない惨状を目にして、悠希は鼻から赤い霧を噴射した。
◆
「ぁん!? 触手の海の中、やっ! ……また制服買い替えないと……んあああん!?」
奥に引っ張り込まれたアリアは、触手にあんな所やこんな所まで蹂躙されてしまっていた。
こうなった以上もう助けが来るまで耐え続けるしかない。
「ん、やぁ……だ、だめぇ……だめぇ……」
泣きながら必死に堪えるアリア──抵抗する力も無くなる程に、弄ばれ続ける。
その横でも、同じように触手の餌食となっているカロルがいた。
ビキニアーマー状の騎士鎧の中は、もう汗や粘液でどろどろだった。
「あ、はぁああぁ……」
止む事の無い触手の攻撃。
「……も、ゃ、ぁ……」
二人の意識がなくなっても、玩具にされ続けている。
要は真っ赤になりながら、その様子をあわあわしながら見ていた。
「どっどどど、どうしたら」
(……私にはそんな反応しないくせに……)
秋日子は自分以外の女性に要が顔を赤くするのが許せなかった。
(ひどいよ……)
涙があふれそうになった瞬間。
伸びてきた触手に、要も秋日子も引っ張られる。
「いやぁあああぁああー!」
再び触手が身体中に撒きつく。
隠れて様子を伺っていた明日香までもが引っぱり込まれ、もう乱交騒ぎだ。
「んっ、んあぁあ! やぁ」
明日香の口から悲鳴が漏れる。
意識を飛ばしかけたその時。
「エリザベートちゃん…大好…きですぅ〜……!」
声にならない叫びが漏れた。
「──…やっぱり良いのぉ」
デジカメから顔を上げると、大佐は、ほぉ…っと至福の吐息をはいた。
触手に絡まれてる女の子達は、とても美しい。
「大佐ちゃん! 後で見せ合いっこしよう」
「おぉ。それはナイス考えだな」
どりーむも同じく、女の子のあられもない姿を永久保存するべく撮影に勤しんでいた。
「……ふぇいとちゃん、大丈夫?」
「う、うん……」
さっきの被害の影響なのか、元気の無いふぇいとに、ドリームは少し心配になった。
(ふぇいとちゃんが大好きだけど、女の子同士だから不安で……考えるほど不安になっちゃって。
でもこのもやもやした気持ちをふぇいとちゃんにぶつけたら嫌われちゃう…
ふぇいとちゃんを信じてないってことだもの……。
こうやってビデオ撮って、他の女の子を相手にして自分の気持ちを誤魔化して負かしてたの…
ちょっとだけ楽になれたから。
ほんとは、ほんとはずっとふぇいとちゃんの側にいたいの…触れていたいの…)
言えない言葉を、ぐっと、どりーむは飲み込む。
「どりーむちゃん?」
「え? うぅん……なんでもない」
寂しそうに微笑むどりーむ。
(…どり〜むちゃん大好き……一緒にいてほしい、触れていたい、いつもどり〜むちゃんのことばかり考えてる)
でも伝えちゃ行けないのかな……
二人の気持ちが交差する日は、いつだろう?
「そういや触手って食えるんだろうか」
大佐がシリアスモードを打ち砕いてぽつりと言った。
「頭が食用なら食えるかも」
大佐は触手の切れ端に齧りついた。
「うむぅ……もかもかして……これまた中々…」
触手の切れ端を食べながら、大佐は次の被写体を求めて歩き出した。
絡まれてる娘が居ないと適当に近くに居る女の子を触手の群れに軽く突き飛ばしたり放り込んだり。
悪魔の所業を繰り返した。
◆
レイスは気絶した翡翠を、安全な場所に連れてきて寝かせていた。
「……ったく、無理するから」
翡翠の顔を見ながら苦笑する。
「う、うぅん……触手…いや、です……」
「夢の中でも襲われてるのか?」
「レイス…たす、け……」
「……大丈夫。俺が助けてやるから……」
耳元で囁いた言葉が聞えたのか、安心しきったような顔になって、再び深い眠りに落ちていった。
「触手か……」
蠢く緑の森を見ながら、レイスは溜息をついた。